青と宝探し
2種目が終わって俺らの班当然一位、でも次の種目で大どんでん返しがあるらしい、宝探しと称したものは山の中に宝箱というか得点があってそれを探すものらしい、だから一つの班が異常にとれば一位になる事は可能だ、だから断トツ一位だからって侮る無かれ
「これが地図だって」
「うわ、俺勘弁」
「私も」
「地理の授業みたいだな」
矢野がじっくり見てる、こんなの解るのかよ、俺にはとりあえず適当にあたるしか方法は見つからないけどな
「矢野、解る?」
「は、は、は、はい!何とか解った」
「まぁビリにならない程度にがんばろ」
矢野のナビで始まった、ってか矢野のナビ通りにやってると見つかる見つかる、木の上とか土の中、石の下にまであるよ
「矢野スゲェよ!ってかコガネ役に立ってないぞ」
「うるせぇ!司令塔なんだよ俺は」
まぁコガネの言い訳はおいといて、もしかしたらこの種目でも一番がとれる勢いで宝(得点)を見つけていった
「あそこに一つ」
そこは細い木の枝の先だった、流石にあそこには登りたくないな、折れそうで怖い
「俺の出番だな」
今まで役立たずのコガネがやっと動きだした、でもこんな所どうやって取るつもりなんだろ
「どするんだよ?」
「こうだよ!」
力任せに木を蹴り飛ばした、木は大きく揺れて枝に引っ掛かってた得点が落ちて来た、何だよコガネの馬鹿力っぷりは、しかも勝ち誇った満足気な顔をしてるし、でも……
「一点」
「えっ?ヒノよく見たのかよ?十点の間違いだろ」
コガネに得点の書かれた紙を差し出す、俺も覗いたけど、どうみても一点にしか見えなかった、コガネお疲れさん
「はぁ」
明らかに落胆してる、その時だった、俺の携帯が鳴りだした、こんな山奥でよく繋がったな、電話の主はチカだった
「もしもし、何?」
“カ…、ツ…サ…が………、コテ…が走って………、来て!”
「何?聞こえな…」
“プープー”
切れた、でもチカが泣いてるのはハッキリ確認出来た、電波が確りしてなかったし泣いててよく分からなかったけど、ツバサとコテツに何かあった事は何となく推測がつく、泣いてた事からただ事じゃないことは確かだ
「カイどうした?」
「分からないけどチカが泣いてた」
「チカちゃんが!?何で?」
「コテツとツバサに何かあったらしい。コガネ、とりあえず戻るぞ、ヒノリと矢野は後から来い」
そういって俺とコガネは走って宿に向かった、ヒノリと矢野も走って来たけどあっという間に見えなくなった。
玄関に向かうと何人かの先生と泣き崩れてるチカがいた、先生の数とチカの泣き方を見て緊張感が増した
「チカ!何があった!?」
「カ、カイ!」
思いっきり飛び付いて来た、公衆の面前でこれはちょっと…、そんなこと考えてる暇は無いよな、心苦しいけどチカを離して話しを聞いた、皆が見てるし
「チカ、とりあえず説明お願い」
チカをなだめて、呼吸を落ち着かせて話せる状態にした
「ツバサが落ちて、それを聞いたコテツが走って山に入って行っちゃった」
最悪だよ、一人で山に飛込むなんて、ってかやっぱりコテツは本気でツバサの事が好きらしいな、そんな事よりこの状況は尋常じゃないくらいヤバい状況だな、後からヒノリと矢野が息をきらして玄関に入って来た、それを見てチカに泣いてるところを見られないように上着を被せた
「ヒノリ、チカを頼んだ。コガネ、行くぞ」
「おい!四色、五百蔵、勝手な行動は許さないぞ!」
このタイミングで担任かよ、コイツをぶん殴って出ていきたいところだけど、そんな暇は無いか
「じゃあ誰が行くんだよ!?」
「それは…。でもお前らが行くのは危険だ!」
「少なくとも、ここにいる奴らを行かせるよりは安全だと思うけどな」
フリークライミングで山とかは慣れてるし、体力とかも自信がある、そこら辺の教師よりはマシだと自負してる
「分かったか?行くぞコガネ」
周りの制止をふりきって走って山の中に入った、一つ盲点だったのが何処で落ちたか聞き忘れた、俺は最高の馬鹿だな。
とりあえず下に降りながらツバサとコテツを探した、おかしい所とか枝が折れてるような所を重点的に探しながら、途中で会った生徒に話を聞いたけどこれといって有力情報はない
「カイ、ヤバいぞ、日が暮れてきた」
「ホントだ、………、しょうがないけど一旦戻るぞ、夜の山は危なすぎる」
