みーちゃんを探せ 3
というわけで、とりあえず孤児院にやって来た。
ぺぺの能力とスカイの反応を信じる。
みーちゃんはきっと孤児院にいる。(他に手掛かりが無いのもあるが……)
「院長先生、こんにちは」
「あら、スバルくんいらっしゃい」
院長先生はちょうど玄関の掃除をしていた。
「そう言えば、前回は依頼の件でバタバタしてお名前を伺ってなかったわね」
院長先生はスカイの目線までしゃがむ。
「お名前は何ていうの?」
「キュキュウ!」
スカイはしっかり手を挙げて返事をする。
「スカイです。それから護衛のエイダンと……」
エイダンも軽く頭を下げる。
「ぺぺ」
ぺぺもポケットから顔を出した。
「ぺぺです」
「まぁまぁ、きちんと挨拶できて偉いわね。私は、院長のリーンよ。よろしくね」
院長先生は笑顔で答えてくれる。
「院長先生、今日は聞きたいことがあって来ました」
「あら、何かしら?」
「実は猫を探していまして、この猫見たことがないですか?」
俺はイラストを院長先生に見せる。
「あら、この子最近シロの側にいる猫に似てるわね」
「シロ?」
「えぇ、孤児院の裏に居着いてしまった野良猫なんだけど、孤児院の皆が可愛いがっていてシロって呼んでるの」
「その猫の近くにこの猫がいるんですか?」
「この猫かは分からないけれど、似ているわね。……ただ、今は近づけないの」
「何でですか?」
「実はシロが妊娠していてもうすぐ赤ちゃんを産みそうなのよ。生まれるまでは皆でそっと見守るようにしてるの」
なんと!赤ちゃん。つまりみーちゃんは……
「みーちゃんはお父さんの可能性があると……」
「おそらく」
みーちゃんは雄だったのか。
「でもなぜスバルくんが猫を探しているの?」
「実は……」
俺は院長先生に事情を説明した。
「そうなのね。遠目でなら見られるけれど、何か特徴があるかしら」
「あります!ハートの模様!!」
「それなら、そっと見てみてみましょう」
そう言うと、院長先生は俺達をシロの近くまで案内してくれた。
白い猫が孤児院の裏の軒下の布の上に寝転がっている。その隣に確かにイラストに似た猫が寄り添っていた。
「似てるけど……ちょうど模様が見えないな」
残念ながら今いる位置からは模様が見れない。
「キュキュ!」
するとスカイが俺の裾を引っ張った。
「ぺぺ!」
ぺぺも俺を見つめてくる。
「模様の確認のために、雄猫だけ呼べるか?雌猫は赤ちゃんがいるらしいから刺激したくないんだ」
スカイとぺぺは大きく頷くと、ゆっくり猫たちに近づいた。すると寄り添っていたみーちゃんらしき猫が威嚇の声をあげる。
「シャー」
「キュキュキュウ」
「ぺぺぺ」
スカイとぺぺは落ち着いて声を掛けている。
「ニャー」
みーちゃんらしき猫に上手く思いが伝わったのかスカイとぺぺへの警戒を解いて、2匹の側に歩み寄ってきた。そして背中を向ける。
ある!ハートの模様!!
「キュキュキュウ!」
「ぺぺ!」
スカイとぺぺも確認できたのか、嬉しそうにこちらに戻って来た。
「よくやった!スカイとぺぺのおかげでみーちゃんを見つけることができたよ」
俺は2匹を抱っこする。
本当に賢くて可愛いモンスターである。
「キュキュ♪」
「ぺぺ♪」
2匹も嬉しそうに俺の顔に頬を寄せる。
「ふぉ――――!!」
……もふもふだ。
「確認できて良かったわね。飼い主さんに知らせてあげてちょうだい」
院長先生がニッコリと微笑む。
「はい!」
あとはアダムスさんに報告だな。
アダムスさんのお店に戻って説明する。
「まあ、みーちゃんがお父さんに!」
「はい」
「良かったわ。みーちゃんの無事が分かって」
アダムスさんは、涙ぐんでいる。
「……でも、しばらくはみーちゃん戻って来ないかもしれません」
「当たり前だろ、妊娠中の奥さんほっぽりだして戻って来たら、逆に絞めないといけないところだ」
アダムスさんの声が急に男性に戻る。
……ちょっと怖い。
スカイとぺぺも少し後退りしている。
「あら、ごめんなさい。それにしても本当にありがとう!依頼書にサインしたからお金を受けとってちょうだい!」
そう言うと、依頼書を渡してくれる。
「でも、まだアダムスさんは確認できていないので確認されてからで良いですよ?」
大丈夫だと思うけど、万が一間違っていてもいけないしな。
「大丈夫!これでも私、見る目はあるの!あなた達が嘘ついてないことは分かるわ。みーちゃんには仕事終わりに会いに行ってみるわ」
そう言って、アダムスさんは大きな笑みを浮かべる。
「スカイちゃん、ぺぺちゃんもありがとう!2匹を見てたら新しい商品のインスピレーションが湧いてきたわ!また良かったら遊びに来てちょうだい。もちろんスバルちゃんとエイダンちゃんもいつでも来てね♡」
ウインクを投げてきた。
……うっ。
でも悪い人じゃないんだよな。
「キュキュ!」「ぺぺ!」
スカイとぺぺは大きく手を挙げている。
エイダンもこくりと頷いた。
「……また来ます」
とにかく、任務完了!
やったぞ――――!!!




