青と体育会系達
やっぱり島に帰って来たらやらなきゃいけない事があるでしょ、フリークライミング?それも有るけど二の次三の次だね、夕日の入り江?それはついで、やっぱりサーフィンでしょ、夏だし一年近くやってなかったし海に入りたいし、とりあえず支度するか、飯も作らないと腹が減ったし、早起きしていろいろ支度してる時だった、久しぶりに聞くこれに免疫が衰えていた
「カイ!海に行くぞ!」
情けないけどビックリして飛び跳ねてる俺がいた、久しぶりだからこれが来るのをすっかり忘れてた、にしてもやっぱりチカもサーフィンやりたかったんだ、通じあってるな俺ら……、ちなみに気のせいってのが分からないほど馬鹿じゃないから、俺はパンを2枚、ジャムとバターを塗って出た、炭水化物に糖分と脂肪、美味くて簡単で朝の心強い味方だな
「ほはひょ(おはよ)」
「行くぞ!」
チカがボードを持って走って行った、俺もボードを持って走って後を追った、パンを口に頬張りながら。
海は良い波がきてて水温も高め、天気も良好、久しぶりだけど勘はニブってないはず、それにチカと二人きりでサーフィンって、どんだけ体育会系カップルなんだよ、しかもすでにチカが準備体操してるし、あの事件いらいちゃんと準備体操をするようになった、俺も軽くストレッチしてから入った、やっぱり海は最高に気持ち良いし学校の事とか面倒な事全部洗い流してくれる、70%の力は偉大だな
「気持良い!!」
「きゃ!何いきない?」
「いや、心の雄叫びがつい声にでちゃった」
「ふ〜ん。それより早くサーフィンやろ、この波は今しか来ないんだから」
チカは沖に出ていった、自分で話をふっておきながら難無く強制終了かよ、考えてもめんどくさいから海にでるか、いつものポイントまでつくと波待ちをしたにはしたけどあっという間に良い波が来たから速攻波乗り、この波乗りの感覚は最高の薬物だな、中毒症状に近い感覚になる、東京でもサーフィンが出来たら良いんだけとするためには千葉か湘南まで行かないといけないんだよな、電車代って高校生には痛すぎる出費なんだよ。
2、3時間くらいかな、ずっと海に入ってたから流石に疲れがきた、とりあえず浜に戻って休んでた、部活の倍以上楽しいし運動になる、やっぱりサーフィン部を作るべきという下らない論争を心の中で繰り広げる
「カイ、サーフィン部作ろう」
俺は大爆笑、ヤベェ腹イテェ、呼吸が出来ねぇ、死ぬ……、アブねぇ、ホントに笑い死にするところだった、考えてる事が同じ事にも笑えたし口に出した事にも笑えた
「呼吸困難になるまで笑うなよ、何だか恥ずかしくなるだろ」
チカが顔を真っ赤にしてる、俺はチカの後頭部を掴んでこっちに向けて顔を近付けた
「俺も同じ事考えてたから」
チカが含み笑いをした、チカから顔を話して後ろに手をついた
「確かに笑える」
「でもそんなメチャクチャな部活作れる訳ないのは分かってるんだよな、第一海も無いしな」
若干落胆してる、もしかして軽くマジだったのかな、チカなら否定しきれない
「サーフィン部とか最高の部を何で作らないんだろ?」
「海が近くにないし人口が少ないじゃん、それにそんな発想自体浮かばないだ……!」
「お二人はんこんな所にいたんかいな!」
林の中からコテツ達が出てきた、ってかココって軽く秘密の場所なのによく見つけたな
「何しに来たの?」
「冷たいやないか、折角こんな所まで来たんやぞ」
「二人だけで海なんて……、サーフィン?」
全員の目線がボードにいく、何でいるか聞いたのに流された、しかも今日は自由って言ったのに律義に全員とは
「とりあえず何で来たの?応えたら応えるよ」
「チカはんのおかぁはんに聞いたら海にいる言われたから、海をしらみつぶしに探してたというわけや」
「ふ〜ん、俺らは見ての通りサーフィン」
