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[オニイサンハ]死の商人[コワクナイヨ]

次回は早めに投稿します。そんな言葉が空虚な戯言に成り果てる姿をしかと見させていただきましたよ。



「おーい、フレッドーお客さんだぞー」

 

 店内に響く声。

 ここは「ガンスミスの家」。しがないただの商店。ただし、外面のみ。

 目的地に到達したラグナは店内に入るなり大声でこの店の店主を呼んだ。

「あ~はいはい、すぐに行く」

 大声で店主、フレッドが応答する。

「なんだ、ラグナじゃないか。・・・また、愛銃が壊れたのか」

「よお、フレッドさん。グロックちゃんの調子も見てもらいたいんだが今日は別の用事もあって」

「そうか、じゃあついてこい。修理がてら聞いてやるよ。あと、そのグロックちゃんってのやめねぇか?ちと、きもいぜ」

 いや、かなりだな。とフレッドは付け加え、店の奥に消えていった。ラグナもそれに続く。



――――地下迷宮。そんな言葉を連想するような深く入り組んだ「ガンスミスの家」、その地下奥深く。

 その地下は巨大な武器庫だった。もともとは旧文明の地下バンカーだったこの場所は、フレッドの改造により大きく、深く、入り組み、今や関係者でさえ、喰らってしまう迷宮と化してしまった。

 帝国すらその存在を知らない、大きく膨れ上がった死の貯蔵庫。

「ここには人を殺すためのものはなんでもそろっている。メイス、弓、ボウガン、トレンチナイフ、グレートソード、小銃に軽機関銃、あげく装甲車、自走砲まである。――まあ、使えるかどうかは別としてな」

 フレッドは顎髭をいじくりながらそう言った。

 死の商人。そう呼ばれる人間達がいる。世界中のあらゆる場所から武器を運び、あらゆる場所で売りさばき、戦いを演出し、死と利益をまき散らす連中のことだ。

 ここは、そんな「死の商人」たちが「商品」置いていく集積所だった。

 

帝国のど真ん中。帝都でこんなに死が集められ、売り買いされている。平和をほざくこの帝国のど真ん中でだ。とんだお笑い草だろう?


