保冷剤作り 1
昨晩いろいろ考えて、今日は完璧なオフにした。エイダンにも出かけないことを話をし、1日自分と離れて好きなことをしてもらうように伝える。
「……一緒か良い」
エイダンはまるで彼女のように、俺をすがる目で見てきたが、心を鬼にして1日離れておくように伝えた。しょんぼり立ち去る姿に声をかけたくなるが我慢だ我慢。スカイとぺぺにも同じことを伝えたが、離れたくないようで、ぎゅっとしがみついて来た。
可愛い。
2匹はテイムモンスターなので一緒にいても問題なしとし、一緒にベッドに寝転がる。
ちなみに皆さん気づかれましたか?
朝のルーティンが無いことに。
そう、姉とフェレナはギルド長と一緒に一泊二日の初心者の森キャンプに出かけたのだ。俺も誘われたが、速攻で断った。のんびりしたかったし、ちょっと考えたいことがあったからだ。ケインは実家に帰り、ハイドは1人でできる奉仕系の仕事にチャレンジすると話していた。ということで今日、明日は本当に完全オフである。
「暑さ対策か……」
そう。俺が考えていたのはルルちゃんの暑さ対策である。このままだとルルちゃんだけ、仕事に行くことができない。
前世であった暑さ対策を考えるとスポットクーラーやハンディファン、ネッククーラなど、服に小型のファンがついたものもあったな。
クーラーや扇風機の構造など知らないから、作るのは難しい。となると、やはりできそうなのは保冷剤か……。
そう実は一つ思いついていたのだ。
そのための材料はスカイのポケットに入っているので、あとは実現できるかのアドバイスが欲しい。
今日はミレー先生の勉強の日ではないが、ミレー先生は家の離れで暮らしているので相談をしに行こう!
ということで、朝食後ミレー先生の住む離れへ向かった。
ちなみにずっとどこかからかこちらを見つめる視線を感じる。振り返っても誰もいないから、気のせいのような……気のせいじゃないよな。
「……エイダン」
俺はため息をつくとエイダンを呼んだ。エイダンは、すぐに俺の前に現れる。
「……一緒に過ごすか?」
エイダンは嬉しそうにこくりと頷いた。ずっと後ろからついて来るなら、一緒にいる方が精神衛生的にも良いだろう。結局エイダンも一緒に過ごすことになった。
トントントン
「は――い」
俺がドアをノックすると、中からミレー先生の声がした。
ガチャ
「あら、スバル様どうしたんですか?」
「お休みの日にすみません。少し相談したいことがあるんですが……」
「大丈夫ですよ。どうぞお入りください」
離れはかつて曾祖母が余生をのんびり過ごすために建てられた建物で、中庭の奥にありる平屋のこじんまりした一軒家だった。中に入ると、柔らかな木でできた家具が並び、居心地が良さそうである。
ミレー先生に勧められ椅子に座る。
「それで、相談とは?」
ミレー先生がお茶を淹れながら聞いてくる。
「実は、保冷剤を作りたくって」
「保冷剤ですか?」
「はい、体を冷やす道具なんですが、スライムジェルで作れないかなと」
そう、スライムジェル。
前世で知ってる保冷剤の中身に似ていたのだ。俺は簡単にミレー先生に説明する。
「ふむ。つまりスライムジェルを氷魔法で固めるということですね」
「はい」
俺はまだよく知らないけど、世の中には便利な魔道具がいろいろある。それと同じように、保冷剤も魔道具のようにできないだろうか。
「そうですね――。氷魔法が使える者を魔術が使えるよう鍛えれば何とかなるかもしれません」
「魔術?」
聞き慣れない言葉がでてきたぞ。魔法と魔術何が違うんだ?
「はい。基本的に魔法は自分の魔力をその場で使い力を発揮します。魔術は媒体に魔法回路を作り、それを定着することで力を発揮します」
「つまり、スライムジェルに氷の魔法回路を定着させれば作れるということですか?」
「はい。ただし、魔術を使える魔道具師は数が少なく、しかも氷魔法が使えるという条件も加えるとなかなか、見つからないかもしれません」
「魔道具師は自分の属性の魔法しか魔術にできないんですか?」
「ええ、一般的に無魔法の魔道具が多いんですが、火や風などは属性がないと作れません」
なるほど。氷の魔道具はあまり見たことがないから、魔道具師で氷魔法を使える者がいるかどうか分からないってことだな。
「だから、鍛えればって話になるんですね」
「はい、実は私も魔術が使えるので、私に預けてくれたら半年くらいで魔術が使えるようにできますよ」
「良いんですか?」
「はい、辺境伯家にはお世話になっているので。ただ、日常の細々したことは手伝っていただきますが」
目処はたったけど、すぐには使えないな。
それじゃあ一ヶ月後に間に合わない。
……何とかすぐ使える方法はないかな。




