赤にストーカー
夏休みを間近に控えて期末テストが終わった今日この頃、部活も始まって色々活気づいてきた。
最近はヒノリとコガネを二人にする計画というか俺達が二人きりになりたいっていうか、とりあえず3組になることが多い。
今日の部活帰りもいつものようにチカと二人で帰ってた、何か最近心なしかチカの元気がない
「チカ、どうした?」
「何が?」
「最近元気無いじゃん、ため息ばっかりだし」
チカはしまったって感じの顔をした、何か不満でもあるのかな
「実は……」
「実は?」
「やっぱダメ!カイには言えない」
「何でだよ?俺に言えないような事でもしたのかよ?」
チカが無言で首を横に振った、最近大人っぽくていうか成長してきたから見なかったけど、チカが不安そうな顔をしてる、こんな顔を見るのは久しぶりだ、高校に入ってからは見なかった自分で何かを溜め込んだ顔だ
「……ストーカーがいるみたい」
「はぁ?」
「ここ一週間、ストーカーにつけられてるような気がするんだよ」
「何で?」
チカは息を整えて決心したのか話だした
「最近下駄箱に変な手紙が入ってたり、夜に窓に石を投げられたり、一人でいるときとかは誰かの気配を感じるんだよね」
「今は?」
「無い、でも一人でコンビニとか行くと視線を感じる」
「手紙はある?」
チカは鞄の中から一枚の紙を出した、今は冷静を装ってるけど、実はかなりムカついてる、そんなふざけたような奴は全身全霊をかけて殴りたい気分だ、んで手紙の内容は
《チカちゃんへ
僕の大好きなチカちゃん、いつもいつも見てるよ》
気付いたら紙をクシャクシャにしてた、絶対に殴る、何だこの気持悪くてウザイ手紙は、でも一番辛いのはチカだろうな
「明日から一人になるな、このクズは俺が焙りだす」
「ありがとう」
多分俺がいればコイツは寄って来ないだろ、それを逆手にとるしか方法は無い、でもチカを危険にさらす事になる、一晩考えるか。
翌日、いつもものように一緒に登校した、下駄箱に着いて靴を履き替える時にチカの顔色が変わった、多分また手紙があったんだろ、考えるだけでイライラする
「また手紙か?」
「それだけじゃない……」
そういって手渡した物は、手紙が一枚、それに写真が一枚、チカが学校にいるときの写真だ、やっぱりこの学校の誰かか、手紙の内容は
《チカちゃんへ
僕が見てるのを分かってくれた?
君は僕の物、誰にも渡さないよ》
殺意が湧いた、日本に法律が無かったら殴り殺してるかもしれない、法律があってもいざとなったら理性が飛ぶかも、それくらい許せなかった。
チカには今日、一人で帰ってもらう事にした、ストーカーがついて来ればこっちのもの、馬鹿みたいにチカを一人で帰すけど俺が後をつける、チカには辛いだろうけど細い路地に入ってもらえば自然とストーカーが出てくるだろう、そこが勝負だ
「チカ、少しでもヤバくなったら俺を呼べ、近くにいるからすぐに行く」
「分かった」
「視線を感じたらメールを打つふりをしろ、確認できたら俺がメールを送る、そしたら人がいない路地に入れ」
「カイ、大丈夫だよな?」
「俺を信じろ」
チカを抱き寄せて、耳元で話しかけた、俺が今からやろうとしてることは、チカが一方的に危険な事だからだ
「ゴメンな、チカにばっかり辛い思いをさせて」
「大丈夫だよ」
チカが離れて歩いて行った、何とか確認出来る位置から怪しまれないようにチカをつけた、こんな事をしてるのはもどかしいけどしょうがない。
10分くらい歩いてチカがメールを打つふりをしたのが確認出来た、俺からはストーカーを確認できなかったけどメールを送った
“ゴメンなチカ、確認した”
送信、辛かったけど今後の事を考えたら我慢するしかない、チカが暗い路地に入って行った、その後すぐにうちの高校の制服を来た奴がチカの後をつけていった。
俺は走ってチカが入った路地に行った、そこには呼び止められた怯えたチカがいた、男は気味が悪い笑を浮かべてた、俺は肩を掴んで後ろの方に投げ倒した
「カイ!」
「何する…」
俺が誰だか分かったらしい、逃げると思ってたけど立ち上がってポケットからバタフライナイフを取り出した、最高のクズだな
「君さえいなくなればチカちゃんは僕の物」
「大丈夫、俺がいなくなる事はまずない、それより自分の心配した方が良いんじゃない?このゲス野郎が!」
ストーカーがナイフを振り回しながら来た、ってか突かれるより危ねぇ、チカを後ろに遠ざけて避けながら殴るチャンスをうかがってた
「ハハハ!大した事無いねぇ、死んじゃうよ?」
コイツの笑い方も、喋り方も、全てが俺の逆鱗に触れる、今すぐにでも殴りたいけどナイフを避けながらじゃ
「死ねよ!君は僕にとって邪魔な存在な……!」
つまづいてよろけたのを見逃さなかった、ナイフを持ってる右手を思いっきり殴った、胸ぐらを掴んで寄せた
「さぁて、とりあえず謝ってもらおうか」
「やだね、君なん……」
全体重をかけて殴り飛ばした、白眼をむいて口から泡ふいてる、強く殴り過ぎたかな、でもこれくらいしないと俺の気が収まらない
「カイ、頬が切れてる」
「えっ?」
触ってみると確かに血がついてた、切られてたんだ、気付いた途端に痛み出した、耐えられるけどうっとうしいな
「チカ、帰ろう。コイツはもう良いだろ?」
「うん、でも一つ……」
チカはストーカー野郎をひっくり返して、背中に落書きをした、いつ起き上がるか分からない奴だったけど、俺も面白いから楽しんでた
《僕はストーカーです》
しかも油性ペンの白、これは消えないぞ、顔にも書いてるし、明日から学校に来れないじゃんこれじゃ、まぁ良いんだけど
「すっきりした!早く帰って手当てしよ」
「OK」
ストーカー野郎を踏んで帰った、当分学校には来れないだろうな、あっそうだ、これだけじゃまだ甘いよな
「チカ、悪い少し待ってて」
「何で?」
「良いから」
走って倒れてるストーカーの所に行った、落書きだけじゃダメだよな、ズボンとパンツを脱がしてチカと俺に繋がるもの全てをドブに流した、下品な俺、どうやって帰るのかな。
戻るとチカが不安そうな顔をしてた
「何してたの?」
「ズボンとパンツ脱がしてきた」
顔を真っ赤にした、聞かなきゃ良かったのに、まぁアイツも不幸だったな、俺にケンカを売ったのがそもそもの間違いだったんだよ
「どうやって帰るんだろ?」
「バッグは残したから」
笑いながら帰った、頬を切ってるから周りに見られてたかもしれない、でも完全に二人の世界に入ってたからな。
家に帰って傷の大きさにビックリした、一生残るなこれは、チカを守った勲章として自分で妥協した