パーラーラビットベア
冒険者ギルドに戻るとオリビアさんに依頼達成の報告をする。
「流石スバルさんですね。この依頼50組程引き受けて未だに達成できていない依頼だったんですよ」
「いや、偶然ですよ。偶然」
正直ぺぺとスカイがいなかったら厳しかったからな。
「それでもアダムス様が安心されたんでしょうから、良かったです」
「はい」
そこは、みーちゃんが見つかって本当に良かった。
「お金はどうしましょうか?」
「今もらえますか?」
「もちろんです。では、こちらが報酬の金貨1枚になります」
おおっ!金貨1枚!
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
今日は、依頼はここまで。
お昼をギルドの食堂ですませ(今日の日替わりランチはツノウサギのシチューめちゃ美味でした)街に遊びに行くことにする。ぺぺはご飯の後お昼寝中。
「スカイ、エイダン、甘いものを食べに行こう」
「キュウ」こくり。
よし!デザートは別腹だ!
ということでやって来ました、何回も通っているギタンさんのお店、パーラーラビットベアに。(お店の名前は初登場!)
相変わらず、店の前は行列ができている。
ふっふっふ。今回の俺は一味違う。
ジャジャーン!招待状!!
新商品の開発にちょこっとアドバイスしたら、いつでも食べに来ても良いと書かれた招待状をもらったのだ。
少し優越感を感じながら、お店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ」
「「いらっしゃいませ!」」
いつも迎えてくれていた奥さん出はなく若い店員さんが出迎えてくれた。
「あの、店長からこれをいただいた者ですが」
「ああ、スバル様ですね。店長から伺っています、奥の席にどうぞ」
俺達は案内された席に座った。
「今日、奥さんは?」
「悪阻がひどくて今日はお休みです」
悪阻!ということは店長の赤ちゃんが生まれるんだな。どちらに似るか……神のみぞ知るだな。
でも、おめでたい!!
「ご注文はお決まりですか?」
「かき氷スペシャル4つ!」
「かしこまりました、かき氷スペシャル4つですね。少々お待ちください」
そう、俺がアドバイスしたのがかき氷だ。夏の風物詩で前世ではよく食べていたが、この世界では見たことが無かったため、氷魔法を使えるギタンさんに伝えたところすぐに商品化された。ちなみに味付けは俺もまだ、食べたことが無いので不明である。
待っている間に、ぺぺを起こそう。今日の一番の功労者のぺぺが食べられなかったら可哀想だからな。
「スカイ、ぺぺを起こせるか?」
「キュウ!」
今日はよく起きてるからな。起きなかったらお持ち帰りを頼まねばだけど、どうだろう?
「……ぺぺ」
少し眠そうだが、ぺぺがポケットの中から出てきた。
「ぺぺ、甘い物だけど食べるか?」
「ぺぺ!」
ぺぺの目がかっと開く。どうやら甘い物の誘惑にぺぺも弱いらしい。
「お待たせしました!かき氷スペシャルです!」
目の前に、果物がたっぷり載ったお皿が置かれる。
……あれ、肝心の氷が入ってないぞ。
「あの、氷は……」
「今から魔法をかけます。ご一緒に言ってください」
「美味しくなーれ♡」
店員さんが笑顔で俺達のかけ声を待っている。
……これは。
店長!雑談のメイドカフェの話を採用したな!?
「……美味しくなーれ」「キュウキュウ」「ぺぺ」
「美味しくなーれ」
えーい!少し照れくさいけど復唱する。
エイダン真顔で言わないで!!
「美味しくなーれ♡」
「……美味しくなーれ」「キュウキュウ」「ぺぺ」
「美味しくなーれ」
氷魔法が発動し、お皿にサラサラの氷が降り積もる。
「キュウ」
「ぺぺ」
スカイとぺぺは不思議な光景に、目を見開いて喜んでいる。エイダンは真顔……でもちょっと喜んでる?
「どうだ!ビックリしただろ!」
ぬっと熊じゃなくて、店長が顔を出した。
「店長!はい、ビックリしました」
店長の顔にもビックリしたけど。
「お前の話を聞いて思いついたんだ。妻が妊娠したのもあって、店もてんてこ舞いでな。いっそのこと俺以外の氷魔法を使える子を雇って、その場で提供したらどうかなと」
「よく見つかりましたね」
氷魔法はレアっぽいけど。
「それが、募集をかけたらたくさん集まってな。人魚族に氷魔法持ちが多いらしい。しかも店だと威力はいらないから、集まりすぎて全員雇えなかったくらいだ」
人魚族に氷魔法持ちが多いのか……知らなかった。
「あと、おめでとうございます!奥さん体調はどうですか?」
「悪阻がひどくてダウンしてるが、かき氷は食べられてな。そういう意味でもスバルが教えてくれて、ありがたかったんだ」
悪阻の時はあっさりしたものが食べたくなるからな。
「俺もかき氷が食べられて幸せです」
「おう!今日は、俺のおごりだからたくさん食べていってくれ!」
店長太っ腹!!
「キュウ!」「ぺぺ!」
スカイとぺぺが待ちくたびれたのか抗議の声をあげる。
「おっと、悪い悪い。話し込んじまったな。シロップは何にする?今日はベリーとパイナップルの2種類あるぞ」
どうしよう、迷うな。
「店長、特権でハーフ&ハーフにしても良いですか?」
「何だそれ?」
俺は半分半分別の味にすることを説明する。
「お前いつも面白いこと思いつくな、店でもやっていいか?」
「もちろん!」
というわけで、俺達みんなハーフ&ハーフ味にしてもらった。前世のよりも甘さ控えめで、大変美味しかった。




