護衛依頼
「そうだろ、そうだろ。嬉しいよな」
いや、嬉しいような嬉しくないような……。
皆の顔も微妙そうな表情である。
「でだ、まだ、やったことのない依頼は何か考えて今回は護衛依頼を引き受けた」
「護衛依頼?」
それは危険度が高いのでは……。
俺達町の外には出られないし。
「ああ、と言っても護衛するのは孤児院の子供たちだ」
「子ども?」
「そうだ、護衛と言っても種類はいろいろある。今回はメーシープ牧場へ6人が羊毛の刈り取り体験に行く護衛を頼まれた」
メーシープ牧場は町を出て少ししたところにある大きな牧場だ。メーシープはもとはモンスターだが、もともと性格も大人しく、飼い慣らすことに成功していた。メーシープからとれる羊毛はふわふわで肌触りもよく人気が高い。
「毎年、職業体験の一環で裁縫に興味のある子を連れて行ってるんだが、いつもなら護衛を引き受けてくれる騎士団がいなくてな。お前たちにお願いしたい」
町から出ると言っても、辺境伯家へ続く大通りのある道だし、町から歩いて10分くらいなもんだから、母もおそらくオッケーするように思う。
「念のために、母様に確認していいですか?」
先日叱られたばかりだから、町の外に出るなら許可をもらっておこう。
「その必要はない。依頼主は辺境伯夫人だ。いつもボランティアで騎士団を寄越してくれてるんだが、その代わりにお前たちに依頼が来た。報酬は1人につき銀貨1枚だ」
母からの依頼なら言うことはない。しかも報酬も結構高額である。
「騎士団が護衛するということは何か、危険があるんですか?」
分からないことは聞く。ケインは、ジェーンさんの言葉を実践してるな。
「おう。めちゃめちゃ危険度が高い……迷子のな。初めて町の外に出る子供が多いから目を離すとすぐにどっか行ってしまう」
なるほど、別の意味で危険なんだな。
「その他に危険なことはありますか?」
フェレナが続けて確認する。
「……そうだな、たまにスライムが出ることがあるな」
スライムなら、何とかなるな。
「あとは、子供たちの年齢と、持ち物と何か気を付けておくことがありますか?」
俺も気になることは聞いておこう。
「子供は全員7歳だ。持ち物は弁当と飲み物、あとは子供の体調をよくみておいて欲しい」
子供によっては体力がない子もいるかもしれないもんな。
「分かりました。ちなみに今日ですか?」
「いや、明日8時に孤児院集合だ」
ふむ。今日1日空いてしまったな。
「じゃあ今日は?」
「奉仕系の依頼を引き受けたら良い。ただ、俺は今日はギルドから動けん」
ということは無理なくできる仕事を引き受けたら良いな。
「あたしとフェレナは解体の仕事の見学と手伝いに行くわ」
姉が言う。
「はい。昨日解体を練習してコツをつかんだように思います。忘れないうちに反復練習しておかないと」
昨日の晩御飯は2人が解体したであろうツノウサギが大量にあったため肉祭りだった。昼もバーベキューだったために少し胃もたれぎみである。
「僕とハイドは宿屋の依頼を引き受けるよ」
ハイドとケインは、安定の宿屋か。俺はせっかくなら、何か別のことしたいな。
「俺は依頼表から探して良い?今日もおのおの依頼を受けるということで。夕方集合で晩御飯一緒に食べよう」
「「「「了解!」」」」
「話がまとまったようだな。後は、昨日のワイバーンの素材の報酬だが、大量にあり売れるまで少し時間がかかるが大丈夫か?」
「「「「「はい」」」」」
取り立ててお金が必要なことは今はない。
「じゃあ、スバルは依頼が決まったら念のために俺に見せに来い。じゃあ、解散!」
ギルド長の声で、皆その場を後にした。
「じゃあスバルまた後で」
「あんまり難しい依頼は引き受けるんじゃないわよ」
当たり前だ。俺は安心安全第一の男である。皆と別れて依頼表を探しに行った。




