「同盟」
「やぁやぁ、れーにゃん。ご機嫌麗しゅう」
アホ毛をくるりとカールさせた閃が、やけに上機嫌な様子で怜に声をかけた。
普段なら、間違いなくジト目で返されるところだが、今回は違った。
怜は――
閃がこのタイミングで現れることを、最初からわかっていた。
◆
それは、昨晩の出来事。
“もふもふの村 × もちのすけ”
待望のコラボ発表。
世界的な人気を誇る両者のコラボは、ある意味必然とも言えたが、それでも“今か今か”と待ち続けていたファンは数え切れない。
そして、ついに――
その瞬間が訪れた。
それぞれの部屋で、閃はニャンダル公式経由で、怜はもちのすけ公式経由で、同時にその情報を知った。
直後、怜のスマカが震える。
『見た(。-∀-)?』
送信者は、案の定、閃。
怜は少し間を置いてから返信した。
『見た( ˙꒳˙ )』
◆
「ついに、来てしまいましたなぁ〜」
マンガのようにデフォルメされた顔で、閃がしみじみと言う。
「……うぅ」
普段はゲームをしない怜だが、以前からこう言っていた。
――もちのすけともふもふの村がコラボしたら、やる。
そして今回はそれだけではない。
コラボグッズ争奪戦。
いつも以上に過酷な戦いになるのは、火を見るより明らかだった。
つまり――
誰かの協力が、どうしても必要になる。
「ついに、あの世界に……むぎゅっ!!」
相変わらずデフォルメ顔でしみじみと語る閃の頬を、怜は両手で思いっきり潰した。
びっくりした閃のアホ毛は、アンテナのように真っ直ぐピンッと立った。
さらに追い打ちをかけるように、怜は手の冷たくした。
「冷たっ!!ごめんなさいごめんなさい!!」
閃は慌ててジタバタする。
怜は、すっと手を離した。
「……協力、してよね」
少しだけ視線を逸らし、照れたように言う怜。
「……ニャンダルストアの方は、俺に任せな」
先ほどは打って変わって、キリッとした表情で言った。
怜は小さく頷く。
“同盟”成立。
2人は、固く握手を交わす。
怜の手は、まだ少しひんやりとしていた。




