表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

暗幻明現

作者: 駄目人間

早とちりしすぎてフライング投稿してしまった奴を色々加筆修正した奴です。

一応、未発表作品の定義に当てはまる様子なのでこれで・・・・・・


ただ、どんなに修正しても結局ホラーっぽくは無いかも知れません。


「私は死んでいた。気がついたら。」



「何があったのか、何が原因で死んだのか、思い当たるものが何もない。」



「何故、私は死んだのであろうか。」





・・・・・・俺は名を管抱劉と言う。

職業は会社員で、

俺に話しかけてくる顔も名前も知らないあいつと同じく、

原因不明の死を、いや何で死んだのかが全くわからない男だ。



「ねぇ、君は一体どの様な理由で死んでしまったのだろう?」


奴は俺に問いかけてくる。


「知らねぇよ。お前は?」

「私も。全く分からない。」


自慢気に答えられた。何故だろう、腹が立ってくる。多分、あの顔だろう。

さっきからニヤニヤしやがって。腹が立つにも程がある。


「笑うな。」

「何故?」

「ムカツクからだ。鬱陶しい。」

「仕方ない。」


ようやく笑わなくなった・・・・・・あー、疲れた。


「つか、お前誰だよ。」

「私か?名乗っただろう。」

「いや、知らねぇ。」

「そう?」

「知らねぇ。」

「本当?」


しつこい奴だな・・・・・・


「知らねぇって言ってるだろ。

つか、なんだお前、なんでフードなんか被ってんだよ、顔が見えねぇだろ。口だけ見て誰が得するんだよ。」

「これは仕方がない。」

「何でだ?」

「知らない方がいい。」


なんだこいつ、急に暗くなったぞ。何なんだ本当に。


「で、名前は?」

「名前・・・・・・」



奴はそう呟いてから暫くの間黙っていた。

何も見えない空を見上げながら。



ふと、俺も空を見上げてしまった。少し前にも見たが、本当に何も見えない。

黒、ただひたすらに黒色の空が広がっている。夜という訳ではなく、本当に何も見えない。


「私の名前は、遼だ。」

「ん?」

「鶴田遼。」

「お前の・・・名前か。」

「そう。」


唐突だな・・・・・・まぁ良いか。

フードはどうしても外さないようだ。どうも、何かしらの事情があるらしい。


「なぁ遼。」

「何かな?」

「お前、歳は?」

「11歳。」


随分若い。確かに、身長は低い、声は高いで低年齢であろうとは思っていたが。


「君は?」

「俺は47だ。」

「ふぅん。結構なオジサンの様だね。」

「うるせぇ。」

「アハハハ。」


ああそうだよ、47にもなって独身で万年係長だよ。悪いか畜生。

くそっ、ガキが。





話はそこで途切れ、時間だけが過ぎていく。

この世界に時間が存在しているのかは分からないが。


しっかし、本当に真暗だ。星も雲も、何も見えない。いや、何も無いんだろう。

ここは本当に何処だ?


