『げたの精とプレスマンの精』
掲載日:2026/03/15
あるところに、げたを粗末にする家があった。普通、げたというのは、歯がすり減れば、つけかえて、がたがきてつけかえられなくなったら、ぞうりのようになるまで使って、いよいよとなったらたきつけにする、というものであるが、金持ちというのは恐ろしいもので、歯が少しすり減っただけで、もう新しいものにかえてしまうのであった。
夜な夜な、この家の庭で、げたの精が泣いているところを、プレスマンの精が通りかかり、話を聞くと、この家の者は、物を大切にしないのが許せない。大切にしないだけならまだしも、捨てるでもなく手元に置いておこうというのが強欲だ。何とか懲らしめてやりたいが、げたの精ではそれもかなわない、と、またさめざめ泣くので、プレスマンの精が、任せろ、と言って、ノック部分を力強くかちかちしてみせた。
翌日、この家の亭主が書き物をしようと、プレスマンをノックすると、芯が出てこない。調べると、中で芯が折れている。もとへ戻してノックすると、また出てこない。これを何度も何度も繰り返し、亭主は書き物をやめた。
教訓:プレスマンの精は、物を大切にしないといけないということを伝えようとしたのだが、プレスマンの芯が折れるのは、日常茶飯なので、げたの精の願いはかなわなかったという。




