冒険者デビュー21(討伐を終えて 2)
「ギルド長から伺っています。桃を再鑑定すれば良いのですね」
「はい」
桃自体に変化があるのかどうか、よく分からないからな。
「スカイ、今日冒険者に配った桃って残ってるか?」
「キュキュ!」
スカイがポケットから桃を出す。
「それでは鑑定しますね。……鑑定、転写。スバル様こちらをどうぞ」
桃 効果 傷を治す(中級ポーションとほぼ同じ効果) 美味 価値 銀貨1枚と5銅貨
初級から中級にランクアップしてる。毎日出してもらってたから魔法が成長したのかな。
「スカイ、この桃中級だって!すごいな!!」
「キュキュウ」
俺は、スカイの頭を撫でた。スカイも嬉しそうに飛び跳ねている。でも、初級の桃も出せるのかな。
「スカイ、前の初級の桃も出せるか?」
「キュウ!」
スカイはもう一度ポケットから桃を出す。
「オリビアさん、もう一度鑑定してもらっても良いですか」
「はい。……鑑定、転写」
もう一度紙を渡される。
桃 効果 少し傷を治す(初級ポーションとほぼ同じ効果) 美味 価値 銅貨6枚
「初級と中級、2つの桃が生成できるようになったんだな」
二つの桃を比べてみる。形や色は同じだが中級の方が一回り小さい。売るときに気を付けないとな。
スカイは順調に成長している。
……それに比べて俺は……。
今日だって俺だけ何もできなかったし……。
いかんいかん。暗くなるのは俺らしくないからな。
「中級の桃も買い取りますか?」
オリビアさんの言葉で現実に戻ってくる。
「どのくらい作れるか、確認してからでも良いですか」
「もちろんです」
また、スカイといろいろ確認しよう。
「……あとは、ぺぺさんに関することです」
そうだ、ぺぺ。バタバタしててぺぺのことをすっかり忘れていた。
「ぺぺ、起きてるか?出てきて良いぞ」
ぺぺはよいしょとスカイのお腹の中から出てきた。
「ぺぺ、1日スカイの中にいたけど大丈夫だったか?」
「ぺぺ!」
元気に頷くようすを見ると、居心地も良さそうである。
「そのぺぺさんを木箱に入れていた連中ですが、昨日深夜に部屋に入ったところで確保されました」
良かった。これでぺぺのことで進展があるかもしれない。
「それで、ぺぺのことは……」
「それが、どうやらその連中も豪華な馬車を襲って中の物を奪ったようで、その盗品の一つにあの卵があり、中身が何かは知らなかったようです」
「もともと、卵を所持していた人は?」
「残念ながら……」
オリビアさんは首を横に振る。
ということは、ぺぺの手がかりは今のところなしということだな。
「事情が事情ですので、スバル様を正式なマスターに認めるとギルド長から承っています」
「そうですか……」
良かったのかは分からないけど、これで正式にぺぺは俺のテイムモンスターだな。
「ぺぺ、改めてよろしくな」
「ぺぺ」
ぺぺを抱っこすると、目つきは相変わらず悪いが、嫌がらずに顔を寄せてくる。
「ふぉー――」
可愛いモンスターが増えたな。また、ぺぺの能力も確かめないとな。
「話は以上です。……これは余談ですが……スバル様。焦る必要はありません」
オリビアさんが真剣な眼差しでこちらを見る。
「チームセブンの皆様はスバル様のことを信頼されております。力の面ではなく、心の面で。ですので、今ご自身ができることを精一杯されることが大切だと思います」
なんとなく心のモヤがスッと消えた気がした。
……そうだな、俺は俺以上にはなれないもんな。
オリビアさん、きっと俺がくよくよ悩んでいるのに気づいてくれたんだな。
……いろいろな人に支えられて、本当にありがたい。
きっと、同じことで何度も悩むだろうけど、俺が今できることをしていこう。
「……ありがとうございます」
オリビアさんはにっこりほほ笑んでくれた。
「いえ、それに、テイムモンスターの力もご自身の力ですよ」
抱っこしているぺぺ、俺の服を掴んでいるスカイ。2匹も大きく頷く。
「ぺぺ!」
「キュウ!」
「……そうだよな。俺はお前たちを立派に育ててみせる」
安心安全から遠ざかっている気もしないではないが、頑張ろう!!
「後は良かったら、神殿を訪ねてみてはどうでしょう。ぺぺさんについてや、スバル様の魔法について、何か分かることがあるかもしれません」
そういやしばらく神殿に行ってなかったな。ちょうど休みにもなるし、また行ってみるか。
「はい、本当にありがとうございました」
俺は深々頭を下げると、みんなの元へ急いだ。