「何も無いね。」


ん?なんだいきなり・・・・・・


「そうだな。」




「ねぇ、オジサンさ。生きていた頃は何をしてたの?」

「何って・・・仕事だよ。」

「仕事かぁ。どんな仕事をしてたの?」

「どんなか・・・まぁ、普通の商社だな。そこら中駆けずり回って必死に働いたな。

まあ、それでも万年係長で終わったが。部長の何十倍も働いといて給料も上がらねぇし。ヒデェ扱いだった。」

「大変だったんだね。」

「まあな。」


畜生、思い出したら腹が立ってきた。


「あまり、もう気にしなくても良いと思う。」

「ん?」

「もう、死んでしまったんだ、もう。だからね、もう必死に頑張る必要も無いんだよ?」


確かにそうだ。だけれど、俺のあの頑張りは全てが意味の無い物になった訳でもある。

俺のあの頑張りはなんだったんだ・・・・・・


「そうだな。」



「私はね、病気だったんだよ。」

「病気?」

「アルビノ。私、外には出られなかったんだよ。」


アルビノ・・・先天性白皮症って奴か。

先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患で、皮膚癌のリスクが跳ね上がるんだったか。


「窓には分厚い遮光カーテン、雨戸も付いてたけど念の為で遮光カーテンも一緒にしたんだって。

夜にならないと外に出られなくて、それ以前に外に出られなくて。家でずっと過ごしてた。

学校も行かないで、親が教師だったから勉強は教わることが出来たけどね。でも、友達は居なかった。」

「友達、か。」

「うん。オジサンは友達は?」

「半分は戦死した。内五割以上が大東亜で、残りは何処で死んだのかが分からない。」

「・・・そうなんだ。」


残りの友人の大半は行方不明だ。島の沈没で殆どの奴が居なくなっちまった。

なんで沈んじまったんだか。


「というか、もう友達も関係ないだろう。死んじまったんだしな。」

「そうだね。今はオジサンと二人っきりだもんね。」

「ああ。」





空は黒く、辺りは真暗。果てしない闇がそこにある。

何故かこの場所だけは明るくて、そして、土管が三つ、積み重なって放置されている。


空腹感は無い。死んだから当然であろう。だが、不思議と眠気はある。

何故だろうか。


多少、風が吹いている。冷たい風が。

空気自体も少々肌寒い。



「オジサン。」

「なんだ?」

「オジサンは寂しくない?」

「特には無いな。

親も死んだし、近くに住んでる友達は薄っぺらい関係だったし、会社には世話になった上司も居ない。」

「そっか。私はちょっと寂しいね。まだ、知りたいこともあった。まだ生きたかった。でも・・・」

「でも?」

「・・・死んじゃった。フフッ。」


遼は笑っていた。とても寂しそうに。


「そうか。お互い、まだ生きたかったんだな。」

「そうだね。」


なんかだんだんガキらしくなってきたなこいつ。いや、らしいかは分からんな。




少し寒さが増してきた・・・・・・


「遼。」

「何?」

「寒くないか?」

「今のところは。」


良かった。


「寒くなったら言えよ。」

「うん。」



暗い、そして寒い。相変わらずの景色、相変わらずの空。



「ねぇ。」

「なんだ?」

「どうして死んだのか、思い出せない?」

「無理だな。どうやっても思い出せない。」

「私もだ。全然思い出せないよ。」


どうして死んだか・・・・・・会社で何時ものように残業を終えた所までは覚えているんだが。

周りに人が居たかどうかは覚えていない・・・・・・


そういえば何故俺と遼だけなんだろうか。

もし、ここが死者の世界とか、冥土とかであれば、他にも人はいるだろう。

何故、俺と遼だけなんだ?他には誰も居ないのか?もしかしてここは冥土ではないのか?

もしそうだとしたら、一体ここは何処だ。



わからん、わからん。ここは何処なんだ。

俺は本当に死んだのか?本当は生きているんじゃないだろうか。

死んでいるのなら死ぬ前の記憶ぐらいはあってもおかしくない筈だ。いや、有るべきだ。


「うぅ、寒くなってきたね。」

「ん?あ、あぁ。」


考えていたからか、寒いのに気がつかなかった。確かに寒いな。

俺のスーツ、貸してやるか。


「寒いならこれ着とけ。」

「良いの?オジサンは寒くないの?」

「大丈夫だ。」

「でも、ちょっと寒そうだよ?」

「問題ない。」

「でも・・・」


ああ、しつこい奴め。面倒だな。


「じゃあ・・・」


こいつにくっついてスーツを二人で使えば良いか。幸い、このスーツ広げると横幅かなり広いし。


「これでどうだ?」


ああ、遼の体温を感じる。これは生きているという事なんだろうか。

それとも、やはり死んでいるんだろうか。


「・・・暖かいね。」

「だろ?」


ちょっと恥ずかしいみたいだ。


「ねぇ・・・オジサン。」

「ん?」

「オジサンって、趣味、何かあった?」

「ああ。ギターと射撃だな。」

「へぇ。ギターは私も好きでよく弾いてたよ。」

「そうなのか。」

「うん。」




「寒くないか?」

「うん。オジサンがくっついてくれてるから・・・大丈夫。」

「そうか。」



暗い。相変わらずの暗さ、静けさ、寂しさ。これは一体何を象徴しているんだろうか。

この世界は一体何なんだろうか。



「オジサン。」

「何だ?」

「ちょっと、眠くなってきた。」

「寝るか?俺に寄りかかっててもいいぞ。」

「うん・・・それじゃあ、おやすみ。」

「ああ、お休み。」






・・・・・・遼は今は眠っている。

起きているのは俺だけか。随分と暇だな。


しかし、本当この世界は何なのだろうか。死後の世界、死者の世界、冥土、これのどれにも当てはまりそうにない。

ここだけ何故か明るく、何故か土管が置いてある。俺と遼以外誰も居ない。

空は真黒で何も見えない、何も無い。辺りも暗く、先が見えない。永遠の闇。

何の目的でこの世界はあるのだろうか。そもそも俺は死んだのか?

