魔鳥の棲む山
珂津の地にある霞烏山の長山鄔族の物語
富津久開天県来櫓市武田町にこの地域に古くからある家がある
その家は町名になっている武田家だ。武田家はその昔久甫と呼ばれていた時代から地域一帯を支配する名家だ
久甫の中心に久甫城と言う城があり、久甫を支配する一族、御津木氏が治めていた
武田氏は御津木家が、久甫の地を皇帝により下賜され国替えが決まり久甫に移り御津木氏による治世が始まる遥か前から久甫の地に根ざし代を重ねていた。
久甫の地に霞烏山と言う山がある。武田氏は霞烏山に城を築き霞烏山城主として代々久甫の地を治めていた。
御津木氏の治世に入ると同時に武田氏は御津木氏に仕えるがそれは王朝が倒され新たな世になるまで続いた
霞烏山は、伝説によると武田氏の始祖がその昔、仲間と共に降り立ったと言われ、武田氏の始祖の名は山塢と言った
山塢は仲間達と共に居を構え暮らす様になる。山塢の子孫は山塢族と名乗り霞烏山の集落を束ねる長となるが、代が下るに連れ山塢族の支配する集落は拡大して行き、最終的には霞烏山と烏翼道と言う霞烏山と外界とを繋ぐ道の境目に位置する龍樹郡羽月村までが支配圏内にあった
龍樹郡羽月村は古の頃は龍樹邑と言う
山塢一族が支配していた時代は山塢王朝と言われ長きに渡り繁栄していた。
霞烏山のある辺りは珂津と呼ばれていた。
珂津の地は山塢族が何代にも渡り治め平穏が守られていた。
今から三千年前の事、霞烏山の王瑋志久と龍樹邑の長、玉衡は支配する者とされる者と言う間柄であったが友人であった
龍樹邑の長は龍樹族と言う。龍樹族は山塢族と同じく霞烏山に降り立った多くいる部族の中の一つ、龍樹族の子孫だった
龍樹族は霞烏山の環境に合わず一族を連れ霞烏山から霞烏山の力が及ばず生活するに適した地を求め、安住の地に選んだのが後に龍樹の森と呼ばれる森だ。
龍樹族はその森を安住の地に定め、生活が出来る為森を開拓した。開拓した後に生まれたのが初期の龍樹邑だった。
龍樹族は龍の形をした若木を植えた。その若木は龍樹と言い、龍神の力を宿した聖なる樹木で龍樹族の命の源である
龍樹は長い歳月をかけ木々が生い茂り龍樹の森と呼ばれる様になったのだ。
代が下ると一部の龍樹族は龍樹の森を離れ、人里に降り集落作った。その、一部の龍樹族は初代龍樹邑の長で名は玉信、玉衡の先祖だ。
玉信の先祖は霞烏山に続く道、烏翼道を整え霞烏山との往き来が盛んとなり交易が行われ始めたのも玉信が龍樹邑の長となって以降
霞烏山へ続く道は龍樹邑の者のみが使い霞烏山の集落で暮らす者達は使う事は無かった。
龍樹邑の長の代理が数人の同行者と共に烏翼道を通り霞烏山に向かい交易を行った。
取引をする者は龍樹族以外の者は許されず立ち入る事も叶わない。
霞烏山の物を山から持ち出す事は固く禁じられ取引を行えるのは龍樹族のみ。
それは霞烏山が人体に有害な毒素が漂う毒の山であるからだ。
霞烏山を棲みかとする“神鳥”、霞烏神が毒を撒き散らす神と言うのもあり霞烏山は決して人が立ち入ってはならない山となった。
霞烏山には霞烏神が撒き散らす毒が漂い霞烏山を流れる川、大地に繁る草木には毒が含まれ、山野を駆ける獣は霞烏山の毒を体内に有し危険極まりない。霞烏山に続く道、烏翼の道にもその毒は漂っているので吸い込んだら最後呼吸困難となり倒れ意識を失い、最悪の場合死に至る
霞烏山を棲みかとする霞烏神は山塢族が神と信じ崇める神であり豊かな恵みをもたらす尊き存在であった。
山塢族に取っては・・・・
山塢族以外の人間からしてみたら霞烏山は禍々しい毒が蔓延る死の山で決して近づいてはならない禁忌の領域でしか無く、霞烏山が危険な山だと周知させる人間が必要不可欠だった。山塢族と所縁のある龍樹族に白羽の矢が立ったのだ
龍樹族は霞烏山の物に多少の耐性はあるものの耐性が無い者と比べれば大分ましなだけで毒の影響を受けないとは言い難い
だから、龍樹族は霞烏山に向かう際は“毒喰い犬”と言う犬を連れて霞烏山に向かっていた。
“毒喰犬”は、毒性を体内に取り込み浄化する事が出来る種族で毒を好むでいるので霞烏山に連れて行くのに丁度よかったのだ
毒喰犬は聖なる力、神聖力を持ち穢れを祓い浄める力をも持ち、且つ体力が底無しで非常に攻撃的な性質を持つので龍樹族の身を守るのに適していた
魔喰犬の役割はそれだけでは無い、魔喰犬は龍樹邑に暮らす人間と共存し暮らしていた。
魔喰犬は龍樹邑の長たる龍樹族玉氏の眷属として仕えている
魔喰犬は、“聖なる白き守護獣”とも言われ龍樹族を守る為だけに存在する
それは龍樹邑に暮らす全ての住民の生命を守る事も含まれているので龍樹邑に暮らす者達は魔喰犬に守られながら暮らせる事が出来ていた。
龍樹邑を出ると霞烏山に続く道、烏翼道との境目となる集落、白光邑がある。
龍樹族は白光邑を作り一部の魔喰犬に住む様に命じ住まわせた。白光邑は霞烏山を住処とする霞烏神が生み出す毒が風に乗り人里に下りるのを防ぐ為に作られた集落で毒に侵されない様、見張らせていた。
魔喰犬は風と会話する事が出来、風から聞いた情報を元に霞烏山から龍樹邑に下りて来る毒を体内に取り込み侵入を防いでいた。
龍樹邑から三里先に洙邑と言う集落がある。洙邑の長はいくつもの集落をまとめる首長で集落で争い事が起きれば中に入り仲裁し時には手勢を率いて戦った
霞烏山と下界の均等はそれにより守られ安定していた。しかしその均等が乱される時が訪れる
それが寧安国の支配者、真津楽比古大王の侵攻である。




