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黒タピオカと黄金の魔力

黒タピオカって、そもそもどこで手に入るのよ。


私は椅子に腰かけ、テーブルを指でとんとん叩きながら悩んでいた。死ぬ前なら――スマホで「タピオカ 販売店」って検索すれば一発だったはずだ。だが、転生して過去に戻った今はまだPHSが主流である。


「メールだってカタカナ20文字しか送れないのよ……」


当時の技術力を思い出してため息が出る。ネット環境もダイヤル回線で、テレホーダイの時間にしかつなげない。ADSLなんてまだ普及していないし、そもそも検索サイトも“Yahoo!”で人力登録の時代。


「今の高校生に言ったら爆笑されるわね」


私は頭を抱えて、「とりあえず今日はここまでにして、明日授業が終わったら図書館に集合してタピオカ探ししましょう」と2人に話して解散になった。


とにかく疲れた。どうせもうすぐ地獄の筋肉痛が今の筋肉痛の上に襲いかかってくるのだろう。覚悟を決めてまっすぐ家に帰ることにした。


翌日、予想通りとはいえ、あまりにもひどい筋肉痛に大学を休むことも考えたが、身体に鞭をうって家を出ることにした。クロエは市が運営する図書館に行って、他の材料を含めて調べることになった。


バスを降りて大学に向かうと、なんだか騒がしかった。人だかりができている。入学式から三日目。これまで平和に過ごせたことがないのだが、一応何が起きているのか確認する。


「タピオカドリンク 販売中」


手書きで書かれた小さな看板に生徒が群がっている。


「義元! 飛ぶように売れるぞ、うわははは!」


信長がカップを片手に豪快に笑っていた。


「うむ、信長よ。黒き珠が沈みゆく様は、まるで我が駿河湾の真珠のごとし。味もまた、もちもちとして妙なるものよの」


義元はストローをちゅるりと吸い、満足げに頷く。


「ちょ、ちょっと待ってよ! そのドリンク、どこから仕入れたの!?」


私は人混みをかき分けて、机に並ぶ紙コップを凝視する。底には黒々と光る“タピオカ”らしき粒。


「おお赤髪の女か。昨夜、河川敷にて魔物を斬り捨てたところ、この“黒き珠”を落としよったのじゃ」


義元が腰の刀を軽く叩きながら、得意げに言う。


「その後、古書物店で調べたところ……“煮て甘くすれば飲み物に合う”と申したゆえ、試してみた次第よ」


信長は片眉をつり上げ、まるで新兵器を披露するかのようにカップを高々と掲げた。


「なんでよりによって、タピオカドリンクにたどり着くのよ……!」


私は額を押さえ、思わず嘆息する。だが、周囲の学生たちは歓声を上げながら黒い粒をストローで吸い上げていた。


「ふはは。大金が湯水のように我らの元にやってくるぞ!」


「やっと屋根がある建物に住める!」


「安土城作るぞ義元!」


涙する2人に、私は尋ねる。「他の材料はどうしたのよ?」


「なんとかなったわ!」


「まさかのご都合展開!?」


「この書物を見よ」


古びた「じゃらん」を見せられる。


「この辺の地域に現れる魔物のドロップ品が書かれておるのじゃ」


「まさかのじゃらん。てか1979年4月号って20年前じゃない。その時から魔物っていたわけ!?」


「そのようじゃな」


この世界一体どうなっているのよ?


だが材料を集めなくても、これがあれば裕美子の魔力は回復する。


「信長。どこでドロップしたのか教えてちょうだい」


「なぜ我が軍の機密情報をそなたにくれてやらねばならぬのだ?」


「あなたたちは私に十分すぎる恩をもらったでしょ?」


「ぐむむ。今後も頼りになるかもしれぬゆえ、協力いたすとしよう」


信長が渋々肩をすくめる。場所を教えてもらっていると、レンタローとレミットがやってきた。


「あ、ちょうどよかった。レンタロー。このタピオカドリンク買い占めて。あんた1日百万円支給されてるんでしょ?」


「これが昨日話してたやつ? 無駄遣いはしたくないんだが」


「そうよ! なんで天界からの支給金を悪魔姫なんかに使わないといけないのよ」


「まぁ味見してからなら」


「主様の優しさに感謝することね!」


レンタローは代金を信長に支払い、タピオカドリンクを受け取るとストローで飲み出す。


「これ、飲みづらいな。あーでも、なんか女子高生とかにウケそう」


「裕美子にも買ってあげて。多少なりとも魔力が回復するわ」


「わかった」


そう答えると、代金を支払いタピオカドリンクを受け取った。


授業開始10分前に裕美子が登校してきたので、


「これがタピオカドリンクらしい。飲んでみろ」


と、タピオカドリンクを裕美子に渡した。


「こんなのだっけ? てかなんで紙コップなの?」


裕美子は恐る恐るストローを口に運ぶ。ひと口飲むと顔色が少し明るくなる。


「……なるほど。少し魔力が戻ったような気がするわ」


私は待っている間借りていたじゃらんを閉じて、


「まぁ、出たらラッキーという“黄金のタピオカ”なら全回復も夢じゃないかもね」


「そんなレアドロップ、あるのか?」


レンタローが不安そうに聞くと、信長が片眉を上げて答えた。


「ふはは、あれば戦国の世をも制する力じゃ。出れば我らも大儲けじゃな!」


義元も嬉しそうにうなずく。


「じゃあ放課後は河川敷で探索ね。黒タピオカの狙いで、黄金タピオカもついでに狙おう」


「うむ! 我らが冒険はまだ始まったばかり!」


「え、あんたらも来るの?」


「ワシらも商売じゃからな!」


こうして、少し魔力が回復した裕美子を中心に、黒タピオカと黄金タピオカを求める放課後の河川敷探索計画が立てられたのだった。


授業中、私はノートに落書きのように「黄金タピオカ、出ますように」と書き込み、わずかに笑みを浮かべる。


今日もまた、不思議で、少しだけ愉快な一日が過ぎていくのだった。

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