そして遼、こいつも死んだのか?本当に死んでいるのだろうか。


そういえば、今ならフード、外せそうだな。

こっそり外してしまおうか・・・・・・




・・・・・・何だ、これは。

目が無い。瞼すら無い。眉毛も、口と鼻しかない・・・・・・


「ん・・・」

「ぬわああぁっ!?」


本来有るべきものが、顔の中央から現れた。目だ、一つの目。

目は俺を見ている。


「み、見ちゃった・・・んだ。」








何故だろう、気がついたら俺は暗闇に走っていた。

遼の、悲しく叫ぶ、声を振り切り、無我夢中で。


気がついた頃には、闇に完全に飲まれていた。何も見えない、何も無い。

ひたすら前に進むが、何も見えてこない。闇だけ。



後悔していた。あの時何故逃げたのだろうかと。

出来る事ならあの場所に戻り、遼に謝りたい。許してもらいに行きたい。

無理だ、あの場所が何処にあるのか、もうわからない。

前に進むしかない。





かなり歩いた。前は何も無い。後ろも何も無い。右も左も上も下も、何処を見ても何も無い。

何も見えない。


遼は今頃どうしているのだろうか。きっと、俺のした事に酷く傷つき、悲しんでいるのだろう。

俺はなんて酷い奴なんだろう。最低だ。

だから俺は係長のままだったんだ。

後ろ指を差され、近所の人間に悪く言われ、ガキに変人呼ばわりされ、だから・・・・・・だから。







・・・・・・そういや俺、自殺、したんだったな。

会社ビルの屋上から、飛び降りて。死んだ、俺は確かに、死んだんだ。

死んだはず、死んだはずなんだ。ここにこうして居る理由は分からない、ここが何処かもわからないが。


飛び降りた時の感覚を思い出した。風を切って落ちて行く感覚、気持ちが良かった。

何もかもから解放され、とても、心地良い瞬間だった。




彼女の所に行こう。きっと、後ろを向いて歩けば、あの場所に戻れる。

そして、彼女に謝りに行こう。








見つからない。


見つからない。


どれだけ歩いても見つからない。いや、きっと見つかる。見つけなくてはいけない。

絶対に見つける。





あった。でも、誰も居ない。

近くまで行く。


誰も居ない。遼は、何処へ行ったんだ?

辺りを見渡すが何も見えない・・・・・・一体何処に・・・・・・んぐっ!?


い、痛い・・・う、腕が・・・・・・








「オジサン。」

「は、遼か?」

「なんで、逃げたの?」

「わ、悪かった。その事を謝りたくてここまで戻ってきたんだ。」

「・・・そっか。」


起き上がろうとした。起き上がれない。何故だ?脚が無い。

頭が痒かったから掻こうとした。掻けない。何故だ?腕がない。


「ど、どうなってる。」

「私が、切った。」

「な、何でだ!」

「だって・・・また逃げられたら、今度こそ一人になっちゃう。嫌だよ・・・嫌だよ一人は。」

「だからって何でこんな事を・・・これじゃあ俺は直ぐに死んじまうぞ。」

「大丈夫だよ、オジサン、死んでるし。」

「だ、だけどな・・・」

「・・・私の事、嫌い?」

「そ、それは・・・」

「嫌いじゃないよね?オジサンは私の事好きだよね?謝りに来てくれたんだから、私の事、好きなんだよね?」

「あ、ああ。」

「うれしいっ!」



・・・・・・なんなんだ、これは。四肢を切断され、完全に自由を失った状態で俺はここに居る事になるのか?

最悪だ。だが、彼女が泣く姿を俺は見たくない。


これも運命だ。受け入れよう。








不思議と死なない。いや、そもそも死んでいるから死ぬ必要がないのか。


腕も脚も無い。まるで芋虫みたいだな、状態だけだが。

確か・・・・・・戦争で爆撃をモロに受けたが奇跡的に生き残った軍人だったか?

