冒険者デビュー18(採取依頼 2)
あらかたスライムを狩り終えて、次はいよいよ薬草採取である。索敵もしてもらい、見える範囲はモンスターの反応はなくなった。ちなみにツノウサギには今のところ遭遇していない。
「ツノウサギは昨日、ステファニーさんとフェレナさんがたくさん狩りすぎたのかもしれませんね。今日は一匹も遭遇しません」
おいおい。どんだけ狩ったんだ。姉さんたち。
「大丈夫なんですか?」
生態系とか、大丈夫だろうか。
「狩りすぎのことですか?ツノウサギは繁殖力が高いのでおそらく2〜3日すればもとのように出会うようになります」
ツノウサギの繁殖力もすごいな。
「キズナズナ草ですが、こういった開けた場所によく生えています。探してみましょう」
「確かキズナズナ草は葉の裏に斑点があるんだよな」
「はい、一応僕が書いたイラストがこれです。参考にしてください」
ケインがメモ帳を見せてくれる。
「じゃあ、皆手袋とスコップは持った?できるだけ根っこから薬草は採取すること、じゃあ……」
俺が号令をかけようとすると、ジェーン先生から待ったがかかった。
「採取中は夢中になりすぎて奥に行くことがあります。必ずペアで動いてください。あとは、私が見える範囲で行動してくださいね。また、何か緊急の時は迷わず笛を吹いてください」
「「「「「はい」」」」」
昨日と同じペアで動くことにする。
「では、始めよう!」
「「「「「おー!」」」」」
とりあえずスカイとエイダンと一緒に俺は行動だな。ちなみにぺぺはスカイのお腹の中でお昼寝中である。
「スカイ、見つかったら声をかけてくれるか?」
「キュキュ!」
「じゃあ、俺たちも探そう」
全部同じ薬草に見えるが、よく見れば、少しずつ形が違う。昨日も見たキズナズナ草だな。これは……斑点が表だからドクナズナ草だな。
「キュキュ!!」
おっ、スカイが見つけたか。
スカイが指さす薬草を見ると、裏に斑点がある。確かにキズナズナ草である。
「すごいぞ、スカイ。じゃあスコップで根っこまで掘ろう」
スカイはスコップを上手に使い、綺麗に根まで掘れたキズナズナ草がゲットできた。この調子で探していこう。エイダンを見ると無言で黙々掘っている。アイテム袋に入れているので、結構見つけているのかもしれない。俺も負けてられないな。モンスターの狩りは無理でも、採取はできるようになりたい。
「うーん、葉の裏の斑点か……難しい」
そう。ドクナズナ草はすぐに見つかるのに、キズナズナ草はなかなか見つからない。
「何か生えてる場所に法則性とかないのかな……」
太陽がよく当たる場所って言っても、ここなら開けてるからどこも日当たりが良いしな。
「地道に探すしかないか」
目を凝らして、葉を観察する。
「……あった!!」
葉の裏に斑点がある。よし、これを掘って1本ゲットだ!
ピーーーッ
掘ろうとした時甲高い音が響いた。
この音は緊急の笛!!
「エイダン、スカイ、いるか?」
「キュキュ」「はい」
近くにエイダンとスカイはいる。
「ジェーンさんのところに戻ろう」
少し離れたところで待機しているジェーンさんのもとに急いだ。
「ジェーンさん、今の笛!!」
ジェーンさんのもとには俺たち以外の皆が集まっていた。となると、笛を吹いたのは俺たちじゃない?
「はい、おそらく森の中からの緊急要請です。申し訳ありませんが、私は救助に向かうので皆さんは一度ギルドに戻り、このことをギルド職員にお伝えしてもらえますか」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちがついていっても足手まといになるだけである。ここは一時退却。俺たちがジェーンさんと、別行動しようと動きかけた時、森から叫び声がした。
「ワイバーンが来る!!!」
声とともに何人もの冒険者がこちらに走って来ていた。
空を見ると遠くの空に黒い影が見えた。1、2、3、4。
4匹もいる。
「あれは……ワイバーンですね」
マジか。父さんたちが討伐しているモンスターが何でこんなところに。
「おそらく、騎士団の取りこぼしでしょう」
父さん!!マジで頼むよ!!
「このままじゃ、街に行ってしまう」
「到達まで時間も無い」
姉とフェレナは空を睨みつけながら言う。
「……仕方がありませんね。ここで食い止めましょう」
ジェーンさんは、あっさり方針を変えた。
「俺たち足手まといじゃないですか?」
「街に逃げても同じです。……それに皆さんなら実力もあるので何とかなるかもしれません」
確かに、ここで襲われるのも街で襲われるのも同じか。むしろジェーンさんがいるだけ、ここの方が安全かもしれない。
「どうしたら良いですか?」
姉とフェレナが聞く。
「ステファニーさんは槍でワイバーンの羽を狙えますか?」
「はい!」
「フェレナさんは落ちたワイバーンを仕留めてください」
「分かりました」
「エイダンさん1匹、いけますか?」
「了解した」
「ケインさんハイドさんスバルさんは、離れたところで待機しておいてください」
「「「はい!」」」
俺たちは離れたところからできることを考えよう。
「俺たちも加勢するぜ」
森からでてきた冒険者の一部がジェーンさんのもとに集まった。
「俺たちはシルバーランクだ。力を合わせれば1匹くらいなら仕留められる」
「それでは、一匹お願いします。ワイバーンは落ちても、火を吐きます。正面に回らないよう気を付けてください」
即席でワイバーン討伐隊が組まれる。影はどんどん近づいてくる。
「あと5分ほどでここに到達します。先頭のワイバーンは私が倒します。次をエイダンさん、その次をステファニーさんとフェレナさん、最後の一匹を冒険者の皆さんでお願いします」
「「はい!」」「「「「「「「おう!!」」」」」」」
ワイバーンは1匹仕留めるのにも、本来実力者数十人でかかる相手である。本当にこの人数でいけるのか、不安も正直あるが、ジェーンさん、姉、フェレナ、エイダンがいれば何とかなる気がしてくる。
「スバルさんたちは下がってください!!」
俺たちは急いでみんなから距離をとる。
「念の為俺とケインでシールド張るから、スバルとスカイは後に!!」
ハイドとケインが俺とスカイの前に立つ。
「来るぞ!!」
戦いの火蓋が切られた。




