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エーテルコード:サイドストーリー  作者: エトコッコ


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8/18

「推し」


今日で、“あの日”から、もう1年。


このリスバも丸々1年使ってるなぁ……。


そう思いながら、指でそっと撫でる。


時間の流れって、本当に早い。


……そろそろ、起きないと。


ゆっくりベッドから起き上がり、顔を洗い、歯を磨きながら、私は1年前の出来事を思い出していた。


◆◆◆


今日は、待ちに待った、“ニャンダル限定リスバ”の発売日。


この日のために、前々から休みを取っていた。


ネット販売はダメだったけど、今日はシンジュクのニャンダルストアで、1人につき3個まで購入できる。


ただし、いわゆる“くじ引き方式”。


どれが当たるかは、開けてみるまで分からない。


最も“ニャンダルフリーク”な私にとっては問題なし。


なんなら、全部欲しいくらいだ。


朝食を食べていると、ママが声をかけてきた。


「休みなのに、やけに早起きだと思ったら……ゲームのやつ?」


「そ!」


私は勢いよく答える。


そのタイミングで、パパがゆっくり椅子に座った。


「パパ、おはよ」


「おはよう、ハルカ。早起きだね」


お腹ぽっこりの私のパパ。


とっても優しくて、今でも私を甘やかしてくれる、大好きなパパ。


「なんか、ゲームのやつなんだって」


ママがパパに言う。


「そうかい。パパが休みだったら、送り迎えしてあげるんだけどね」


「ありがと、パパ! 大丈夫だよ!」


ママも椅子に座り、朝食を取り始める。


「そういえば最近、ハラジュクでSD同士の小競り合いあったばっかりでしょ? ……大丈夫なの?」


「大丈夫だって! それに場所はシンジュクだし!」


……まさか、この時のママの一言が、“フラグ”になるなんて、この時は思いもしなかった。


「駅まで送ろうか?」


「うん! お願い!」


支度を済ませ、パパのエレカで駅まで送ってもらった。


リスバをかざし、改札を抜ける。


電車に揺られること、約20分。


シンジュクに到着。


そこから徒歩10分。


目的地――ニャンダルストアに着いた。


予想はしていたけど、すでに人が多い。


かなり早く出たつもりだったんだけどな。


私はさっそく列に並ぶ。


さっきコンビニで買ったレモン水を片手に、のんびり待つとしよう。


それから、約1時間半。


そろそろ私の番が近づいてきた。


思っていたより早い。嬉しい誤算だ。


そして、そこから約10分後。

ようやく――私の番が……!


そう思った、その瞬間だった。


街中に、サイレンとアナウンスが響き渡る。


『緊急避難警報デス。直チニ避難ヲシテクダサイ。緊急避難警報デス。直チニ……』


えぇ!? このタイミングで!?

……とはいえ、仕方ない。


人々は我先にと、近くの避難シェルターへ向かっていく。


今思えば、お店の避難通路から出れば早かったのだが、その時はパニックで、わざわざ遠い出口を目指してしまった。


そして、やっと外に出られた瞬間――

凄まじい音が響いた。


軍警のSDと、野良のSDが戦っていた。


SDを見ること自体は珍しくない。


でも、目の前で戦っている光景を見るのは、初めてだった。


うわぁ…SDが戦ってるの、初めて見た……!


てかフラグ回収エグすぎ。


――いや、そんなこと考えてる場合じゃない!


そう思った、次の瞬間。


軍警のSDが相手の攻撃を受け、壁に激突した。


その衝撃で、大きな瓦礫がこちらへ飛んできた。


そこには、私以外にも何人か人がいた。


私は思わず、顔を背けた。


……でも、その瓦礫は、私たちに届かなかった。


恐る恐る顔を上げると、そこには――電気を纏った金髪の少年の後ろ姿があった。


少年は振り向き、冷静に言った。


「オルフェの者です。早く避難を」


その姿は、今でも鮮明に焼き付いている。


少しくせのある淡い金髪。


稲妻みたいな可愛いアホ毛。


くりっとした目に、鮮やかなグリーンの瞳。


中性的で、誰が見ても“美少年”と言える程の綺麗で可愛らしい顔立ち。


見た感じ、多分……私より10歳近く年下。


彼はすぐに、SDの方へ向き直った。


周囲の人たちは、次々とシェルターへ向かっていく。


でも私は、しばらく呆然として動けなかった。


――ハッ。


我に返り、私も走り出そうとした瞬間……腰が抜けた。


腰抜けるなんて、いつ以来だろ……。


ホラゲやった時かな? とか、また変なこと考えてた。


その時。


さっきの彼が戻ってきて、私をひょいっとお姫様抱っこした。


生まれてこの方、お姫様抱っこなんてされたことない私は、完全にパニック。


私、結構重いのに……。


彼は軽々と、シェルターへ走っていく。


その途中、彼が声をかけてきた。


「さっき、惜しかったね。リスバ」


……どうやら、あの瞬間を見られていたらしい。


さらに彼は言った。


「お姉さん、推しはいる?」


あまりにも色々なことが起きすぎて、混乱した私の頭は、反射的に答えていた。


「は、はこっ!!」


彼は、ニコッと微笑んだ。


気づくと、もうシェルターの前だった。


さっき一緒に瓦礫に巻き込まれそうになっていた男性が、扉を開けて待ってくれていた。


彼は私をそっと降ろし、言った。


「ダブりあるから、これあげる」


そう言って、ポケットから袋に入ったリスバを取り出し、私に渡した。


次の瞬間、彼は再び電気を纏い、一瞬で姿を消した。


その後しばらくして、緊急避難警報は解除された。


スマカには、パパとママからの鬼電。


かけ直すと、2人とも泣いていた。


心配かけて、ごめんなさい。


それから、余談だけど…あの日以降、私は“オネショタ”に目覚め、ゲームでやたら“雷属性”を使うようになってた。


あの日、彼がくれた“エルフの伝承”のリスバ。


私は、今もずっと身につけている。


彼は“エーテルファクター”。


普段から、人々を守っている。


まさに、ヒーロー。


……そして、私は、そんな彼に完全に心を奪われてしまった。


いつか、また会って……ちゃんと、お礼言いたいな。


◆◆◆


よしっ! 準備完了!


今日も張り切って行きますか!


『みんな、お元気してる? オニョ姫だよー♡今日はね……』

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