脚がなく腕もなく、喋れない。唯一目が見えて、口で必死になれば文字が書ける。


確かアレの最後は・・・・・・思い出せねぇ。

良いや、思い出さないで。



「ね、オジサン。」

「ん?」

「私の事、好き?」

「ああ、好きだよ。」

「フフッ、ありがと。」


随分と嬉しそうだ。もうフードは付けていなくて、笑っている顔が見える。目だけは不気味だが。

ただ、単眼症って病気があるのを何となく知っていたからこれも病気なのだろうかと思う。

アルビノに単眼症か・・・・・・随分と酷いな。



そういや、俺何で切断されたんだ?

刃物なのは確かなんだろうが、にしちゃあ切れ味が良すぎる気がしないでもないが。


気にしないでいいか。




「遼。」

「何?」

「俺、何で死んだのかわかったんだ。」

「そうなの?」

「ああ。飛び降りて死んだ。」

「飛び降りて?」

「ああ。確か、会社のビルの屋上から。遺書は書かなかったと思う。」

「そうなんだ。」

「遼は?」

「私は相変わらず。何で死んだのか、全然分からないよ。」

「そうか・・・なあ、俺の脚と腕、どうやって切ったんだ?」

「あ、土管の中に刃物があってね、それを使ったんだ。」


土管の中にか・・・・・・


「切った俺の脚と腕は?」

「わかんない。土管の中に入れたんだけど、気がついたら無くなっちゃってた。」


気が付いたら無くなった?どういう事なんだろうか。


「無くなったのか?」

「うん。刃物も血の跡も無くなっちゃって。

気絶してたオジサンの脚と腕の切断面も気がついたら皮膚が覆ってたんだ。」


全く分からない。

とりあえず、納得できない。どういう事なんだ全く。


「ねぇオジサン、痒い所とか無い?あったら言ってね。」

「あ、ああ。」


痒い所は無いが・・・こんな状態だが、今まで殆どの欲を捨てて仕事に打ち込んできた。

だからか、性欲が、なぁ。後睡眠欲だな。食欲は無い。

腕、無くなったからな・・・・・・

この子に頼むわけにもいかない。何かそれで新しい遊びを見つけられてしまいそうだからだ。

これ以上酷い目に遭いたくは無い。


「あっ、オジサン!」

「どうした?」

「星、星が見えるよ!」

「何っ、本当か?」

「うん!オジサンからは見える?」


見えない。起き上がれないから真上しか見えない。


「見えないな。すまん、起き上がらせてくれないか?」

「うん!」



確かに星だ・・・・・・空に一つ、星が浮かんでいる。真黒の空に、一つだけの光。

とても奇妙だが、とても綺麗だ。


「オジサン、星、見えてる?」

「ああ、見えるよ。綺麗だな。」

「うん。」



俺はまた元の状態に戻る。遼は介護士に向いていそうだ。かなりその手の事が上手い。



「オジサン。」

「なんだ?」

「ちょっと、怖い。」


怖い?


「どうしたんだ?」

「何だか、オジサンが私から離れている気がするんだ。」

「離れている?」

「うん。」

「どうして?」

「わかるの。なんだか、な、な、なんだか・・・怖い。」


・・・・・・


「俺の横、来るか?」

「・・・うん。」


素直だ。遼は俺の横に座る。


「あーあ、腕があったら頭、撫でてやったり出来るんだけどな。」

「・・・ごめんね。」

「良いさ、仕方ない。悪いのは俺だったんだし。」

「ううん、そんな事無いの。」

「どうして?」

「本当はね、ロープ、あったの。」


ロープ・・・なるほど。


「でもね、縛り方・・・分かんなくて。本当、ごめんなさい。」

「良いって。もう、過ぎた事だからよ。」


申し訳なさそうにションボリしている。本当、頭撫でたりして慰めてやりたい。

でも、出来ないな。


「なぁ、俺と一緒にここで横になってくっついてるか?その方が遼も安心だろ。」

「良いの?」

「ああ。」

「怒ってない?」

「勿論。」

「・・・じゃあ、お言葉に甘えて。」

「難しい言葉、知ってるな。」

「・・・まあ、ね。」




遼と一緒に横になっている。俺はそもそも起き上がれないが。

途端に、目の前が明るくなる。


「つ、月だ・・・・・・」

「本当・・・綺麗だね。」

「ああ。」


急に月が出てきた・・・どういう事なんだ。



「ねぇ、オジサン。」

「ん?」

「出来れば、ずっと、一緒にこうしていたいね。」

「・・・そうだな。」


気がかりだ。星といい、月といい。そして俺の消えた脚、腕、切断時に使った刃物。

そしてこの空間。暗闇、永遠の暗闇。謎の光、謎の土管。


・・・・・・どういう事なんだ。





「オジサン・・・」

「どうした?」

「何か、聞こえる。」

「聞こえる?」

「うん。なんだろう・・・ピコ、ピコって音が。」


ピコ、ピコ?


