「繰り返し」
とある日の、夕方頃。
イシュタール財団の施設内で、アークはスマカで好きな音楽を聴きながら歩いていた。
ふとラウンジを見ると、ソファーにイノとクリスが並んで座っているのが目に入る。
イノはゲームを、クリスは絵本を読んでいた。
――割と、いつもの光景だ。
アークは二人に声をかけた。
「よっ。サムは?」
「サムなら、たぶん部屋にいると思う」
イノが答える。
クリスも無言のまま、こくりと頷いた。
「そっか。てか、お前らまたそれかよ」
アークは苦笑しながら言う。
イノが手にしていたのは、“BW2”という携帯ゲーム機。
元々イノが拾ってきたものを、サムが修理したものだった。
そのため本体は傷だらけだが、動作にはまったく問題がない。
イノは、この中に元からデータとして入っていた“マッシュチーム3”というソフトが大のお気に入りだった。
もう何回プレイしたか分からないほど、繰り返し遊んでいる。
一方、読書好きのクリスは、ジャンルも国も問わず、さまざまな本を読んでいた。
他のメンバーが見ても内容が分からない書籍から、コミックまで実に幅広い。
その中でも、クリスが特に好んでいるのが“絵本”だった。
なぜ絵本が好きなのか、クリス自身にも理由はよく分からない。
ただ、感覚的に惹かれるものがあった。
今、クリスが読んでいるのは、お気に入りの1冊――
“いねむりバク”という絵本だ。
「何回やっても楽しいんだ。このゲーム」
イノが笑顔で言う。
「飽きたりしねーのか?」
アークが聞く。
「うん!」
イノは即答した。
珍しく、クリスも自分から淡々と口を開く。
「…本当に好きなものは、飽きないものだ。…アークも、同じ音楽を何度も繰り返し聴くだろう?」
「あぁ……確かにそうだな」
アークは納得したように頷いた。
イノは、少し期待するような表情で言う。
「ねぇアーク。良かったら、ちょっとやってみない?」
「ゲームとか、やったことねーよ……」
アークは肩をすくめる。
「大丈夫だよ。マッシュチームは、初心者でも楽しめるから」
“マッシュチーム”。
ゲームに詳しくないアークでも、その名前だけは知っていた。
“世界で最も有名なゲームと”して記録されているほどの作品だ。
少し興味が湧いたアークは言った。
「……ちょっとやってみっか。イノ、どうやればいいんだ?」
イノは、嬉しそうに操作を教え始めた。
――そして、1時間後。
「クソッ!! あとちょっとだ!!あとちょっとで、砂漠エリア行ける!!」
アークは、すっかりハマっていた。
イノは、それを楽しそうに眺めていた。
クリスは、ハーブティーを飲みながら、相変わらず読書をしていた。