 かつて、帝国の新資源調査団隊長だった男がそう笑っていたのをラグナは思い出した。

「・・・たっく、何したらこんなにフレームが曲がるんだよ。コイツでなんか思いっきりぶん殴ったろ」

 かつての新資源調査団隊長フレッドはそう愚痴りながら、素人目には何をやっているかわからない作業を続けていた。

 真上で爆発が起きてそんなかわいそうな姿になってしまったことは黙っておこう。途端にハチの巣にされそうだ。ラグナは心の中でそう固く誓った。

「それで、今回は何を調達しに来たんだ?」

 作業を続けながらフレッドは尋ねる。

「ああ、注文だ。狙撃銃とサプレッサーつきの拳銃が欲しい。どちらかと言えばこっちが本題だ。あるか?」

「狙撃銃?お前が持ってどうするんだ?素人が狙撃したっていいことはねえぞ」

「そこらへんは大丈夫だ。経験している。」

「・・・?そうか、・・・なら別に構わないが・・」

 そう、経験している。俺の村は旧文明の基地のすぐ隣にあり、発掘と調査に従事するものが多く住む村だった。

 まだ小さかった俺は父の仕事には行かせてもらえなかったが、発掘した兵器の試験を見してもらったり、まれに触らせてもらえることもあった。

 数少ない過去の記憶。幸せの欠片。

 幼いころはそれらが人を殺める道具とは知らず、次々に発砲する兵器をみて、純粋に楽しんでいた。父が、村のみんながやっている仕事を誇りに思っていた。



――――そして意識は砕かれ、姉の首が奇妙な方向に捻じ曲がる。肉が裂け、赤いぬらぬらと光る肉の中に白い骨が埋まっているのが見える――――



 くそっ!ラグナは突如襲いかかってきた忌まわしい記憶を追い払う。暗い殺意の沼。吐き気と憎悪が沸き起こる。こめかみを押さえ、呼吸を整える。

 歓喜している。俺の全てが。指が、足が、脊椎が、細胞の一つ一つが。何もかも壊されたその挙句、一人生き残ってしまった俺の心が。

 間違いなく、この仕事が成功すれば、全ての元凶に一歩近づく。その確信が、どうしようもなくラグナに過去を意識させた。


「使いてぇもんの指定はあるか?余程の骨董品でもない限りここにはあるはずだが・・・」

 フレッドがいつの間にかラグナの目の前に立っていた。どうやら、G-18の修理は終わったらしい。

「ああ、ええと・・・なんて?」

「んだよ聞いてなかったのかよ。使いたい銃があんのかって聞いてんだ。ないならこっちが勝手に選んじまうぞ」

「悪い悪い、指定はあるよ、あるバレットがいいな。バレットM82A1だ」

「へえ、バレットね・・・まあ、あるだろう。しかしまた、なにをしでかすんだか。対物ライフルアンチ・マテリアル・ライフルを注文する奴なんかそうそういないぞ」

「おや、死の商人はあまり詮索しないのが美徳なんじゃないのか?」

「そうだな、だが美徳であって規則ではない。好奇心が湧くのは人の(さが)さ。ま、言いたくないならいいさ。それこそただの好奇心だからな。

・・・おーいっシャル!!ちょっと来てくれ!頼みごとがある!」

 フレッドが迷宮の奥、照明も満足に配置されていない廊下に向かって大声で喋る。

「・・・フツーにドア開けて人を呼ぼうぜ?いきなりそれはビックリするんですけど。ヽ(;゜д゜)ノ ビクッ!!ってなったんすけど」

 ラグナが文句を言う。

「それはできねえ」

 即答するフレッド。そして、・・・くっ、ヒザガァ・・と言って膝を押さえ始めた。

「・・・マジかよ。ビックリするくらい嘘が下手くそだな。完全に棒読みだったじゃねえか。さっきまで平然と歩いてたじゃねえかよ」

「ああ~、痛い痛い。お客さんのクレームで古傷が痛むわ。オジサン泣いちゃう。うう、ぐすんぐすん」

「・・・・・・・・・おっさん、そろそろ朝だぜ」

「・・・・・だな」 

 フレッド、ラグナの共演による三文芝居が終わった直後、部屋の扉が少し開いた。

「あの、フレッドさん?」

 どういうわけか、現れたのは少女だった。


――――このオヤジ、ついに超えてはならない一線を越えてしまったのだろうか。

人知れず地下にハーレムという地下帝国をついに創り始めてしまったのだろうか。

これはあれか。ロリコンってやつか。っていうことはなに?この小説ついに18禁化?

だからあれなの?女キャラが多かったの?このための伏線?えっ?マジで?――――


 急激にラグナは心配になる。

 すんごい既視感がある。この手の心配を過去にもしたことが・・・主に第三部で。

「頼みごとって、一体・・なんっ・・・です・・かっ・・・?」

 喋っている途中にラグナと少女は目があった。どうやら、たった今ラグナの存在に気付いたらしい。目が真ん丸に見開き、きれいな栗色の髪が逆立ち、声はどんどん萎んでいった。

 そして、バタンッと派手な音をたて、扉が閉じられた。

「・・・え?」

 あまりに衝撃的な出来事にラグナが固まる。

「激しい人見知りなんだ。最近人来ないから忘れていたが、基本あんなんだぞ」

 だから泣くな、キモいから。またまた、そうフレッドは付け加えた。

「立ち直れない。これは立ち直れない。いくら人見知りでもあれはなくね?あそこまで露骨に動揺する?挙句、扉閉めちゃう?」

 ・・・人見知り。アリスで慣れていたはずだった。しかし、あれは他の人に対しての人見知りであって、俺に対してではなかったなそういえば。

 ラグナは自分のメンタルの弱さを実感する。





 それからすぐ、フレッドが少女を連行し、ラグナとの再開再び。

 あからさまに怯えフレッドの陰に隠れる少女。ラグナの精神は再び再起不能にされる。

「コノオニイサンハ、コ、コワクナイヨー」

 などを筆頭に、フレッドによる悪意すら感じるフォロー群によりほんの少し、場に和んだ空気が流れ込み始める。

「へえ、シャルちゃんね」

 少女の名前はシャル。どうやらよく、フレッドに「商品」を渡しに来るとある死の商人が拾った孤児らしい。自分よりちょっと年下だろうか。

 ラグナにも落ち着きが戻ってきた。

「さて、本題だが・・・」

 フレッドがやっとという風に話を切り出した。

「ラグナ、サプレッサー付きの拳銃と言っていたがこっちは指定は?」

「いや、ない。と言うかあんまし考えてなかった。なんかいいのがあるならそれにしてくれ」

「そうか。シャル、おすすめのものはあるか?」

 そこでフレッドは突然シャルに話を振る。

「・・・・・えっと。USP TACTICAL辺りが、いいかと・・・口径バリエーションが限定されてしまいますが、サプレッサー装着を前提としているため何かと使いやすいです・・Mk.23よりコンパクトな高性能銃という感じです・・・」

 緊張しているからだろうが、はきはきとは説明してくれなかったがここまで専門的なことを何にも読まずにスラスラと言えるとは。

 ラグナは素直に感動した。

「・・・すげえ」

 開いた口が塞がらないとはこのことだろう。

「すげえだろ。俺も最初はびっくりしたもんだ」

「・・・・ありがとうございます・・」

 シャルが小さな声で返答する。

「さあ、じゃあシャルはコイツの注文したバレットM82A1とUSP TACTICALを用意してきてくれ」

「はい」

 シャルは小さく一礼をして部屋から去って行った。

「すげえな、シャルちゃん」

 いまだに感動が冷めない様子のラグナ。

「まあな。あれでもう少し社交的だったら店も任せるんだがな」

「シャルちゃんは銃以外でも詳しいのか?剣とかさ」

「そりゃな、バッチリだ。ここの武器のことを一番詳しいのはアイツだからな」

 よし、今度ナイフとかも注文してみよう。いままでテキトーに選んできたからな。

 そう考えていたラグナはそう言えばと呟き、フレッドに質問する。

「ん、なんだ?」

「シャルちゃんはここの従業員ですか?」

「・・・?当たり前だろ?じゃなきゃここにいねえよ。どアホ」

 だそうですよ、みなさん。残念ながらR-18指定はまだまだ先のようですぞ。


 数時間後、ラグナは注文した銃器を受け取り、地下の迷宮を後にした。

 

18禁化は今のところ考えてません!!

以上!!

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