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エーテルコード:サイドストーリー  作者: エトコッコ


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9/18

「烈の男飯」


とある日の、早朝。


クレアはクッキーを作ろうと、食堂に備え付けられているキッチンへ向かっていた。


オルフェの食事は、基本的にバイキング形式。


調理はすべてAIが行っている。


というより、現代社会では会社などの食堂がある場所のほとんどが、AI調理+バイキング形式で、オルフェの食堂もごく一般的なものだった。


――ただし、1つだけ珍しい点がある。


それが、“備え付けのキッチン”が存在すること。


普通の組織の食堂には、まず設置されていない設備だ。


もっとも、実際にこのキッチンを使う人は少ない。


お菓子作りが趣味のクレアは、家でもオルフェでも、よくお菓子を作り、出来上がったものを広間に置いている。


クレアのお菓子は、皆から大好評だ。


彼女がキッチンを使う時間帯は、決まって早朝。


理由は単純――誰もいないから。


1人の時間を満喫しながらお菓子を作ることは、クレアにとって大切なリフレッシュのひとつ。


しかし何やら、キッチンの奥から、何やら物音が聞こえてくる。


(こんな朝早くに…しかもキッチンに誰かいるなんて、珍しい…)


そう思いながら、そっと覗いてみると――

そこにいたのは、烈だった。


(えぇぇ!? あ、新井くん!? なにしてるの!?)


烈は、大きなフライパンを片手に料理をしていた。


しかも、備え付けの電気コンロは一切使わず、自身の炎を使って調理している。


(料理するのは知ってたけど……こんな本格的に?しかも、スキルの使い方めちゃくちゃ器用……)


クレアは感心しつつ、思わず見とれてしまっていた。


(なに作ってるんだろ……?香り的に……チャーハン?1人で食べるのかな? それとも……アホ閃とヘタレ光井に?)


そんなことを考えていると、突然後ろから声をかけられる。


「クレア、なにしてんの?」


アンジュだった。


「ぬぉい!?!?」


驚きのあまり、クレアは思わず奇声を上げてしまう。


「ア、アンジュ!! 驚かさないでよっ!!びっっっくりした!!」


クレアの顔は真っ青になっていた。


「ごめんって。でもさ、後ろから見たら不審者そのものだったよ?」


アンジュはケラケラと笑っていた。


その声で、烈も2人に気づく。


「よぉ。はえーな、2人とも」


「おすー。ウチ、今日早番」


アンジュは軽く返した。


クレアは黙ったまま、俯いている。


それを見て、烈は察したように言った。


「クレア、お菓子作りだろ? すぐ終わるから待ってな」


「え!? い、いや、全然急いでないから!!ゆっくり使って!?」


クレアは慌てて答える。


「……つか、キッチン広いんだし、一緒に使えばよくね?」


アンジュがニヤリとしながら言った。


「あ、確かに」


烈も納得したように頷く。


(え、2人?……2人!?)


クレアの顔は、一気に真っ赤になる。


「んじゃ、またね〜」


アンジュは軽く手を振り、そのまま去ろうとした。


――が、クレアは全力でそれを阻止した。


烈は何事もなかったかのように、再び料理を続けている。


クレアは小声でアンジュに懇願した。


(お願い!! いて!!)


(なんでよ! チャンスじゃん!)


アンジュも小声で返す。


(ダメ!! いくらなんでもコレは不意打ちすぎる!!)


結局、「クレアの手伝い」という名目で、アンジュも一緒に残ることになった。


そうこうしているうちに、烈の料理が完成する。


“鮭チャーハン”という、独自の一品だった。


シャケとチャーハンの香りが絶妙に混ざり合い、とても香ばしい。


「よかったら、食うか?」


烈が言う。


「え!? いいの!?」


クレアは思わず食い気味になる。


「……腹減ってんなら、いっぱい食っていいぞ」


烈は笑いながら言った。


「い、いや!! そういうわけじゃ……ないけど……でも、そうかも……」


クレアは恥ずかしさで混乱していたが、すかさずアンジュがフォローに入る。


「あんがと!ほら、クレア、食べるよ〜」


手際よく2人分を皿に盛り付けた。


「う、うん……ありがとう。いただきます」


クレアとアンジュは、並んで鮭チャーハンを口に運ぶ。


「むちゃうまっ!!」


アンジュは満面の笑み。


「ほんと……美味しい!」


クレアも自然と笑顔になった。


2人はあっという間に完食し、烈に頭を下げる。


「ご馳走さま! 烈、すげーじゃん」


「ご馳走さまでした。本当に美味しかった……ありがとう、新井くん!」


満足そうな2人は、そのまま一緒に帰っていった。


――どうやら、お菓子作りのことはすっかり忘れてしまったようだ。


そんな2人の背中を見送りながら、烈は満足そうに呟いた。


(さて……そろそろ、テツにも持っていかねーとな……)

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