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赤とキャンプ

今日は待ちに待ってはないけどキャンプだ、ってかダルい、どこの高校でもあるけど親睦を深めるキャンプなんていらないよ、疲れるだけだし

「カイ、元気ないな」

「かったるいだけだよ」

「そんなことあらへんやろ、高校生にとってキャンプっちゅうもんは恋のターニングポイントやで」

何でコテツがココにいるんだよ、クラス別に並んでるのに極自然に混ざってることがすごい、それに恋?コガネへの当て付けかよ

「だって、コガネ」

「何で俺なんだよ?」

「ヒノリと二人きりにしてやるから安心しろ」

「だから何で俺?」

「コガネはん、素直にならへんと掴める恋も逃げて行きまっせ」

コガネは顔を赤くして黙りこんだ、コテツほど積極的になれとは言わないけど、人並みに自己アピールを出来るくらいにはなってほしいよな

「大丈夫やで、わいとカイはんが助けてやるさかいに」

「コガネ、やっぱりこのキャンプが勝負だな」

「俺の事は俺がどうにかする、ほっとけ」

「言ったな、事後報告はちゃんとしろよ」

「秘密は無しやで」

コガネの一歩を無理矢理歩ました俺らは各々の班に戻って点呼を受けた、バスに乗って速攻意識が飛んだ。


気づいた頃には着いてた、周りは山の中と思われる、みんな降りる準備をしてるけど隣で俺以上に爆睡してるコガネがいた

「起きろ、コガネ起きろ」

頬を叩いても無反応、しょうがない怖いけどいちかばちか使ってみるか、周りに聞こえないように

「ヒノリを抱くぞ」

“ドフッ!”

殴られた、しかもみぞおちに完璧に入った、無言で悶絶してるとコガネが起き上がって来た

「どうしたカイ?」

「…殴られた」

「誰にだ」

キレてるけど本当の事言ったらどうなるんだろ、ってか吐き気と戦ってやっと勝てた

「コガネに」

「俺?何で?」

「言えないよ、また殴られる」

コガネが追求してきたけど今度は顔面にきそうだからやめといた、今度から起こす時はヒノリは禁句だな。

降りると森の気持ちよかった、潮風には慣れてたけど森の空気は新鮮でいい、この中でぼーっとしてるだけで一日過ごせるな

「これから何するの?」

「カイ知らないの?」

「知ってると思った?」

「……、ゴメン過大評価しすぎた」

何か引っ掛かるけど、コガネと一緒で何も聞いてないない、ってか聞く気ゼロだけど

「宿まで歩きだって」

「ヒノ、それ本当か?」

無言で頷く

「最悪だよ、コガネ、帰らない?」

「交通手段は?」

「……徒歩」

「ヒノ、宿行くぞ」

やだぁ、コガネとヒノリが先に歩いて行った

「行こう」

「矢野か…」

「一番の班は夕食豪華らしいよ」

「コガネ!ヒノリ!気合い入れて行くぞ、矢野も!」

一気にテンションが上がった、夕食のタメなら逆立でも何でもするよ、でも不味かったら暴れるけどな。


割りと歩いたな、アバウトな地図を貰ったけどパッと見10Km近くあるぞ、この学校は生徒を行き倒れさせたいのかよ

「痛っ」

ヒノリが足首を捻ったらしく倒れた、人間のそれとは思えない速さでコガネが寄って行った

「ヒノ大丈夫か?」

「痛い」

コガネが患部を触ったり動かしたりして確かめてる

「大した事無いけど歩くのはキツイな」

「みんなゴメンなさい」

「コガネどうするんだよ」

コガネは考えた末に、背中をヒノリに向けた

「乗れ」

「でも…」

「足手まといになりたく無かったら乗れ、そのままが一番迷惑だ」

「ありがとう」

渋々コガネの背中にヒノリが乗った、二人とも顔を真っ赤にしてる、幼馴染みなんだからそれくらい大丈夫だろ。


着いた頃には日が沈んでた、部屋は当然女の子と別だ、部屋にはまだ誰もいなかった、この中では一番だったらしい、コガネはヒノリの怪我の手当のタメに先生の部屋に行ってる、一人で真っ暗な森を眺めてると誰かが入って来た

