「正反対な2人 リオ×カリン」
とある日の、昼下がり。
ここ最近、勤務は非常に暇だった。
もっとも、暇ということは平和な証拠でもある。
リオとカリンは、そんな穏やかな時間の中で雑談をしていた。
「ねぇ、ミチからめっちゃ美味しいラーメン屋さん教えてもらってさ。勤務終わったら行かない?」
“ラーメン大好き宝生さん”ことリオは、目を輝かせながら言った。
「アンタ……つい最近『さすがに腹出すぎてるから、ラーメン控えるわ』とか言ってなかった?」
カリンは、呆れたように返す。
「1週間我慢できたから十分!十分!」
リオは笑いながら答えた。
「まぁ、いいけどさ。ところで、どんなとこ?」
カリンが尋ねる。
「なんかね、“闇麺”って地下にあるお店でさ。麺もスープも真っ黒なんだって!1杯2000円でちょっと高いけど、めっちゃ美味しいらしいんだよ……」
(*´﹃`*)←こんな顔で語るリオ。
「へぇ……ちょっと気になるわね」
カリンも、少し興味を示した。
カリンはリオとは正反対で、普段からキックボクシングで身体を鍛えている健康志向。
とはいえ、ジャンクフードが嫌いなわけではない。
こうして2人は、“闇麺”に行くことになった。
◆
勤務を終え、リオのエレカで向かう。
最寄りの駐車場に停め、そこから徒歩5分弱。
地下へ降り、さらに歩くこと5分。
――闇麺、発見。
外観からして、少し怪しい。
ミチが、店は表に出てなくて、場所がかなり分かりにくい、と言っていた理由がよく分かった。
早速、店に入る2人。
薄暗い店内は、ほぼ満席だった。
スキンヘッドにサングラスの、いかつい店員が現れる。
「シェイ!シェイス!シェシェシェイ!!」
何と言っているかは分からないが、おそらく「いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ」なのだろう。
空いていたカウンター席に座る2人。
この店のメニューは、闇ラーメン一択。
当然、メニュー表などはない。
待っている間、カリンがリオに声を掛けた。
「ところで……例の彼氏さんとは、最近どうなの?」
リオには、同棲中の無職の彼氏がいる。
「相変わらず、玉ねぎ女に夢中」
リオはため息まじりに答えた。
「……まだ無職なの?」
リオは、こくりと頷く。
「はぁ……リオ。アンタ、絶対他にいい人いるって」
カリンはそう言った。
「いないよー。そもそも出会いないもん……」
リオは肩をすくめる。
「そもそも、そんな甲斐性なしと一緒にいるくらいなら、独り身のほうが良くない?」
「……んー。アイツもヒモなりに家事は毎日やってくれるし、浮気とか絶対しないし……。まぁ、玉ねぎ女は推し活だし、小遣いの範囲内だから……」
リオはそう答えた。
「まぁ、アンタがそう言うなら、いいんじゃない?私には理解できないけど」
カリンは淡々と言う。
「逆にカリンは? 彼氏」
リオが聞いた。
「経済力があって、自立してて、私の邪魔にならない相手がいるならね」
カリンは、ニヤリと笑って答えた。
「私は1人だと、なんだかんだ寂しいなぁ……。アイツと別れても、他にいないし。閃ちゃんに手出すわけにもいかないじゃん?」
リオは笑いながら言う。
「アンタ、それ犯罪よ」
カリンも笑って返した。
そうして、ラーメンが運ばれてくる。
真っ黒な器の中身も、真っ黒。
まさに“闇”だった。
一口食べると――美味。
濃すぎず、薄すぎず。
豚骨、醤油、バターの香りが絶妙なバランスで混ざり合っている。
2人は、あっという間に完食した。
それぞれリスバで会計を済ませ、店を後にする。
「アッシャシャイシタ!! シャムシェイド!!」
店員の言葉は、最後まで分からなかった。
◆
帰り道。
リオが、笑顔でカリンに言った。
「ね! また行こっ!」
カリンも微笑み、頷く。
(彼氏、か……)
両親の顔を思い浮かべながら、カリンはそう思うのだった。




