冒険者デビュー17(採取依頼 1)
次の日朝起きると顔を黒い何かが覆っていた。
「うわぁ」
慌てて起きると、黒い物体も布団の方に転がる。
「……ぺぺ」
そうか、ぺぺか。でも昨日はバスケットに入れていたのに何で俺の顔の上にいるんだ。
「……キュキュウ」
スカイも隣で起きる気配がする。昨日1日でモフモフ度が増したな。
「キュキュ」
スカイがバスケットをポケットに入れ、ぺぺもポケットに入れる。ぺぺはポケットから顔だけ出した。まるでカンガルーの親子のようである。
「ぺぺ」
何いってるか分からないが、スカイとぺぺはやはり仲良しのようである。2匹のやりとりは微笑ましい。
「スバル、起きなさい!って珍しく起きてるわね」
姉とルリアがいつものように部屋に入ってきた。
「スバル様、素晴らしいです!この調子でいつも早く起きてくださいね」
ルリアは満面の笑みを浮かべている。
「スカイのお腹に入っているのが、ぺぺね。私はステファニー、スバルの姉よ」
「私はメイドのルリアです。よろしくお願いします」
「ぺぺ!」
2人が声をかけると、ぺぺもそれに答えるよう反応する。やはり、スカイと同じで知能が高そうである。姉たちには昨日母に話すついでに一緒に話を聞いてもらったので、ぺぺについても問題無しである。
「スバル、早く準備して降りてらっしゃい。フェレナには先に馬車に荷物を積んでもらってるから」
「スバル様、こちらに今日のお召し物を置いておきますね。あと、朝ご飯を包んでもらってますから馬車の中でお食べください。スカイ様とぺぺ様の分もあります。気を付けて行ってらしてください」
「キュキュウ」
朝ご飯と聞き、スカイが嬉しそうに飛び跳ねる。ポケットの中のぺぺも何だか嬉しそうである。(目つきは悪いが)
ルリアから服を受け取ると急いで着替えて馬車に乗り込んだ。早起きしたと言えども、いつもに比べてなので、姉やフェレナには勝てない。
今日はいよいよ初心者の森だ。頑張らないとな。
というわけで、やって来ました。初心者の森。
今日も依頼のキズナズナ草の採取を受付し、皆で森へと足を運んだ。
森と言っているが、木が生い茂っているのはまだ、大分奥の方で、目の前には広い野原が広がっていた。草は生えているが、そんなに背丈も高くなく、見晴らしも良い。これならモンスターがいても、気づけそうである。
「ケインさん、念の為索敵してもらえますか?」
ケインの索敵は常時発動はまだ難しいらしく、敵がいそうなタイミングで索敵魔法をかけるようにすることになっている。今日はジェーンさんがいるので、指示を仰ぐ。
「はい……右前方に弱いモンスターの反応が3つあります」
「ステファニーさん、どんな魔物がいるか分かりますか?」
「はい!ツノウサギは単独行動だから、集まっているならスライムです」
姉がすらすら答える。さすが、昨日半日狩りをしただけあるな。
「フェレナさん、どうやって倒しましょう?」
「スライムはこちらから攻撃を仕掛けないと、攻撃してこないので、同じタイミングで3匹に攻撃を仕掛けると良いと思います」
フェレナもさすがである。
「ではさっそく、ハイドさん、ケインさん、エイダンさんで倒してみましょう」
良かった、俺は戦力外と見なされているな。
「「はい!」」
ハイドとケインは気合い十分である。エイダンもこくりと頷く。
「同じタイミングか……一度あの岩で練習してみる?」
俺は敵と反対にある大きな岩を指さす。
ハイドは弓、ケインは魔法、エイダンはおそらく剣である。
「3数えるから、0になったら攻撃してくれる?」
「「了解」」
エイダンもこくりと頷く。
「3、2、1、0」
ハイドが弓を放ち、ケインがウォーターボールの魔法を放ち、エイダンが飛ぶ。その間俺は数をカウントする。
エイダンが0。
ハイドが2。
ケインが3。
「誤差3秒くらいなら大丈夫だろ。もし、合わせるならカウント5にして、ケインが3でハイドが2でエイダンが0のタイミングかな。同じくらいの距離なら」
「せっかくなので同時を狙ってみますか」
「おう!」
エイダンも頷く。
少し進むと、スライムの姿が見えてきた。3匹ちょうど横に並んでいる。
「ここがさっきと同じ距離」
エイダンがつぶやく。なぜ分かるのか疑問だが、おそらくエイダンが言うことに間違いはない。
「じゃあ、やってみようか。ケインが右、ハイドが真ん中、エイダンが左で、準備は良い?」
「はい」「おう」こくり。
「5、4、3、2、1、0」
それぞれが自分のカウントで攻撃する。
見事3匹同時にあたり、そのままスライムは倒れた。スライムの倒れた後は黒い丸いものと水たまりが広がっている。
「やった!」
「やりましたね」
ハイドとケインは初のモンスター討伐である。
2人でハイタッチして本当に嬉しそうだ。
俺もできることをしないとな。
「ジェーンさん、スライムの解体はどうすれば良いんですか?」
解体……もうされてる気もするが。
「見てのとうり、スライムに解体の必要はありません。核とジェルを拾えば終わりです」
ジェル、どうやって集めるんだろう。
「先生、ジェルはどうやって集めるんですか?」
「スライ厶膜で包んでくくります。やってみますね」
ジェーン先生は倒れたスライムを持ち上げるとそのまま風呂敷を包むように上でくくった。
「なるほど、膜の上にジェルが乗ってるから、一回り小ぶりのスライムを作るイメージだな」
さっそく俺とスカイでやってみる。
俺も、スカイも少しジェルがこぼれたがまーまー上手にくくることができた。
「これで大丈夫ですか?」
「はい。では同じようにスライムを何体か狩りましょう。先ほどはタイミングを合わせましたが、だいたい合っていればスライムが攻撃してくる時間はありませんので、次は見つけたらすぐに攻撃してみましょう。フェレナさんとステファニーさんもスライムを探して倒してみてください。2人はそれぞれが10体倒したら戻ってきてください」
やっぱスライム相手に連携はいらなかったか。
その後、皆順調にスライムを倒した。俺とスカイもミニスライムを作るのが上手くなった。
投稿して2週間がたちました。読んでいただける方が少しずつ増え、本当にありがたいなと思っています。ついに書きだめたストックが切れたので今週から、更新頻度が朝の7時頃、夕方の18時頃の2度になります。よろしくお願いします。また、書く励みになりますのでブックマークを良かったら登録してもらえると、嬉しいです。よろしくお願いします。※日曜日はたくさん更新予定です!




