青と赤の帰省
今は船の中、どうもこの船っていう乗り物には何回乗っても慣れない、酔わないように寝たいんだけど周りがそれを許さない、目を瞑るとチカが起こしてくるし、コテツとツバサは他の客の迷惑を考えずに騒いでる、コガネは爆睡、流石職人芸って感じだよ、ヒノリは本を読んでるけど酔わないのかな
「あとどれくらいで着きはる?」
「20分くらいじゃない」
「ほなツバサ、デッキに行こや」
「行く行く!」
ガキ二人の暴走を誰か止めてくれ、こっちが疲れる、チカが落ち着いて見えるのはコイツらお陰か
「カイ、アタシ達も行こう、いつも寝てばっかりだから起きてる時くらいは楽しもうよ!」
前言撤回、やっぱり疲れるな、席を立って前の席にいるヒノリとコガネの横を通ってにやけた、爆睡してるコガネがヒノリの肩を借りて寝てた、ヒノリは本を読んでると思ったらヒノリも寝てるし。
デッキに上がると潮風が気持ち良かった、人もそんなにいないし、今度はココで寝よ
「気持良い!」
「まだ島は見えないな」
「みんないるかな?」
「サエ以外はいるだろ」
チカが不思議そうな顔をしてた、チカの知能を過大評価しすぎてたな、説明が必要だな
「ミッチーはコノミちゃん、ユメちゃんはゲン、ダイチはフウちゃんに会いに戻ってるだろ」
「そういえばダイチはどうなったの?」
そういえば、自分達の事でいっぱいいっぱいで全く気にして無かった、それも聞かないとな、ダイチがいなくてもフウちゃんがいるだろうし
「着いたら聞くか」
「そうだな」
島も見えてきたし戻るか、里帰りって事になるんだよな、みんな変わって無いと思うけど楽しみだな。
上陸するとコテツとツバサは一目散に走りだした、ホントに子供だな、コガネはヒノリに起こされながらだからフラフラだ、にしても久しぶりでも変わって無いな、当たり前の事だけど
「やっぱり気持良いな」
「そうだな、東京の空気は汚いし、潮風が懐かしい」
島の自然は何も変わって無かった、変わっていくのは人だけか、じゃあ俺とチカは自然だな
「じゃあ俺は一旦帰るから、荷物置いたらすぐに行くよ」
「分かった」
俺はみんなとは違う方向に歩いて行った、みんなは民宿に泊まるからチカと一緒、俺は自分の家に。
変わらない自然を楽しみながら歩いてると懐かしい二人が、この二人も4ヶ月じゃ変わる事もなく相変わらず子供だ
「よっ、ユメちゃん、ゲン」
「カイ、おかえり」
気のせいか事実か分からないけど、ユメちゃんが大人っぽくなったような気がする、東京パワーか?
「チカは?」
「いるよ、でも今は高校の友達付き」
「何時までいるの?」
「高校の友達は一週間ちょっと、俺らは夏休みが終わるまでいるから安心しろ」
「何を?」
「さぁね。じゃあ俺待たせてるから、また今度な」
小さく手を振るユメちゃんと、全身を使って手を振るゲンを背中に家に向かった。
家も相変わらずだった、先にユキが帰ってるハズだけどボードが無いって事は今は海か。
おとぉとおかぁも相変わらず、変わらないものがあるって幸せなのかもしれない、俺は荷物を置いて家を出た。
チカの家の外にはみんながいた、これから島案内を要求されたから渋々案内することになっている。
みんなが使う海を案内して、お祭りをやる神社、その他もろもろを案内して自由行動、迷わない程度に案内したから大丈夫だろ。
俺とチカはとりあえず中学校に行った、何をするでもなくとりあえず暇つぶし
「そういえばさっきユメちゃんに会ったよ」
「どうだった?やっぱり子供のまま?」
「うん、でもどことなく大人っぽかった、ゲンは相変わらずだったけどな」
笑いながら歩いてるとまた見慣れた顔が、中学校にふさわしい人物だ、この人の事でどれだけ俺らが悩まされた事か
「カイ君!チカちゃん!」
「フウちゃん、久しぶり」
前よりパワーアップしたフウちゃんだ、見る度に先生らしさが失われていく気がしてならない、ダイチの事を聞きたいけどフウちゃんに聞くの微妙だからやめとこ
「フウちゃん、ダイチとはどうなった?」
聞きやがったよ、折角俺が遠慮したのに、人の気持ちをつゆしらず、平気でしかも何の躊躇いもなく、それにフウちゃんが顔を真っ赤にしてるのを見ると、もしかして……
「やっぱり歳が離れ過ぎてるよね?」
「付き合ってるの!?」
「……一応ね」
心の中でダイチを誉めてる俺がいた、ってかニヤリが止まらない、ヤベェ、何で他人の事なのにこんなに嬉しいんだろ
「もしかしてこれから会うの?」
「うん」
「こんな事聞くのも変かもしれないけど、何でOKしたの?」
「男の人にあんなに熱心になられた事が無かったから、何だか嬉しくて嬉しくて」
フウちゃんもまだ乙女か、夢って叶うもんなんだな、フウちゃんは走り去っていった、俺とチカは笑いっぱなしだった
「良かったな、ダイチ」
「カイは愛に年齢は関係ないと思う?」
「大なり小なりあるんじゃない、価値観の違いとかジェネレーションギャップとか。これを言ったら元もこも無いけど、好きなら良いんじゃないの」
「そうだね」
人の心は不思議なもの、簡単に揺らぐし簡単に移り変わる、でも揺るぎないものもあっても良いんじゃないの、俺はそう思った。
変わらない自然、変わらない街、でも確かに変わっていく人の心、でも変わらないのも人の心、俺とチカはどっちだろ