保冷剤作り 4
久しぶりにアダムスさんのお店に行き、ドアを開けると「ニャ―」という声が聞こえる。白い毛で、グレーのシマが入ったふわふわのハチワレ猫が出迎えてくれた。
「みーちゃん帰ってたんだな」
スカイがみーちゃんの側に行き、何か話をしている。
「キュキュ」
「ニャ―」
「キュキュウ」
二匹のやり取りは見ていてほっこりする……じゃなくて、アダムスさんだ。
「いらっしゃいませ」
アダムスさんではない若い女性に声をかけられる。
「アダムスさんに相談があって来たんですが……」
もしや今日は不在かな。
「店長に用事ですか、今奥で作業しているので呼んできます……店長、お客様です」
若い女性が奥に呼びかけると、アダムスさんが現れた。
「まあ、スバルちゃんじゃない!どうしたの?」
アダムスさんは平常運転でピンクの可愛らしいドレスを身に着けていた。
「あの、アダムスさんに相談があって来たんですが、今お時間よろしいでしょうか?」
「もちろんよ、立ち話もなんだから奥に入って」
そのまま皆で奥に案内された。
「散らかっていて、ごめんなさいね。ちょうど作業中だったの」
中は作業場らしく、綺麗な布や糸がところ狭しと並んでいる。
「それで、相談とは何かしら?」
俺はルルちゃんのこと、保冷剤のこと、それを入れるリュックについて説明した。
「リュック?どんな物かしら?」
そうか。この世界はアイテム袋が流してるからカバンは皆肩掛けカバンしか見たことがない。リュックは無いのか。そう気付いた俺は下手なイラストでアダムスさんに説明した。
「まぁ、これは便利ね。肩掛けは一方の肩に負担がかかるけれど、これは両方だから負担が軽減できるわ。しかもアイテム袋持ちじゃない人にとったらいろいろ入れられるし……とっても良いアイデアね!創作意欲がわくわ」
アダムスさんにもリュックは好評のようだ!
「ただ、保冷剤を入れるならピッタリしたものが良いかも。見本はある?」
念の為、1個持って来ていて良かった。俺はアダムスさんに保冷剤をわたす。
「かなり冷たいわね。少し冷えすぎるから生地は厚めが良いしら……」
俺はできるかどうか分からないけど、前世の動物バックを提案してみる。小さい子が動物を背負っているって可愛いよな。(そっちの趣味はありません)
「まあ、何てステキ!1日ちょうだい。小さい子にピッタリのリュックを作って見せるわ!」
「あの、お値段は……」
まだない物を作ってもらうのにどのくらいかかるか想像がつかない。
「今回は無料で良いわ!また完成したら私がお願いしたいことがあるの」
アダムスさんのお願い……なんだろう。すごくドキドキする。
「俺にできそうなことですか?」
「もちろん、スバルちゃんにしかできないことよ」
ならば、お願いしよう。
「俺にできることなら……では、明日また来ても良いですか?」
「ええ、楽しみに待っていて!」
「それはそうと、エイダンちゃんは作らないの?」
作るって、リュックを?
「作るんだったら好きに布と糸持っていっても良いわよ」
エイダンを見ると、戸惑った顔をしていた。
「エイダン、作れるの?」
エイダンはこくりと頷く。
ええ――!!全然そんな素振り見せたことなかったじゃん。エイダン裁縫できるの!?
「じゃあ、せっかくだからエイダンも何か作ってくれるか?お言葉に甘えて必要な物をいただいていこう」
「……ある」
あるって家に?そういやエイダンの部屋は見たことが無いけど。
「そう、それなら良かった。負けないわよ!!」
エイダンはこくりと頷く。
「……それじゃあ、また明日、よろしくお願いします」
エイダンについてビックリしすぎて少し固まってしまったが、俺達はアダムスさんに挨拶して、お店をでた。
帰りの場所の中で気になっていたことをエイダンに聞いてみた。
「エイダン裁縫得意だったんだ」
こくりと頷く。
「いつから?」
その質問には首をかしげた。
「じゃあ、何でできるの?」
「……暗器が糸」
「暗器が糸?」
今まで早すぎて、エイダンの戦闘はよく分かってなかったけど、扱う武器が糸だったんだな。
糸を扱うと裁縫も得意になるのか?
いやまあ、エイダンだからな。
「なるほど、じゃあ明日完成を楽しみにしてる」
エイダンの趣味になるかは分からないけど、何となく嬉しい気持ちになった。
エイダンの世界も広がるといいな。




