#1 なんか知らない、ここはどこ!?
世の中は不思議なことで満ち溢れています。
あると思ってたプリンが無くなって、スーパーに向かっていた女子高生が歩いてたら転生するなんてことざらにありますよ。
まあ異世界転生なんてなろう系で腐る程読み漁りましたからね、いつかあるかもしれないとは期待してたし。
だけどねもし転生するとしたら貴族令嬢とかイケメンとかそういう感じを期待しますよね!?
断じて訳解んない着物着た年下の男子になるなんて誰も願ってないっての!
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それはいつも通りの一日のはずだった。
「ただいま!」
「おかえりなさい」
部活から帰ってきてお風呂上がりに冷蔵庫を漁る。
確か昨日コンビニで買ってきたプリンが……無い。
クソ兄貴っ!!私のプリン食いやがったな!
リビングで一狩りしている兄貴に飛び蹴りをかます。
「うわっ、いってえな。いきなり蹴ってくるんじゃねえよ」
「なんで勝手に私のプリン食べたの!?」
「え、あれ楓のだったの?」
「しらばっくれてんじゃねえ!!」
10分くらい死闘(主に兄貴の生死をかけた)をしていると、観念したかのように兄貴が財布から千円札を出す。
「楓千円やるからもう一回コンビニ行ってこいよ、余った分でお菓子買ってもいいから」
「ありがと!」
こういうところがあるからなんやかんや言っても憎めないんだよね……
財布とスマホだけ持って徒歩三分のコンビニに向かう。
横断歩道で信号を待っている間に、ストーリーを見ていると、
キキーッ、、、
なにかブレーキ音みたいのがする……なんだろ
前を見るとトラックが迫ってきていた。
え、嘘、こんなの確実に死ぬじゃん……
最後にプリン食べたかっ
ドン
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んう……何か冷たい……?
私死んでなかった!?
今病院ってこと…?でもそれにしては何か固くない?
ゆっくり目を開けると広がっていたのは……満点の青空。
「はあっ?!」
がばっと起き上がって周りを見渡す。
周りは田んぼが広がっていて、Theド田舎。
建物どころか電柱一本立っていない。
「どーいうこと……?」
なにこれ、私轢かれたはずですよね?
「何か声が変なんだけど……」
微妙に声がくぐもっている。なんとなく声が低い様な気もする。
もしかして……考えたくもないけど。
嫌な予感がして喉に手を伸ばす、すると伝わってくるのはごつごつとした喉仏。
腕に目を向けると着物を着てるし、やけに筋肉質な感じがする。胸を見ても少し自慢だった膨らみなど影も形もなく、考えたくもないけど下半身に膨らみが……
「いやあああああああああ!!!!!」
もしかして、私男になってる!?
近くの水たまりを覗くと涙目の男の子が写っている。
多分小学生くらいだよね……?
頭は、江戸時代の侍っぽい髪型をしている。
この訳解んない頭してる男が私だって言うんですか!?
神様せめて転生するなら女子にしてよ!!!!!
「おいガキ……道端で叫びまくって頭やられちまったのか?」
後ろから急に声がして急いで振り向く。
すると、私と同じく着物を着た男の人が立っていた。
頭に手ぬぐいを巻いて女の子が入ってそうな木箱を背負っている。
何この人、結構イケメンなんだけど……いや、そうじゃなくて!
「あなた……ここがどこか分かります?」
「何言ってんだ?ここは石田村だろ?」
いやそんな顔して言われましても。石田村って何県やねん。
「何県か教えてもらってもいいですか?」
「県?なんのことだ、そんなの聞いたこともねえぞ」
県を聞いたことないってどういうこと……
私が頭を抱えているとお兄さんが怪訝そうな顔でこっちを見る。
「あのなあ何を混乱してんのか良く分かんねえけど、ここは武州多摩郡石田村だぞ」
「え?もしかして…………」
電柱すら見当たらない田んぼ道、着物、そして訳解んない住所。
「過去に……タイムスリップしてるってこと!?」
どうしようどうしよう!!
どの時代かなんて私理系だから分かんないし、そもそも状況が謎すぎるんですけど!!
「お前……ほんとに頭大丈夫か……?」
「大丈夫ですっ!!」
でもちょっと待って、今この状況的にこのお兄さんに色々教えてもらえば良さそうじゃない?
よくゲームでもこういうチュートリアルキャラに付いてけば何でも揃うじゃん!
きっとそうだよね、よし善は急げ!!
「あの、俺ちょっと色々あった石田村まで来たんですけどここらへん詳しくなくて一緒について行ってもいいですか?」
「別に……もう帰るとこだから構わねえが、てめえ金とかあんのか?」
「ないです」
「親は?」
「みんないません」
「はああ……勝っちゃんのとこでも取り敢えず連れてくか」
お、なんかどっか連れて行ってくれそう!
「てめえ名前は?」
「水野……」
そこまで言って少し黙る。
楓ってばりばり女子の名前だよね?この今の男オンリーな感じで楓は良くない気がする……
でも、思いつかないし……うーん……あ、最近社会でやった
「つ、対馬!水野対馬です!!」
「対馬……そっちの出身なのか?」
「そうです!両親が亡くなってしまってそれに合わせて上京してきたんです!」
「そうか……それは災難だったな」
「はい、まあそれなりに……」
適当に愛想笑いを浮かべて誤魔化す。
「じゃあ行くか江戸に」
「江戸!?」
これは私でもわかる、江戸ってことはここはつまり江戸時代……
「ガキ、江戸も知らねえのか?」
「そんなことくらい知ってます!ところであなたのお名前は?」
「土方歳三だ」
ひじかた……?なんかどっかで聞いたことが有るような気がする。
実は有名人だったりするんだろうか?
まあなんとかなるでしょ!
お兄さんの隣を歩き出した。
対馬