みーちゃんを探せ 1
例のごとくオリビアさんが地図を書いてくれ、アダムス商会へやって来た。アダムス商会は大通りから一本入った閑静な住宅街の中にあった。オリビアさんに聞いたところ、雑貨屋さんらしく可愛らしい小物を取りそろえているということで若い女子に人気のお店らしい。
あとオリビアさんからはビックリしないようにという謎の伝言も伝えられていた。ビックリする何かがあるんだろうか……。
確かにディスプレイに可愛らしい小物が並んでおり、男子には少し敷居が高い。
いや、俺には可愛らしい代表スカイとぺぺ(ポケットの中で昼寝中)がいる。
思い切って、ドアを開けた。
カランカラン
軽やかなベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
おや?
……想像していた声と違う。
若い女性の声ではなく、どちらかと言うと少し野太い男性の声のような……。
「どんな商品をお探しですか?」
現れたのは可愛らしい服装をしたいかつい男性?女性だった。パンチの効いた姿に少し驚くが、前世ではテレビで見たことがある。
「あの、冒険者ギルドから依頼を受けて来ました」
「まぁ、みーちゃんを探してくれるのね」
感極まったのか、俺の手を握ってくる。近くで見ると喉仏が……。
「ありがとう、本当にありがとう。いなくなってもう4日目になるのよ。手掛かりもなくて……私のたった1人の大切な家族なの」
単純かもしれないけど、動物好きに悪い人はいないというのが俺の前世からの考えだ。この人、見かけはパンチがきいてるけど、猫を家族と呼び、高いお金を払ってまで探しているから良い人なんだろうな。
だからこそみーちゃんを見つけてあげたい。
「俺が見つけれるかどうか分かりませんが、俺のテイムモンスターのスカイがこの依頼を勧めてきたんです。俺達でできるところまでやってみます」
「キュウ!」
スカイも手を挙げて返事をする。やる気だ。
「まぁ、スカイちゃんが勧めてくれたの!本当にありがとう。私はアダムス。このお店の店長を務めてるわ」
「俺はスバル、こっちのテイムモンスターがスカイ、あとエイダン、それに……」
ぺぺはまだ昼寝中かな?スカイのポケットを見ると、ぺぺが顔を出してこちらを見ている。
「ポケットにいるのがテイムモンスターのぺぺです」
「ぺぺ!」
ぺぺも軽く手を挙げる。
「スカイちゃんもぺぺちゃんも、とっても可愛らしいわね♡あと、エイダン……あなたできるわね」
その言葉にエイダンはこくりと頷く。
「また、時間があればご一緒しましょう♡」
エイダンはもう一度頷く。やはり、この店長もただ者ではないのかも。
「それじゃあ、みーちゃんについてと、いなくなった状況について教えてもらえますか?」
まずは、情報収集だな。
「みーちゃんはこの子よ」
イラストを見せてくれる。そこには白い毛で、グレーのシマが入ったふわふわのハチワレ猫が描かれていた。 背中のハートの模様が特徴的である。
「家の看板猫で、たまにふらっと外に出かける日もあったんだけど、必ず夕方には帰って来てたのが4日前から帰って来ないの」
「なるほど。みーちゃんはハートの模様が特徴で4日前お店から出て行ったきり、行方が分からないであってますか?」
「ええ」
猫は帰巣本能が強くないって言うけど、みーちゃんはそれまでちゃんと帰って来てるから、やっぱり何か事件か事故に巻き込まれたのかな。
ただ単に迷子だと良いんだけど。
「あと、みーちゃんがいなくなる前に何かいつもと変わった行動などありませんでしたか?」
探偵がよく聞いてたよな。
「……そうね。特には……いつもより、今週はよく外に出かけていた気はするけど」
「普段はあまり出ないんですか?」
「毎日出ることはほとんどないわ。でも今週は毎日出かけていた気がする……それくらいかしら」
みーちゃんは何の用で出かけていたのかがカギだな。
「このイラスト借りても良いですか?」
「もちろん!」
「では、とりあえず探しに行ってきます」
「ありがとう。本当によろしくお願いします」
「キュキュ!」
「ぺぺ!」
どうやら、2匹もかなりやる気らしい。
無事に見つかりますように。