渋々、帰る事にした、今回はゆっくり慎重に下を見ながら、でも山を出る頃には辺りは真っ暗になってて見付かってもどうにも出来ない状態だった、後はコテツとツバサが先に着いてる事を祈るだけだな。
俺の期待を見事に裏切ってくれた、ツバサどころかコテツすら戻って来てない、これは本気でヤバい、万が一が……ってそんなこと考える事も出来ない、今出来るのは祈るだけだ
「コテツとツバサ、帰って来るかな?」
「チカが祈ってればな」
「ふざけないで」
「悪ぃ、正直俺もしんどい、信じてるけど…、でもやっぱり」
沈んでると一人の男子が走って来た
「おい!誰か来たらしいぞ!」
えっ?もしかしたら、いや絶対だ、コテツとツバサに決まってる、コテツなら絶対にやってくれるに決まってる。
案の定コテツだった、背中にはグッタリしたツバサをおぶりながら、足には怪我をしたのかズボンが真っ赤に染まって、ツバサも傷だらけだし真っ黒だ
「コテツ!大丈夫か?」
「大丈夫に見えまっか?わいより先に…、ツバサ、は、んを……」
その場に倒れた、コガネはコテツを、俺はツバサを担いで部屋に向かった。
部屋に二人を寝かした、二人とも傷だらけだった、ツバサの方は左腕と左足の擦り傷程度だったけど問題はコテツだ、右足の膝の下から10cmくらいに渡って枝で切ったような切傷があった、それに足首は腫れあがってた、この状態で人一人をおぶって来たんだから尋常じゃない精神力だな
「う、んん」先にコテツが起きた、起き上がろうとしたけど体が痛むらしく断念した
「無理するな」
「皆はんお揃いかいな。それよりツバサはんは?」
「大丈夫だよ、コテツの怪我に比べたらな」
コテツは笑ってるけど普通なら歩けないくらいの傷だよ、コテツの事見直しちゃったな
「んー」
ツバサがやっと起きてきた、ツバサの方は起き上がれるらしい、擦り傷で済んだんだからラッキーだったよな
「生きてる、僕生きてる」
「コテツに感謝しな」
ツバサはコテツを見るとボロボロと泣きだして抱きついた、新しい恋ってか
「コテツ!」
「痛!痛いでんがな、死ぬ死ぬ!」
本気でコテツがもがいてる、それでここまで歩けたのはどこの誰だか、でも好きな人のタメなら何でも出来る、コテツはそれを証明してくれた
「はっ!ゴメン。僕つい嬉しくて」
「まぁ気にせんといて」
コガネとヒノリは呆れてる、チカは顔を真っ赤にして顔をそらしてるけどもっと大胆だったぞ
「カイっち笑うな!」
俺は大爆笑、二人のお似合いっぷりがツボだった、でも一件落着だな
「みんな迷惑かけてゴメンね」
ツバサが頭を下げて謝った、謝る相手を間違えてるけどな
「俺らじゃなくてコテツに感謝しろよ」
「ツバサ君を命がけで助けたんだぞ」
「カイには負けるけどな」
「最高のダーリンね」
チカ、さりげなくのろけないでくれよ、ヒノリは案外楽しい事言ってくれるじゃん、後はコガネだけだぞ、気付けよ
「わいらどうやって帰るんや?」
「どうやって、ってバスで」
「もう出てるんとちゃう?」
時間を見ると夜の10時を回ってた、確かにバスはとっくに出てる時間だ、俺らのタメに待ってる訳は無いし、もしかして放置!?
「お前ら、起きたなら行くぞ」
担任が扉を開けて入って来た、いまいち理解が出来ない、担任がココにいることやいたなら呼ばなかった事が
「行くって?」
「帰るんだよ!」
「バスは?」
「俺が送って行く、もう他の生徒は全員帰ったぞ、お前らをずっと待ってたんだ」
今この担任に物凄く感謝してる自分がいた、でも理解出来ない何で俺らだけ残してくれたんだろ、普通なら無理矢理でも帰されそうな気もするけど
「何で俺らを残したんだ?って顔をしたるな」
「はい」ってか今素で敬語を使った、皆も気づいて驚いてるし、自分が一番ビックリしてるけど
「どうせまた色々理由を付けて残るつもりだったんだろ、だから俺が他の先生に頼みこんどいた」
『ありがとうございます!』
反射的に立ち上がって頭を下げてた、コガネも俺と同じ行動をとってた、教師に感謝したのは始めてかもしれない
「但し!お前ら帰ったら掃除だからな!そこの女子もだ」
やっぱりか、無条件でこんなことしてくれるとは思って無かったかけど、まぁ良いかそれくらいなら。
帰りは小さいバスみたいなワンボックスだった、あい●りみたいな車だ、チカと俺は寄り添っていつの間にか寝てた、他は言うまでもないだろ