「カイはん、コガネはんいてまっか?」

コテツも案外早く着いたんだ、にしても勝手に人の部屋に入って来るなよ、しかも他のクラスの

「聞いたで、ヒノリはん怪我したんやて?」

「一日で治るくらいの捻挫だよ」

「コガネはんはどうやった?」

コテツが求めてる答えは不適な笑で理解できた

「ずっとおぶってた」

「ホンマかいな!?災い転じて福と成すとはこのことやな」

二人で今日のキャンプの事とかコガネの事、いろいろ話をしてた、この部屋はコガネとあと3人くるはずなんだけど誰も来ない、そんな事をも考えてると勢い良く扉が開いた

「カイ!ヒノリは大丈夫か!?」

チカとツバサが入って来た、ってか男子と女子の部屋ってかなり離れてたし、行き来禁止だったはずなんだけど

「何で二人がココに来てんだよ!?」

「いや、ヒノリが部屋にいなかったから」

「ヒノノは大丈夫?」

二人とも友達を気にするのは良いけど、男子の部屋に来るなよ、俺も説教くらわなきゃいけないんだから

「明日には治るって」

「良かった〜」

「コガネんは?」

「弱ったヒノリはんをたらしこんでるみたいやで」

「誰が誰をたらしこんだって?」

コガネがそこに立ってた

「いやぁ、それは、あれや!なぁカイはん」

「俺にふるな」

「それにチカちゃんとツバサ君も何でここに?」

「ヒノリが気になって」

「そうだよコガネん、みんなヒノノが心配なんだから」

「それはありがたいけど、女子がココにいるのがバレたら皆で説教されなきゃいけないんだぞ」

二人が絞んだ、コガネは部屋の中に入って来て座った、この部屋5人入ると狭いな、そんな事を考えてると一番面倒で恐れてた事が起きた、担任が入って来た

「お前ら何してる!」

頭に響くでかい声、部屋にいた奴らが出てきて俺らの部屋の周りに集まって来た

「女子を連れ込むなと散々言っただろ!」

「悪かった、だから怒鳴るな」

「黙れ!お前ら全員来い!」

あぁ、ダルい、頭がガンガンする。

俺達は連れてかれるがままロビーらしき所に並べられた、案外他人の目が痛い

「何でお前らは問題を起こすんだ!?」

「問題にすかれてるからじゃない」

「同感」

担任が殴ろうと思って拳を振り上げた時

「クズか」

その一言で拳は止まる、入学以来この言葉を使えば殴られる事はない、俺とコガネはこれに味を占めて自由にしてるけどその内殴られるんだろうな、それが分からないほど馬鹿じゃないからな

