星の魔女、覚醒
静かな空間に私達はいる。
この空間、放火魔と戦った時と同じフィールドだ。
「転生者って裕美子。お前もか!」
レンタローは剣を物理化させてかまえる。
「そうね。私は大切な家族を皆殺しにした奴を殺すためにこの世界に戻ってきた」
「どういうこと?」
つい話に割って入ってしまった。
「卒業して結婚して子供ができて大変だったけど幸せだった。でもある日家に帰ったら何者かが家族を皆殺しにしてたところで、私もそいつに刺されて倒れた。意識が薄れていく中で見覚えがあったけど、思い出せない。痛く苦しい中
、私に語りかけてきた神がいたのよ」
「それが妾じゃ」
突然現れたピカーッと光る美しき女性。これがまさに女神という言葉がよく似合う。
「慈愛の女神、リィナじゃ。レミットにクロエ。お勤めご苦労様」
「ハハーッ」
片膝をつき頭を下げるレミットにクロエ。どうやら歪み合いをしている2人よりも存在が上のようだ。
「今まで出会った奴の中に、私たち家族を奪った奴がいる。私は奴を絶対に許さない。見つけ次第存在を消す。私の願いにリィナは力をくれ、この時代に戻ったというわけよ」
「慈愛の女神がやることじゃない気がするんだけど。普通、復讐の神とかじゃないの?」
私は言うと、
「神は暇なのじゃ。たまには違う分野の存在に力を貸してもよかろう。それにしても勇者に悪魔姫か。2人合わせてもこの星の魔女にはかなうまいて」
「てか慈愛の女神が魔女誕生させんなよ」
「ふっ。慈愛の神は万能なのじゃ!」
「てか、さっきからまぶしいけどさりげなく羽につけてる照明消しなさいよ」
「待て。今電源を切る。節約は大事じゃ」
そんなリィナをよそに、
「まさか明奈がマジモンの悪魔姫だとは信じられなかったけど、本当にキャラ作りで済ませたかったけど、どうする? 正直私は戦いたくないなぁ」
私だって。と言う前に、
「当然です! 戦う理由はこちらにございません! 例え莫大な報奨金がかかってても戦いません!」
クロエがでしゃばってきた。
「レンタローは? 正直あなたは明奈の彼氏ってしか記憶ないんだけど?」
「俺は戦ってみたい。裕美子ではなく魔女という存在と!」
「同じなんだけど。まぁいいわ。転生してきたけどすぐに死んでも恨まないでね」
「どぉりぁぁぁ!」
レンタローは剣を両手に飛び込む。が、運動神経はあるが動きは素人なんだろう。
「流星刃」
星の輝きを纏った魔力の刃で連続斬撃を放つ。
これを防ぎきれないレンタロー。吹き飛ばされる。
「星霧射」
追い討ちをかけるように、星の結晶を魔力で飛ばす。貫通力が高いようで身体を貫いた。
「主様!」
レミットがたまらず駆け寄り治癒魔法をかける。
「勇者なんて所詮人間。これでわかったなら2度と私に近寄らないことね」
星の魔女って強いんだなぁ。私は悪魔姫の力を未だ使いこなせてないっていうのに。裕美子は理由はなんであれ転生してから努力したのがわよくわかる。
そんな時、
『星の魔女面白い。妾が打ち負かしてやろう』
勝手に私が喋り出した。
「明奈様。目が」
私にはわからないが、額に違和感がある。額に目が出たというのか? 漫画キャラじゃん!
「明奈。じゃないね。古の悪魔姫らしいけど所詮は太古の時代。現代にかなうと思ってる?」
『ようしゃべる魔女じゃ! 闇炎陣!』
闇の炎をおこし攻撃する。
「星屑結界」
すかさず魔法結界を張り防がれる。
『漆黒刃』
闇の剣を召喚し、魔法結界を打ち破る。
「くっ!」
『まだまだ甘いな。鍛錬がまだ足りぬわ。ほれ、受けてやるから最大火力の魔法かスキルを使ってこい』
「私は星の魔女。女神の力を与えられた存在。あんたなんかに絶対に負けられない!」
裕美子が魔力をためる。
私はフフッと笑う。その裏で
『明奈よ。なぜ妾が古の悪魔姫と皆から恐れられてきたか見せてやる』
私にだけ聞こえるように言ってきた。
天空が裂けるように光と闇が交錯する――
裕美子は両手を高く掲げ、指先から銀色に輝く光の鎖が放たれた。星々の力が一瞬にして結集し、周囲の空気が引き裂かれるような轟音を響かせる。
「星天崩壊」
彼女の呟きと同時に、無数の光と闇の渦が地上へと降り注ぐ。攻撃範囲内のあらゆる防御は無効化され、敵も建物も光の鎖に絡め取られ、一瞬で銀河のような光景に変わる。
しかし、代償は大きい。魔力は極度に消耗し、身体中に重くのしかかる疲労感。魔法を使いすぎれば、精神にも影響が出る危険がある――まさに究極の一撃。
その破壊力と美しさは、まさに星の魔女ならではの力。戦場を覆う銀河のような輝きは、見た者の心を圧倒する――。
「恨まないでね明奈。私は家族を救うためには親友であったあなたでも邪魔をするなら」
言い切る前に、
『安心しろ。邪魔をすることはせん。ただ妾の力を明奈に示したかっただけよ』
私は服についたほこりを振り払う。
「な、なんで? 究極の魔法なのに!」
『デビルプリンセスは死なぬ。古の悪魔姫を太古の存在として甘く見たことが敗因じゃな。心しておけ』
「くっ、リィナ。力を貸して!」
「貸してやりたいが、妾は神の力を転生に使い果たしておる。しばし休息が必要じゃ」
「転生してからずっと食っちゃ寝してたじゃない!」
「あれで魔力1回復したのぅ」
「、、、負けたわ。すきにしなさい」
裕美子は降参すると、
『何もせん。これからも明奈と仲良くしてくれればよい』
「それだけ?」
『そうだな。あとその女神役立たずそうじゃからモグドナルドで受付のバイトでもさせるが良かろう』
「わかったわ。正直毎日テレビ見てお菓子食べてるだけだから、休みの日の旦那を見てるみたいで苛立ってたのよ」
「妾、神なのにバイトとは。世も末じゃ」
「それにしても明奈。本当に強かった。魔女と悪魔姫だしこれからもよろしくね」
裕美子が力無き手を差し伸べてきたところで、意識が完全に私に戻った。
「うん。こちらこそよろしく。裕美子」
その手を力強く握ったのであった。
その夜、地獄の筋肉痛が再びきたことはまだ知らないのであった。