青とお祭り
夏祭り当日、夏休み最高のビッグイベントになるであろうこの日がやってきた、夏祭り=浴衣、ってことでヒノリのお兄ちゃんに作って貰った浴衣を着てから再度集合になった、コガネとコテツはうちにて着替えてる、ジンベイなのですぐにきれる。
コガネのは灰色の生地で両肩と左足の半分が網になっている。
コテツは、紺色の生地に所々に小判がプリントされているもの、コテツらしいって言っちゃコテツらしいな。
俺のは青に水色を少し混ぜた波っぽい感じの生地だ、なんか海っぽくて俗に言う一目惚れ、それに雰囲気を出すためにベ●カムがやってたサムライヘアーにしてみた
「どう?ぽくない?」
「見事に出来てるな、それでサッカーやればかなりウケるぞ」
「カイはんやから様になるんやな、そこらへんの野郎がやってもただのキモ男やで」
誉められてるのかけなされてるのかよくわからないけど良いか、それに自分では微妙に気に入ってるし、暫くは日常でもこれでいくか。
チカの家の前に行くと既に三人とも揃ってた、にしても三人とも違う感じの雰囲気だな。
チカの浴衣はピンクの生地に向日葵のプリントがされてる、しかも例の如く前髪を下ろしてる、この時のチカは大人しく見えるんだよな。
ヒノリは黒に猫が所々プリントされてる、しかも若干胸をはだけてて色っぽい、コガネは顔を真っ赤にしてうつ向いてる、そしたらいきなりコテツが俺とコガネの間で肩を組んできた
「ヒノリはん胸でこうない?」
「確かに、コガネ、サイズいくつか知ってる?」
「し、知らねぇよ!それに知ってても教えないから」
ヒノリの胸は平均女子高生のものとは育ちが遥かに違った、今まで気付かなかったのが不思議なくらいだ、軽く見積もってもDは堅いな。
そして最後に問題のツバサだ、一言で言うとコスプレに近い浴衣になってる、黄色い生地に花柄でミニスカートばりの短い裾、浴衣の概念を脱した。
「カイ、ツバサ君のあれは……」
「コスプレだな」
「ええやないか可愛くて。ツバサめっちゃ可愛いで!」
コテツがツバサのもとに走って行った、ヒノリはいつの間にかコガネの腕を抱いてた、でも何故かコガネはコッチを見て口パクで訴えてきた
「む…ね…が?」
胸が当たってるって言いたいのか、残念ながら俺にコガネを助ける手段は無いよ、コガネを見捨てていつもよりおとなしいチカの手をとった
「やっぱり可愛いな」
「ありがとう。カイ、その頭何?」
「サムライヘアー、雰囲気でてるでしょ」
「カッコイイよ?」
疑問文になったのはさておき俺らは神社に向かった、約二名を抜いてはいつもとは違う雰囲気だった、その二名とは当然コテツとツバサだ、相変わらずの馬鹿ハシャギっぷりは健在どころか過熱する一方。
神社は人で賑わっていた、大きい神社にも関わらずところせましと人がいる、コテツとツバサは軽快なスタートダッシュで人ごみに消えて行った、俺とチカはコガネ達を置いてお祭りに参戦した。
去年と変わらない出店の数、去年と変わらないような人の量、お祭りって何か特別な雰囲気で好きだ、とりあえず去年屈伏させた金魚すくいに行った、おじさんは険しい顔をして俺を見てる。
「やらせないぞ」
「何でよ?俺は客だぞ」
俺が第一声を発する前に拒否された、まぁ当然だけどせめて何か言わせろよ、先を越されるのがこれほどムカつくとは
「頼むからやらないでくれ!」
頭の上で手を合わせてる、そこまでして俺に金魚すくいをさせたくないか、多分こんな状況に陥ったのは俺くらいだろう
「でもタダで帰るわけにはねぇ……」
「クソ、これ持ってけ」
おじさんが出したのは焼きそばタダ券二枚だった、恐らく出店してる人に配られる物だろ、金魚をもらうより割が良いし焼きそば食いたかったからありがたく受け取ってその場を去った。
焼きそばを貰って食べながら歩いた、去年はあんまり周りを見てなかったけど案外いろんな出店があるんだな
「焼きそば美味いな」
「うん。カイってそこら辺の店には文句言うけど屋台は美味いの一点張りだよね、何で?」
「雰囲気かな、料理は雰囲気で味が変わる物だから、こういうのは全部美味く感じるものなんだよ」
チカは呆れた感じで焼きそばを食べ続けた。
俺は焼き鳥とお好み焼きを買って神社の裏に行った、去年チカが教えてくれたオススメポイントだ、一年じゃ変わるハズもなく記憶のまま残ってた
「カイさっきから食べ過ぎじゃない?」
「ほうは(そうか)?」
「うん、ジャガバターにモチポテ、たこ焼きに……、お好み焼きも別に食べてただろ」