しかも水着姿の4人、もしかして遊びに来たとか、残念な奴ら、俺らを追ってきたから遊べないじゃん
「ちなみにココ、サーフィン以外出来ないよ、ドン深だから、3mくらい行ったら足が着かない何てもんじゃないよ」
「ホンマかいな、残念やな」
「遊びたいなら道路に出て坂を登った所に階段があるよ、そこを降りれば遊ぶには最高の海があるよ」
「ほな、遊ぶ前にサーフィン鑑賞といきましょか」
「そうだな、カイのダメっぷりを拝ませて貰わない事には遊ぶに遊べないな」
「泣いて謝るのが目に浮かぶ、チカ、いっちょかますか!?」
チカと海に出て波待ちをした、ちょっと本気を出そうと最高の波を待ってるとほんの一分ほどで波が来た、今出来る最高のテクニックを使った、これでもユキよりはキレが良いんだぞ、ユキはスピードが尋常じゃないんだけど、波に乗ったり波に逆らったりいろいろ試した、先に俺が浜についた、その後チカがすぐに波乗りを始めた、チカは体の柔軟性を使ってるから流れるように進んでく、やっぱりチカは凄いなぁ、チカが帰って来ると思ってたより周りは静かだった
「ハンパねぇ」
「ホンマかいな」
「どうした?」
『スゲーよ!!』
コガネとコテツが前のめりになって叫んだ、そこまで興奮することではないと思うんですけど、でも柄にもなく頑張ったから驚いて貰わないと困るな
「プロ?」
「んなわけないじゃん、趣味だよ、ただの趣味」
「チカチカやっぱり凄〜い、やっぱり僕の女だよ」
蛇のようにチカにツバサが絡まった、恒例だけどコテツ引き離す、ツバサに暴走しててもらえればうるささ半減なんだけどな
「ゴンメなチカはん」
「こらコテツ!僕とチカチカの愛を邪魔するな、夜寝てやらないぞ!」
「寝ない!それにツバサの一方的な愛やないか。わいでもだんだんツバサの言うとる事がホンマかウソか分からんなってきた」
コテツ、変態彼女を持つと苦労するな、ってか普通って良いことなんだな
「チカ、これからどうする?」
「もう十分サーフィンやったしもうそろそろ引き上げようと思ってたんだよね」
「じゃあコガネとかについていって遊ぶか」
「うん」
俺達は近くのこれもまた秘密の海に案内した、波も無いしココでボードに乗ってボ〜っとするのが大好きなんだよな。
真っ白な砂浜、水深20センチで天然の水族館、腰の辺りまでつかれば30センチくらいの魚は普通にいる、しかも水深5、6mでも底まで見える透度、ココなら遊べるだろ
「綺麗やな、ツバサ泳ぐで!」
「凄い凄い!綺麗綺麗!泳ぐ泳ぐ!」
壊れたロボットみたいな反応だな、俺とチカとコガネとヒノリはビーチバレー、何だか分かんないけどココにはネットがあるんだよね、錆びてるけど使いものにはなる、それに紐でコートまで出来てるから手間いらず
「行くぞぉ」
コガネのアンダーサーブで始まった、フワリとコートに入れるだけのサーブが上がった、チカがレシーブして俺がトスを上げる、最後にチカのアタック
「ヒノ、俺に任せ、ゴフッ!」
伝家の宝刀顔面レシーブ、俺は大爆笑だけどヒノリはあたふた、チカは申し訳無さそうな顔をしてる
「コガネ、のびてる暇は無いぞ、ホレ」
俺のアンダーサーブで始まった、ヒノリのレシーブでコガネがトス、ヒノリのアタック
「ガフッ!」
伝家の宝刀顔面レシーブ再来、今度は俺の番かよ、今度はコガネが大爆笑、ってか俺らは大変な事を忘れてた
「コガネ、集合!」
コガネを呼んで隅の方で肩を組んでコガネに報告と意見聴取、これは重大にして最大の盲点だ
「コガネ、俺ら何か物凄く物凄い事忘れてないか?」
「……あぁ!」
「恐らくこのゲームが終わる頃には俺らボロ雑巾より悲惨な状況になるかもよ、ツバサがいないだけマシだけど」
「そうだな、だってアイツら…」
『バレー部三峰将じゃん!』
