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ぼったくりにあう大名たち。

「なんだお前は! 何故邪魔をする!」


火縄銃の準備をしていた男は怒っている。


「いや、街中でそんな物騒なもの持ち込まないでよ。事情はよくわからないけど銃刀法違反で逮捕されるわよ」



パンフレットを丸めたまま私は文句を言う。


「お前にはわからん! この信長と義元の戦に巻き込まれたせいで俺のご先祖様は今こんな扱いをされているんだ!」


古臭い本を見せられる。


「信長の野望、武将ファイル? 攻略本かなにか?」


「ここを読んでみろ!」


しおりがはさまっているページを見せられる。禿げたおっさんのCGと、能力は酷い有様だった。


「ゴミ武将じゃない」


素直な感想を言うと、


「そうだ。あっさり名も残さないで死んだせいでゲーム会社にこんな扱いをされているんだ。攻略本のコメントを読んでみろ。こんな奴雇っても役に立たない。すぐに斬首しよう。だぞ?」


「だからって今この2人を撃ったって、ゴミ武将はゴミ武将のままよ! てかよく見たら昭和何年のゲームよ。これシリーズ何作も出てるじゃない。最新作はどうなってるのよ?」


「登場すらしてない!」


「リストラされたのね」


「そんなわけでご先祖様の名誉のためにも、お前らをここで討つ!」


男が再度火縄銃の準備をしたので、


「あ、おまわりさん。この人です。銃刀法違反で現行犯です」


「ちょ、待て! まだ火薬詰めてすらいないのに――ご先祖ォォォ!」


泣き叫ぶ男はあっさり連行されていった。


「……哀れなやつよ」


「うむ、時代の敗者とはかくのごとし」


(いやお前らが言うな)


2人に感謝され配下の勧誘を受けたが雑に断り、裕美子と帰ることにした。


「それにしても銃持った人に立ち向かうなんて勇気あるじゃん」


「いや、ただ頭叩いただけでしょ」


「いやいや、私なら逃げてたよ?」


「仮にも同級生らしいし明日の新聞に出たら嫌なだけよ」


地下鉄で裕美子と別れて帰宅すると、


「あ、お帰りなさい。いかがでした? 入学式」


私はベッドで漫画を読みふけっているクロエに、入学式までの出来事を報告する。


「――でね、駅で包丁振り回す男に刺されたんだけど、ぜんぜん痛くなくて」


「え、さらっと怖いこと言わないでください! 普通死にますから!」


「そのままデビルプリンセスに覚醒して、闇の炎で男を消し飛ばしたの。そしたら警察来ちゃって」


「消し飛ばした!? え、犯罪者はともかく一般人の目もあったんですよね!? 悪魔姫バレじゃないですか!」


「だから、《漆黒の誘眠》で全部眠らせたのよ。……ほら、私の中の悪魔姫が勝手に発動して」


「なにやってるんですか!? 漆黒の誘眠って広範囲の眠り魔法ですよ!? 古文書には地球規模で作動するらしいのに!」


「火星まで作動したわ。安心して」


「安心できませんッ!」


クロエは頭を抱えて枕に突っ伏した。私は肩をすくめる。


「まあ、解除もできたし、みんなちょっと昼寝したくらいで済んだから大丈夫よ」


「“大丈夫”の定義が人類とズレてます……」


私は苦笑いしながら、鏡に映る赤髪の自分を見やって、思い出したかのように


「あー、あと織田信長と今川義元がいた」


「日本の戦国時代の大名でしたっけ?」


「そそ。なんか死んで転生してきましたって感じだったわ」


「死ぬ前の記憶を維持したまま生まれ変わるなんていくらかかったんでしょう? 一兆円までとはいかなくても億単位のはず」


「わからないけど大名ならお金持ってるんじゃない?」


「当時は年貢、つまりお米が税金がわりですよ」


「まあ彼らは放っておいて、問題は我が家よ」


私は真顔に戻る。


「大学時代の私ってバイト掛け持ちで衣食住や学費をまかなってたんだけど、この赤い髪じゃ採用無理かも。てかクロエ、あんたも働かないと来月から食べるどころかここからも追い出されるわよ」


「そ、そんなぁ……!」


「漫画読んでないでアルバイト情報誌を読むことをおすすめするわ」


「そういやWi-Fiってどこにとんでますか? 魔王を探そうとしましたがタブレットが使えなくて」


「この時代はテレホーダイの時代だからね。そんなものないわ。そもそも我が家にパソコンないし、情報源はテレビと新聞よ」


「そんなぁ。それじゃあ私はこの世界じゃ大鎌背負ったただのヤバい奴じゃないですか」


「今更!? とりあえずダメ元で過去の私がバイトしてたモクドナルドに行ってみるわ。とりあえず様子見に。ね」


「ついでにハンバーガー買ってきて下さい」


「欲しけりゃついてきなよ。あわよくば働かせるつもりなんだから」


「うぅ」


2人でマンションを出て学生時代バイトしていたモグドナルドに向かう。


すると、途中にあった銀行の前で、織田信長と今川義元がいた。


「ここに金がたんまりあるらしいぞ」


「だが、どうするのじゃ?」


「金を出せ。命だけは許してやろうぞ。というのはどうじゃろうか?」


「ふむふむ。では号令をだそうか」


「なに、銀行強盗しようとしてるのよ」


「なにやつ! ぬぬっ、お主は赤髪の南蛮人!」


「日本人よ」


「名をなんと申すか? 先程の礼もあるしな」


「近藤明奈よ。で、こっちがクロエよ」


頭を下げるクロエ。


「で、なんで強盗なんかしようとしたのよ?」


ジト目で聞くと信長が申し訳なさそうに、


「入学式に行ったじゃろ? こやつと近くで飯を食ったじゃろ? そしたら一文なしじゃ」


「無さすぎでしょ」


「まさかただの白米とふりかけだけで50万円とは思わなんだ。物価が高い世の中じゃ」


「ぼったくりにあってるだけじゃないか!」


「すなわちワシらは悪徳商人に騙されたと申すか!」


「そういうことね」


「ぐぬぬ。許さんぞ。義元! 焼き打ちに行くのじゃ!」


「合点承知!」


「行くな。行くならあそこに行きなよ。交番っていって市民の味方だから」


「かたじけない。ワシが天下人になったら謝礼をしようぞ」


左は頭を下げて、信号を無視して交番に行っては警官に怒られていた。何故ここまで現代の常識がないのに新入生代表になったのか謎である。


とりあえず気を取り直してバイト先に向かうのであった。


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