表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
94/169

保冷剤作り 6


「これを見てちょうだい」


 アダムスさんはテーブルに2個のリュックを置いた。一つは革で作られたシンプルなもの。もう一つはピンクの生地にレースがついた華やかなものだった。


「暑さに悩むのは子どもたちばかりじゃないから、男性向けと女性向けを考えてみたの」


 どちらも使い勝手も良さそうで、何よりオシャレである。


「昨日、スバルちゃんから話を聞いた時にピンと来たのよね。これは売れるしオシャレの幅が広がる発明になるって」


「いや、でも暑さに悩む人はごく一部の気もしますけど……」


 皆がみんな悩んでないもんな。


「そうじゃなくて、保冷剤無しでも売れるってことよ」


「リュックがですか?」


「ええ、子ども向けのものは子どもが欲しがるだろうし、こっちの男性向けはアイテム袋を持ってない男性に、この女性向けはオシャレをしたい女子にきっと売れるわ!!」


 アダムスさんは俺に熱弁する。


「えっと、念の為母に聞いてからになりますが、おそらく保冷剤を本格的に販売することになったら、大量にリュックが必要になるのでこちらからお願いしたいくらいになると思います。でも、リュックが忙しくて他の作品を作る時間が無くなる可能性もありますよ?」


 せっかく可愛らしい小物を売って人気なのにもったいないような……。


「いいのよ、私はリュックに新しい可能性を感じたの。是非お母様に聞いてみてちょうだい」


 アダムスさんがそう言ってくれるなら、母に聞いてみよう。


「それじゃあリュックの返事はまた後日で良いですか?」


「ええ、待ってるわ」


「それと、このメーシープのリュックはおいくらでしょうか」


 値段のことを全然考えて無かった。


「今回は新しい可能性に気づかせてくれたスバルちゃんに投資の意味でプレゼントするわ。良かったら、後二つの男性用女性用もプレゼントするからお母様に上手にプレゼンしてきてちょうだい」


 タダより高い物は無いってことだな。でも、話をするのに見本がある方が話しやすい。何より母が欲しがるかもしれない。


「すみません、じゃあお言葉に甘えて今回だけいただきます」


「そうしてちょうだい!色良い返事を待ってるわよ!」


 アダムスさんは満面の笑みで俺達を見送ってくれた。


 保冷剤の件はこれで一応目処がついたな。後は母へのプレゼンだけだ。


 俺達は自宅にいる母の元へ向かった。


 トントントン


「はい」


「失礼します」


 ドアを開けて政務室に入る。父が不在の間は母が政務を一手に引き受けて、たまに街へ視察に行く以外はほぼ缶詰め状態で政務に取り組んでいた。


「あら、スバル何の用?」


 書類の手を止めて、こちらに来てくれる。


「忙しいのにごめんなさい」


「ちょうど休憩しようと思っていたところだから、気にしないでちょうだい」


「実は……」


 俺はルルちゃんのことから、保冷剤のこと、リュックのことを説明した。


「ちょっと待ってちょうだい。情報量が多すぎるわ。まずは保冷剤から見せてちょうだい」


 母が実物を見たいと言うと思って、ミレー先生のところに寄って持って来た試作品を見せる。


「かなり冷たいのに固くないのね……」


 母は実物を手に取って確かめている。


「まだ、いろいろ試行錯誤中だけど、今のところ1日は持つよ」


「これはいろいろ活用できそうね。もちろん暑さ対策にもなるけど、飲食店や腐りやすい荷物の運搬にも使えるんじゃないかしら。それこそ固いままで。しかもこれ、魔道具じゃないんでしょう?低コストだし。効果が切れたら持って来てもらって、新しい物と交換すれば良いし。何より材料がスライムジェル!!辺境で持て余してる素材じゃない」


 母が饒舌に語るので、今度は俺がついていけない。


「えっと……とりあえず、保冷剤は作る方向で良いのかな?」


「もちろんよ。できたらそれ専用の店を作りたいわね。……この商品化は私に任せてもらって良いかしら」


「お願いします」


 これで、後のことは母に丸投げできるな。


「それから、リュック?だったかしら?それも見せてもらえる?」 


 俺はアダムスさんにもらった3個のリュックを見せる。


「まぁ、何て可愛らしいの。こちらはスタイリッシュだし、これはステキだし。スバル、これも売れるわ!!」


 母の反応もアダムスさんと同じく上々のようだ。


「それで、アダムスさんがリュックを専門に作りたいってことなんだけど……」


「良いんじゃないかしら。このリュックの製作者ならきっといろいろ良い品を作ってくれるわ。……でも、保冷剤の店と、リュックの店は近くが良いわね……。アダムスさんとも私が話をつけても良いかしら」


「もちろん。お願いします」


 良し。アダムスさんの方も何とかなりそうだぞ。

 

「……それでスバル。このバッグはいただいても良いのかしら」

 

「そのつもりでもらってきたから良いよ……でも、母様メーシープのはルルちゃんのだからダメ」


 危ない危ない。危うくメーシープのバッグも取り上げられるところだった。


 これで保冷剤作りも一段落だな、後は1週間後にミレー先生に進捗状況を聞くだけだ。

 

 


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