「まぁね」
「食べ過ぎでしょ、しかもいつも二人分頼んでほとんどカイが食べてる、何でそんなに食べるの?」
「雰囲気かな」
チカは呆れて焼き鳥を頬張った、でもお祭りは食べ歩きのタメにあるものだろ、高いとか言って何も食わない奴はタダの散歩野郎だ
「この後花火だね」
「そっか、当然見に行くだろ?」
チカが無言で頷く
「コガネ達も誘ってしんみり……、出来そうないけど、とりあえずユキとマミ姉には悪いけどあの場所に行くか」
「うん!」
波の音を聞きながらのお好み焼きは最高に美味い、そして隣にはチカ、何かこの世の天国みたいで怖い、幸せ過ぎて不幸になりそう。
食べ終ってまだ時間があったからそこら辺を見て回ってる時だった、新鮮で懐かしい二人組がいた、この二人を見てると奇跡を信じたくなってくるよ
「カイにチカ!久しぶり!」
「ダイチにフウちゃんか。ダイチ、おめでとう!」
「やめれぇ、照れるだろ」
顔を真っ赤にしながら頭をかいてる、フウちゃんはずっとダイチと腕を組んで寄り添ってる、少しダイチも大人っぽくなってた
「いつまでいるの?」
「夏休みいっぱいはいるよ、ダイチは?」
「俺も」
久しぶりにみんな集めてみるかな、運が良ければみんな集まるだろ
「そういえばカイ、聞いてよ、物凄い奴らがいたぞ」
この胸騒ぎはなんだ?違う事は分かってる、でももしかしたらありえないとも言い切れない、そこが怖い
「まずは、なんだかうるさい二人でさ、一人は関西弁でもう一人はミニスカートみたいな派手な浴衣着てんだ」
うわぁ、予感的中、完璧にコテツとツバサだよ、あれは目立つよな、黙っててもツバサのせいで目立つよ
「もう一組はハーフっぽい不良と巨乳セクシーな女の子、不良のほうは真っ赤なんだよな、不良のクセにシャイなんだぞ、笑えるよな」
それはコガネとヒノリだ、あの二人も目立つよな、コガネが金髪なうえにあのピアスの量だから不良に思われてもしょうがないよな、実際不良っぽいけどな
「チカ、どう考えてもアイツらに行き着くんだけど」
「アタシもだよ、否定の余地がないくらい」
「何?どうしたの?」
「俺らの高校の親友」
「えぇ!」
オーバーなリアクションで驚くダイチ、そりゃそうだよな、あんだけ濃い奴らとつるんでればそりゃびっくりするよ、否が応でも目立つもんな
「どう思う?フウちゃん?」
「私からしたら貴方達も十分厄介だったよ」
否定出来ないのが悔しい、確かにすき放題やってたけどフウちゃんも十分教師の域を脱した事をやってただろ
「じゃあ俺ら行くから」
「頑張れよ〜」
「な、何がだよ!?」
顔を真っ赤にして俺達とは反対の方に歩いて行った、他人から見たら普通の二人だけど俺らから見たらあれほど笑えるものはないんだよな。
待ち合わせしてた鳥居の所に行くとコガネとヒノリがいた、ヒノリはまだコガネの腕を抱いてるけどずっとあれだったのかな
「早いじゃん」
「カイとチカちゃんが遅い」
「そうかジャストだよ、しかもまだコテツとツバサが来てないし」
あの二人が遅いのは予想通りだな、騒いでるから探すのは簡単だけどあれと一緒に見られたくない、そんな事を考えてたら二人が帰ってきた、これは予想外でびっくりした
「二人にしては早いじゃん」
「当たり前やないか、これから花火やろ?遅れたら後が怖いで」
「いや、2分14秒の遅刻だ」
「細かっ!関西じゃ時間は目安やで」
「ココは首都東京だ」
そういえばコガネは遅刻だけはしないんだよな、時間には人一倍うるさいし、コガネと待ち合わせしたら五分前行動なんだよな、こんなに時間をうるさく言われたのは小学生以来だよ
「じゃあとっておきの場所に案内するよ」
みんなを連れてユキとマミ姉に教えてもらった場所に行った。
森の中にそこだけが開けてて波の音がどこからともなく聞こえてくるこの島独特の場所だ、俺はこの島のこういう自然が大好きだ、一人で感慨に浸ってると大きな爆音とともに夜空に大きな花が咲いた
「始まったで!」
「ずいぶん近いな」
「すぐそこの海で打ち上げてるからな」
ココから見ると空一面に花火が広がって圧倒される、花火がこんなに大きいなんてみんな知らないだろうな
「大きいな」
「しかも綺麗で手をのばせば掴めそう」
「掴んだら火傷するよ」
チカのせいで地に落とされた、夢の無いことを平気で言うよな、それが天然だから可愛いんだよな、これってのろけ?
大きな花火は精一杯美しくなって、儚く消えた、小さい花火も大きい花火も思い出でしかないのか