「すみませんでした」

セリフっぽく言ってその場を去った、飯の時間も近いし早くこの視線から逃げたかった

「チカ、ツバサ来るときはメールしろ、外に出てやるから」

「分かった」


部屋に帰ると同じ部屋の奴がいた、みんな説教されたのを知ってるらしく、質問攻め

「潤間さん達と何してたんだよ?」

「何も」

「五百蔵は春日さんをたらしこんだんだって?」

「自分が言った事がどんだけ馬鹿な事か身を持って実感するか?」

キレた、コガネをからかった奴は震えながら謝ってる、馬鹿な奴だな、コガネに冗談は通じないこれ今日の教訓、例え寝ている時でも。部屋に実行委員の人が来て

「ご飯だから集まって下さい」

そうかもうそんな時間か、確か一番の班はそこで発表されるんだよな、しかも豪華な料理ときた。


食堂は異常に広かった、まぁ一学年がまるまる入るくらいだから侮る無かれ、班で座るんだけどヒノリと矢野が来てない

「ヒノリ来れないの?」

「来るって言ってた」

噂をすればヒノリと矢野が来た、歩き方を見る限りもう大丈夫らしい

「ヒノリ、大丈夫なの?」

無言で頷く、良かった大事にならなくて、心なしかコガネのテンションも上がってきたし後は発表だけだ、実行委員長が前に出てきた

「宿に到着した順番を発表します」

食堂が最高潮に盛り上がる者と、明らかに自分達は無いとシラケてる者、俺達は前者だ

「第三位、5組の烏丸班」

コテツ達の班か、やるじゃんコテツ

「第二位、1組の土屋班」

まだだ、まだ俺達に希望がある

「第一位……」さぁ来い!コガネだって頑張ったしヒノリの怪我を無駄にするな

「7組の春日班」

春日班…、俺達の班だ!

「コガネ、一番だって!豪華な料理だぞ」

「俺のお陰だな」

盛り上がってる俺らを次の一言がどん底まで落とす

「一位の春日班にはデザートにゼリーが付きます」

『はぁ!?』

俺の聞き間違いじゃなきゃ、豪華何てみじんも感じさせない庶民の食べ物なんですけど

「豪華な料理じゃないの!?」

「いえ、ちゃんとしおりにも書いてありますよ」

俺とコガネは矢野を見た、矢野は蛇に睨まれたカエルみたいになった

「矢野、嘘ついたな!」

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!私の聞き間違いです!」

「カイ、矢野を攻めても始まらない、無いよりあった方が良いだろ」

確かに、まぁ良いか、そこまで期待もしてなかったけどゼリーはイタイな、攻めても豪華料理に変わるわけじゃないし、あるもので我慢するか。


飯を食い終って、その後風呂に入って自由時間だ、やることもないしコガネはいつの間にかいないし、とか考えてたらメールが来た、差出人はチカだ

“暇”

この一言のみが送られて来た、確かに分かるけど文章で送って欲しいと思うのは俺だけじゃないよ

“玄関に来て、俺も行くから”

そう送って部屋を出た、背中に罵声を浴びながら。


玄関に着いたのは俺の方が先だった、その後すぐにチカも来た、ってかキャンプって凄いな、いつの間にか付き合ってる奴がちらほら。

俺らは外に出て階段に腰かけて話した、暗いけど森の音とか川の音が聞こえて俺にとっては居心地が良い

「ココ何も無いから自由時間つまんない、みんな誰が好きとかしか話さないんだもん」

女の子ってやっぱりそんなもんか、男も同じようなもんだけどな

「ツバサがいるだろ?」

「コテツとどっかに行った」

もしかしてツバサとコテツって付き合ってたりするのかな、だったら何か楽しいよな

「俺を呼んだのはそれだけじゃないだろ?」

「何で?」

「男達の呼び出しが多いから俺といればそれが無いと思ったんだろ?」

チカが何で分かったの、って感じの顔をしてる、少なくとも俺もチカと同じ状況だったし、廊下での会話でコクるコクらないって聞こえたし

「何で分かったかって?俺もそうだから、コガネは知ってか知らずかいつの間にかいなかったし」

「何で皆アタシ達が付き合ってるの知ってるのに」

「僅かな期待か、抑えられない衝動、どちらかだろうな」

チカは不安な顔をしてる、何が不安なのか分からないけど久しぶりにあの顔を見た

「カイは大丈夫だよな?」

「何が?」

「なびかないの?」

「チカから違う奴に?」

無言で頷く、変な事言う奴だな、俺がチカ以外に興味を持つなんて死んだ人を生き返らせるくらい有り得ないな

「チカはどうなんだ?」

「アタシはカイだけだよ!」

「俺もだよ、俺がチカを思う気持ちはチカが俺を思う気持ちと同じ、揺るぎないもの、かな」

「やっぱりカイは最高!」

そう言ってチカが抱きついて来た、高校に入ってから二人の時間が少なかったから今という時間が永遠になることを望んでる俺がいた、その後俺から離れたチカが目を瞑った、俺もそれに応えてキスをした。


暗闇の中に溶け込んだ俺は暫くの永遠とチカを感じた

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