「オジサン、怖い、怖い怖い怖い怖い!」

「ど、どうしたっ!?」

「怖い、怖い!オジサンが離れていっちゃう!」

「え、ちょ・・・どういう事だ?」

「だめ、だめっ!戻ってきて、お願いっ!あ・・・」


?ど、どうしたんだ一体・・・・・・んっ!?


「ゆ、揺れてる!?かなりでかいぞ!遼・・・あれ、遼、おい遼っ!何処行ったんだ遼!遼ぁぁ!」
















目が覚めた。目の前には白い天井。左側には窓があり、右側には扉が見える。

病院の個室だ。あれは・・・・・・公山だ。


「き、公山・・・・・・」

「!?あ、ああ・・・・・・なんて事だ!アハハ、良かった。モッチー!」

「い、いてて・・・急に抱きつくなや。」

「あっ、ご、ごめん。」


あれ、俺、死んでなかったっけ?確かそうだったような。


「公山、俺、どうしたんだ?」

「・・・君、会社帰りに車に撥ねられたんだよ。暴走車に、ね。」


撥ねられた・・・飛び降りたんじゃなかったか?


「そうなのか?俺、記憶んなかだと飛び降りて死んだはずなんだが・・・」

「違うよ、どうあしてそうなったんだい。君は車に撥ねられて死にかけたんだ・・・・・・

四肢の切断、左目の眼球摘出、骨接合術他。右腕だけは切断の必要はなかったんだけどね。」

「え?」

「他に方法があったんだよ、右腕は。でも、ここの医者が下手くそのヤブ医者だったから、切断したんだよ。」

「・・・・・・俺の、右腕が、か?」

「そう。」

「何で知ってる?」

「手術前に僕が医者にある程度の状態を説明して、

一番適切な手術法を説明したにも関わらず医者が切らなくても済んだはずの右腕も切断したからだよ。」


そういえば、公山は国立帝都大学医学部首席卒業で医学界でもそれなりに名の知れた医者だったな。

確か・・・専門は外科と内科だったか。


「成程な・・・なぁ、俺、生きてるよな?」

「勿論だよ!君は生きているんだ。それだけでも有り難く思ったほうがいい。

それに君はとても運がいい。幸い内蔵の方は損傷が少なくて首の骨も折ってない。脳への損傷も少なかったんだよ。

多分落ちた所が柔らかい芝生だったからかも知れないけど。それに僕が偶然通りかかったからね。

本当、君は偶然が重なりあってあの事故でも奇跡的に生きているんだよ。・・・まぁ、これから先、大変だろうけどさ。」

「そうだな。」

「ああ、でも安心しな。僕の親友に義足や義手の開発をしている人が居るんだ。

もしよければその人に話を通してみるけど、どう?まだ開発途中だから実験台って事になっちゃうかも知れないけど。」

「ハハハ、気が早ぇよ。」

「あ・・・そうだったね。」



・・・・・・あれは、夢だったのか?



「あ、なぁ公山。」

「なんだい?」

「最近、自殺した女の子って居なかったか?」

「自殺した女の子?結構いると思うけど。」

「特徴は、アルビノで単眼症・・・」

「抱劉君!」

「な、なんだ、不味い事でも・・・」

「そ、それ・・・知ってるよ、その子。でも、君がまだ意識がない時に・・・」

「名前は、鶴田遼って」

「も、抱劉君!・・・君、一体意識がない間、何があったんだい!?教えてくれ、詳しく!」

「あ、ああ。」



謎の空間で遼と過ごし、どうなったか、事細かく説明した。

終始、公山は難しい顔をしていた。



「・・・どうだ?」

「うん。わかった。とりあえず、その子について僕から君が知らないと思う情報を説明するよ。」

「ああ。」

「まずは彼女の病気について。アルビノは君の知識通りだけれど、単眼症は違う。」


違うのか?


