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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
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キャンプに行こう 5(緑の犬)


  そしてそのまま昼食を済ませテントを設営する。


 少し手こずったが、無事に1人でテントを設営できた。

 後は……夕食の準備のための、薪と水が足りない。

 

「ジェーンさん、薪と水を取りに行きたいんですが、テントに見張りが要りますか?」


 見張りが必要なら順番も決めとかないとな。


「いえ、ここはギルドが初心者のために作った安全地帯になっています。また、水場も同じです」

「安全地帯?」

 

「はい、聖女による結界が張られており、モンスターは入れません。ティムモンスターは例外ですが」

 聖女すごいな。それかギルドがすごいのか……至れり尽くせりだな。


「初心者の死亡率が高かったので、一説には神の思し召しとも言われています。今現在はここまで高度な結界を張れる人はいません」


 なるほどな。ま、何にせよ、夜眠れるのは良いことだ!


 ということで、水をゲットしに安全地帯のキャンプ地を出て森に来た。


 フェレナは先程の鬱憤を晴らすかのようにツノウサギの解体をしまくっており、姉もその補助。ハイドとケインは薪拾いと、分担した結果である。水場の湖までは、結界が無いためエイダンも一緒である。スカイとぺぺも散歩がてら一緒に歩く。

 

「ぺぺがスカイを守るんだぞ」

「ぺぺ!」


 出発前に言い聞かせていたが、有言実行。先頭を歩くぺぺがスライムを蹴散らし、ツノウサギも上に飛び跳ね頭を蹴り一撃で華麗に倒していく。


 ……すさまじいな。


 全く出番がない。……いやもともと俺は戦えないけど。


「ぺぺ?」 

「キュキュウ?」


 ぺぺとスカイの足が止まる。


 俺もぺぺとスカイの側に近寄ってみると何か緑の物体が倒れている。


 ゴブリン?

 いや、形が全然違う。

 どちらかと言うと犬っぽい。


 恐らくモンスターの子供だろう。傷だらけでかろうじて息をしているが、意識もなく倒れている。……恐らくもってあと少しの命だろう。


「ぺぺ!」

「キュキュウ!」

 2匹は目を潤ませて俺を見るが、俺は首を振った。


「恐らくスカイの桃を食べて傷が治っても、体力を消耗しているから長く持たない。それにたとえここで助けても、モンスターとして襲ってきたら倒さないといけない」


「ぺぺ!」

「キュキュウ!」


 2匹は動かずに俺を見つめてくる。


「ダメだ。行くぞ」


 俺はエイダンとその場を離れるふりをするが、2匹は全く動かない。


 ……は――。仕方がないな。


「助からないかもしれないぞ」

「キュウ」「ぺぺ」

 

「一緒には連れて行かないからな」

「キュウ」「ぺぺ」


「もし襲ってきたら、エイダンに倒してもらうぞ」

「キュウ」「ぺぺ」


 全ての俺の言葉に2匹はこくりと頷く。

「……スカイ、桃をあげてみろ」


 スカイは桃を取り出し、緑の犬の口元に差し出すが意識がないせいか、全く食べる素振りがない。

 ……これは、やはりもうダメだな。


 俺はゆっくり首を横に振る。


 ぺぺとスカイは目に涙をためている。

「……キュウ」「……ぺぺ」


 その時エイダンが緑の犬を掴み口を開けさせ、スカイから桃を受け取り、片手で握り潰すとその口に注ぎ入れた。

 

 飲めるか……


 皆が固唾をのんで見守る中、犬の喉が動きごくごくと音を立てて飲んだ。全て飲み干すと傷が、みるみるうちに治っていく。


 そして、まぶたが開く。

 

「……クーン」


 だが、やはり立ち上がる元気は無さそうである。


「キュキュウ!」「ぺぺ!」


 スカイとぺぺは緑の犬の目が開いて喜んでいる。

 ……でも、これ以上は難しい。


 俺がどう言うか迷っていると、スカイは今度はオレンジをポケットから取り出し、エイダンに渡した。


 ……オレンジ?


 エイダンもこくりと頷くと、もう一度握り潰して緑の犬に食べさせる。


 緑の犬はオレンジもごくごく飲んでいく。


 ……あれ、何だか元気になってない?


 オレンジを一つ飲み干すと、立ち上がり皮までパクパク食べた。


「キャン、キャン!!」


 なぜか元気になり、尻尾を振っている。そしてエイダンの手をペロペロなめ、スカイとぺぺの周りを回りだした。


「ぺぺ!」

「キュウ!」


 スカイとぺぺも嬉しそうである。


「……スカイ、そのオレンジ、もしかして果物生成か?」

「キュウ!」

 そうだ、と言うようにスカイが手を上げる。


 ……聞いてない。いや、聞かなかった俺も悪いか。


 忙しくて、桃以外出せるかどうかの検証してなかったからな。


「……スカイ、桃とオレンジじゃない物は生成できるか?」


 スカイは首を横に振る。良かったオレンジだけだな。とりあえず落ち着いたらオレンジの検証をしてみよう。


 緑の犬を忘れていたが、まだその場に留まっている。


「スカイ、ぺぺ、ここまでだ。水を汲みに行くぞ」


「キュウ!」「ぺぺ!」


 今度は首を大きく縦に振り、緑の犬に手を振ると俺の側に来た。


「……元気でな」


 緑の犬も「キャン」と吠えると、森に消えていった。


 別れの空気が読めるとは、なかなか賢い犬である。しかも緑。こっちの犬は緑なのかな……帰ったらジェーンさんに確認してみよう。


「行こう。皆が待ってる」


 肝心の水がまだ汲めていない。俺達は急いで湖に向かった。

 


  

 


 

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