神殿へGO 4
そしていよいよ俺の番だ。
「神官長、俺のことも鑑定してもらえますか?」
魔法について、何か糸口がつかみたい。
「鑑定とな……まだスバル様が受けるのは早すぎる気がするが……」
神官長はやはり年齢を気にするよな。
「俺、弱いんです。スカイやぺぺなど結構珍しいモンスターをテイムしているわりに、自分自身の力は何もなくて、迷った末に冒険者ギルドで鑑定を受けました」
そう。実は鑑定はもう済ませている。
「鑑定して、才能に無魔法と出たんですが、全く魔法が使えずにどうすれば良いか悩んでいて……神官長の上級鑑定なら何か分かるかもと思いお願いしました」
鑑定してから2カ月以上経つが全く魔法は使えない。
「お願いします」
俺は深々と頭を下げた。つられてスカイとぺぺ、なぜかエイダンも頭を下げる。
「……分かりました。すでに鑑定を受けられておるなら、わしが鑑定しても大差はなかろう」
「ありがとうございます」
よし!……何か分かると良いけど。
「ではスバル様、わしの前へ」
俺は神官長の前に進み目を閉じる。
「……鑑定、転写」
渡された紙を見る。
スバル=クリスチャン=バード
人族 スキル テイマー 才能 無魔法 死神の愛し子
テイムモンスター スカイ ぺぺ
チーム セブン リーダー
死神のお言葉 神に祈りなさい
死神……。親切だな。
「ほっほっほ。やはり神に愛されとるの、これでわしへの依頼は終わりかの?」
「はい。ありがとうございました」
俺たちは、もう一度深々頭を下げる。
「困ったことがあればいつでも来るが良い。神の愛し子に幸があらんことを。わしはそろそろ行くが、そなたは、心ゆくまで祈ってから帰ると良い」
そう言うと、神官長は講堂から出て行った。
よし、祈ろう。
祈り方を聞き忘れたが、こういうのは気持ちが大事だ。たぶん。
何となく前世でしていたように、パンパンと手を叩き、頭を下げる。
神様、いろいろ本当にありがとうございます。そう祈った瞬間、意識が朦朧とし、目の前が暗転した。
真っ暗な空間が広がっている。
誰もいない。俺一人だけだ。
ここは……そうか、死後の世界?
俺は死んだのか……?
「死んでませんよ」
「うわぁ!」
目の前に急に光が表れびっくりする。
「驚くほど同じ反応ですね、ご無沙汰してます」
「あ、お久しぶりです」
「本当にご無沙汰です!あれだけ私の痕跡を残しておいたのに、全然祈りに来ないんですから!!」
死神はどうやらなかなか祈りに来なかったのを怒っているらしい。光がチカチカ点滅している。
「……すみません」
俺は慌てて頭を下げた。
「ま、良いでしょう。時間が無いので手短にいきますね」
「はい」
何の話だろう。俺は息を飲む。
「実は……あなたを転生させる時に魔法器官を作り忘れてました。今作ったのでこれからは魔法が使えます。以上!」
「えっ?」
じゃあ今まで努力したのは無駄ってこと?(そんなにしてないけど)死神のやらかしってこと?
「えぇ――!!」
「その代わりちゃんとエイダンとぺぺというモンスターも授けたでしょう……エイダンは死ぬのが惜しかったし、ぺぺは他の神に殺されるなんて可哀想だから何とかしてくれと頼まれたのもありますが」
その話気になる。
「エイダンとぺぺって……」「あっ、もう時間です」
「次会うのは死ぬときですかね!ま、良ければ祈りに来ればアドバイスなどあげられる……かもしれません!」
「まだ、話が聞き……」
「では、良き人生を!」
光が大きく膨らむ。
死神!!エイダンとぺぺの話くらい聞かせてくれ――!
そのまま俺は光の渦にのまれた。
目を開けると、ぺぺとスカイが俺の顔を覗き込んでいた。
「ぺぺ」
「キュウ」
2匹が顔を寄せてくる。どうやら心配してくれていたらしい。
「エイダン、俺どのくらい倒れてた?」
「2分と35秒です」
正確だな。
倒れてから時間計っていたのか?
「俺どうなったの?」
「祈った瞬間光に包まれて倒れた」
なるほど。神に呼ばれるとそうなるんだな。
「……エイダン、今、幸せか?」
エイダンは困った表情をする。
「……幸せとは?」
そうか、そこからだよな。
「いや、一緒にいろいろしような」
エイダンについては分からなかったけど、ま、いろいろな経験を積むのが大切だよな。
「スカイ、ぺぺお前たちは幸せか?」
「キュウ!」
「ぺぺ!」
2匹は嬉しそうに飛びついてくる。
可愛い。本当に癒される。
1人と2匹授かった俺は今幸せだもんな。
ま、やらかしは帳消しということで。
死神様、本当にありがとうございました。
俺は、主神の像に祈ると、講堂を後にした。