説明が必要だな、俺らがサッカー部の《イケメンツートップ》と呼ばれてるようにチカ・ヒノリ・ツバサは《三峰将》と呼ばれてる、どれだけ強いかはさっきので分かってもらえたと思う
「勝つ術は無いのか?」
「待て、あえて俺ら二人で挑むぞ」
「馬鹿だろ」
「コガネ、俺らの土俵に持ってけば良いんだよ、俺の知識によるとバレーは手だけじゃない………」
座談終了、チームを変えて俺とコガネチームとヒノリとチカチーム、男の下らない意地でこのチーム編成になった
「カイ、馬鹿?」
「うるせぇ!男には戦わなきゃいけない時が何度かある、今がその時だな」
「コガネ、ゴメンね」
「ヒノ、手加減無しだからな」
むこうのサーブで始まった、チカの力を込めたジャンプサーブ、速いけどこれくらいなら
「コガネ!」
「余裕!」
コガネは足でレシーブ、足ならサッカーの専売特許だしバレーのルールではフェアだ、俺はジャンプしてトス……、するふりしてツーアタック、見事にボールと砂浜の再開、一点先取
「よっしゃ、ナイスコガネ」
「カイも最高だった」
「無茶苦茶だろ、確かに足は有りだけどあえて足でレシーブするなんておかしいだろ」
「俺らはサッカー部だぞ、これくらいなら朝飯前だよ」
「ノーバンノーバンの要領だからな」
いくら速くても女子のアタックなら見える、見えれば蹴り上げるのは容易だ、盛り上がってると海から上がる馬鹿二人、コイツらの襲来により俺らは更にキツくなる
「何やわいらも混ぜてや」
「チカチカずるいよ、僕もやる、コテンパンにしてやろ」
コテツがこっちに来たせいで自然にツバサがチカチームに行った、二人ならどうにかなったけど三人はキツイだろ
「コテツ、お前のせいで勝算が減った」
「なんでやねん、向こうは……、悪い、相手を性別のみで見とった」
コテツも理解したらしい、今からダダをこねるのは性に合わない、これで勝つのが真の侍ってもんだろ、侍じゃないけどね
「しょうがない、やるしかねぇな」
「コガネ、サッカー部式アンダーサーブを見してやれ」
「おう!」
コガネは普通のアンダーサーブをした、ヒノリがレシーブをしてツバサがトス、チカがジャンプしてたからチカに注意したけどチカはスルー、ボールが向かった先にはヒノリがいた、ヒノリの奇襲アタックを何とかスライディングでコガネがレシーブ、俺の所に上がってきたボールをトス……、しないでスルー
「……何てね」
落ちてきたところを足でトス、自分でも驚くような奇跡的トスをコテツが力任せにアタック、でも尋常じゃないスピードが出て再びボールと砂浜の劇的再開
『よっしゃ!』
「わいらバレーでもやっていけるんとちゃう?」
「三峰将敗れたり、ってか」
「やっぱり俺のレシーブのお陰だろ」
ホントに奇跡が起きた、コガネの喧嘩仕込みの反射神経を使ったレシーブに俺の悪知恵仕込みの奇襲トス、それにコテツの空手仕込みの馬鹿力のアタック、どれもが即席の滅茶苦茶な技ばかり、もしかして俺らって本物の天才?
終わってみるとやっぱり負け、接戦だったけど玄人と素人の差、勝てると思った俺らが馬鹿だったって事に気付いた
「勝てねぇって」
「無理やで」
「負けた」
大の字で倒れる情けない男三人、問題はミスだ、力的には負けて無かったと自負する、でもミスが多すぎた
「僕ビックリしちゃった、みんな凄く上手いんだもん、コテツのアタックなんて普通の男バレ並だよ」
「アタシもだよ、何回カイに騙された事か、運動神経が良いのを利用してあんな手やこんな手を」
「コガネのレシーブも凄かったよ、しかも9割が足でレシーブだし」
後の1割は癖で胸でとって蹴りあげるというサッカーテクニックを使って失点、まぁ楽しかったから良いか。
俺らこんな体育会系デートで良いのか?普通高校生でココまで本気でビーチバレーをする3ペアもいないだろ