表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード:サイドストーリー  作者: エトコッコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/18

「芋ようかん」


とある日の昼下がり。


光井は、ひとりで廊下をうろうろしていた。


その様子は、どこか落ち着きがなく、ぎこちない。


そこへ、音が通りかかる。


光井を見つけた音は、ぱっと笑顔になって声をかけた。


「あっ、光井くんだ! なにしてるの?」


光井は内心ドキリとしながらも、平静を装った。


「お、おぉ! いや、俺もたまたま通りかかってさ……」


――かれこれ10分近く、同じ場所をうろついていたことなど、まるで無かったかのように。


「羽野こそ、こんなところで何してんだ?」


白々しく問い返す光井。


この時間帯に音がよくここを通ることは知っていた。


ただ、あまりにも頻繁に顔を合わせると、不審がられるかもしれない。


だから普段は、あえて近づかないようにしていたのだ。


そんな事情など微塵も知らない音は、無邪気に答える。


「散歩っ♪」


(……可愛い)


光井は、あっという間に心を撃ち抜かれていた。


だが、恋愛面に関して非常に鈍感な音は、自分がそんな風に思われているとは、夢にも思っていない。


「光井くんも、たまに外で運動してるよね」


光井は思わず目を見開いた。


「えっ、見られてたの!?」


「うん。見てたよ」


あっさり言われて、光井は急に恥ずかしくなった。


変なところを見られていなかっただろうか、と。


「それに、よく閃くんやアンジュちゃんたちとバスケしてるよねっ」


音は、楽しそうに続ける。


「あぁ……そんなとこまで見てるのね……」


光井は苦笑いしながら答えた。


「うん! かっこいいなぁ〜って思いながら見てるよ」


――今、なんて言った?


光井は一瞬、思考が止まった。


(え……? 今……“かっこいい”って……俺のこと……?)


だが、すぐに冷静になる。


(いや、閃の可能性が高いな。その次はアンジュだな……。あの2人、めちゃくちゃ上手いし)


音は誰に対しても優しく、柔らかい。


しかし光井には、以前から思っていた事がある。


音と閃の距離感は近すぎる、と。


まるで恋人同士のようにも見える。


以前、遠回しに閃へ「彼女いるのか?」と聞いたことがある。


返ってきた答えは「テツ(烈のペットのブルドッグ)」だった。


つまり、彼女はいない。

だが、それでも“特別な関係”なのかもしれない。


「……いいよなぁ、閃……」


思わず、ぼそっと口に出してしまった。


「…ぅえ?」


音が聞き返す。


(で、出た!! 羽野名物『…ぅえ?』!! 可愛すぎる!!)


音の「…ぅえ?」は、オルフェ内でも有名な可愛さを誇る癖だった。


だが光井は慌てて誤魔化す。


「え!? 俺、なんか言ってた?」


音は、必死に笑いをこらえながら答える。


「あ、あのねっ……あんまり聞き取れなかったんだけど……い、芋ようかん、食べたいって聞こえて……あははっ!」


ついに音は耐えきれず、笑い出した。


光井も笑いながら言う。


「やべっ!! 心の声、漏れてたわ!!」


(あ、あぶねー! 羽野が天然で助かった!!)


心の底から、そう思った。


やがて2人は別れたが、音は歩きながらも、ずっと笑っていた。


一方の光井は、久しぶりに音と2人きりで話せたこと、そして「…ぅえ?」が聞けたことに、完全に満足していた。


(……芋ようかん、買いに行こっかな)


そう思いながら、光井は静かに歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