「単眼症は本来重度の知的障害と運動障害を持っているんだ。

胚の初期に前脳胞が左右に分離して大脳の左右両半球になるんだけど、

それが阻害されて二つに分割されなずひとかたまりのままの低形成になる先天奇形でね、視界も正常には発達しないんだ。」

「へぇ。」

「しかも、君は意識のない時に彼女の顔を見た時、

鼻、口等は正常な位置で、目だけが不正常な位置に有ったと言っていたけれど、それも違う。」

「違うのか?」

「うん。実際は額に象鼻って言う、

親指大の鼻孔が一つしかない管状の鼻があるんだ。鼻が移動を出来なかったが為に額に位置するんだ。」

「ほぉ。」

「まあ、そもそも形成されなかったりもするんだけどね。」

「そうなのか。」

「うん。」


じゃあ、あいつはなんだ?


「次に、死因だけど、地面に強く打ち付けられての転落死。」


転落死か。正に自殺、だな。


「鶴田遼さん、自宅のベランダから飛び降りて死んだんだ。

ベランダの外は景色が綺麗な場所なんだけれど、高さはそれなりにあって・・・・・・

君の勤めている会社のビル、かなり大きかっただろう?あれの屋上と同じくらいの高さだったよ確か。」


会社のビルの屋上と同じくらい・・・・・・


「それで、落下死。自殺の理由は多分、孤独に耐えられなかったんだろうと思う。」

「孤独?」

「そう、彼女は孤独だったんだ。親が遼さんの為にって、無理して自然豊かな所に引っ越して。

代わりに共働きを始めて。そしてその合間を縫うように母親が勉強を教えて。

彼女が自殺をする半年前、母親が過労で倒れて、そのまま死んでしまったんだよ。それから彼女は独りだった。」


独り・・・だからあんなに・・・・・・寂しい、か。


「残された父親がちょっと不憫に思うよ。

無理して家を買って、必死にローンを返してたのに、その家を必要とする家族が皆居なくなっちゃったんだから。」

「そう、だな。」



「なあ、公山。」

「なんだい?」

「どうやって調べたんだ?」

「あー、ほら、山田居るじゃない、アイツから色々聞き出したんだよ。」


山田、懐かしいな。


「え、てか山田警官になってたのか?」

「そうだよ。知らなかったのかい?階級は確か警部だったかな?」


警部か・・・中々やるじゃねぇかアイツ。



「これから、どうするかい?それじゃあもう働けないだろう?」

「ああ。困ったもんだ・・・他に行ける所なんかないし、家に帰ってもな・・・」

「それなら、僕の所、来ない?」

「お前の所?」

「うん。実を言うとさっき言った親友と一緒に研究所を経営しているんだ。所長が僕なんだけどね。」

「・・・ああ、俺は一番丁度良いのか。」

「う、うん、まあ。こう、試作型を装着してみてさ、

どういう感じだか、とかそう言うのをレポートして欲しいんだ。実を言うとそれを出来る人が居なくて。」

「成程。」


義足、義手の試作型のレポートか。後々必要になりそうだし、手伝ってやろうか。


「良いぜ、もうこの状態じゃ何も出来ないんだ。だったら研究を手伝ったほうが有意義だ。」

「そっか!有難う、モッチー!じゃあ早速僕の研究所に・・・」

「オイオイオイ、早過ぎるだろいくらなんでも。」

「そんな事はないさ。

少なくともここで治療をしても無駄だからね。僕の研究所、かなり設備が整ってるよ?総合病院と一緒だからね。」


こいつ、気がついたらこんなに凄い人間になりやがって。昔はチンピラに絡まれてヒーヒー言ってたくせに。

俺もだが。


「んじゃあ、とっとと手続き済ませてくれよ。」

「そうだね。じゃあ、一緒に行こうか。」

「おう。」





結局、あの世界、空間がなんだったのかは分からない。何故、あそこに俺と一緒に遼が居たのか、それもわからない。

ただ、何となく、遼は寂しくて、誰かと一緒に居たかったのはわかった。


あの世界、あれは、もしかすると死んだ遼が創った世界で、そこに俺が招待されたのかも知れない。

遼は俺を望んでいた?何故だろう、俺は遼にはそれまで会ったことがない。

何故、俺だったんだろう。


・・・・・・というかそもそも、なぜ俺は遼があの世界を創ったと仮定できたんだ?

どうかしちまったんか、俺は。




いつか、分かるんだろうか。


申し訳ございませんでした。


修正前の奴はバーンしました。同じ奴が二つ合ってもアレなので。

物凄くすみません。


一人の人に申し訳ございません。

フライング投稿してたのに気がついて恥ずかしくなってつい消して・・・・・・

ものすっごく申し訳ございません。



あれ、ここ懺悔室?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