初めてのゲット3(人)
神殿に着くと、正面に大きな大木があった。
「きっと、この木よ」
「この木に間違いありません」
「この木だな」
とりあえず掘ってみたいのだが、人様の家の前を勝手に掘ってトラブルになるのは避けたい。
「神官様に聞いてみるか」
とりあえず、許可をとりに神殿に入る。
「あれ?この間の…………」
目の前に見覚えのある銀髪の美少女の姿があった。
「どちら様ですか?」
「スバル!!何、可愛いからって、声かけてんのよ」
「スバル様、見知らぬ方に知ったふうに声をかけ、そこから仲良くなろうなど、お母様が知ったらどれほどお嘆きになるか…………」
いや、いや、いや。俺どんだけ信用ないねん。
「天昇式が同じ日だったんだよ!!」
俺はよく覚えている。
可愛いかったからではなく、彼女のスキルが特殊だったからだ。
そう、確か「剣聖」。
戦闘系の上位スキルだ。
まっ、可愛いかったのは否定しないが。
彼女は顔色を変えた。
「言わないでください!!」
顔は青ざめ、泣きそうな顔である。
確か、彼女剣聖を嫌がってたな……。
「もちろん、言わないから大丈夫」
俺は紳士だ。女の子の嫌がることはしない。
「スバル、あんた何か、彼女の弱みでも握っているの?」
「スバル様、女の子の弱みに付け込んで、あんなことや、こんなことをしようなど、男の風上にも置けません!!」
いや、いや、いや。俺への誤解がドンドン広がってくな。
特にルリア!あんなことやこんなことなど、俺はお前にとってどんな人間なんだ!!
「何を騒いでおるのじゃ」
お爺ちゃん神官様、良いところに!!
「すみません、この間天昇式を受けた、スバル=クリスチャン=バードです。」
「神官様、お騒がせをしてしまい、大変申し訳ありません」
銀髪の美少女が俺の方を向く。
「天昇式の日は自分自身のことでいっぱいいっぱいで、他の方のことはあまり覚えておらず失礼しました。セルフィン男爵が娘、フェレナ=アルマイヤ=セルフィンと申します」
「こちらこそ、辺境伯の次男でスバル=クリスチャン=バードです。急に話しかけてすみませんでした」
「おおっ、先日の…………。二人とも、今日はどのようなご用件かな?」
「神託の件でご相談したいことがあり、参りました」
そう!忘れてはならない。
俺は、穴掘りの許可をとりに来たのだ。
ナンパしに来たわけでは決してない。
「神託に従い家の前の木の下を掘ってみたのですが、全く何も見つからず、もしや家とは神殿のことを指してるのではないかと推察し、神殿の前の木の下を掘る許可をいただけないかと」
「おおっ、そうであったか。もちろん許可しよう」
「ありがとうございます!」
よっしゃー!許可が出た!さっそく掘りに行くぞ!
「私もまた、お話を聞いていただけたらと思い参りました」
「フェレナよ、もしかしたらこれも神様の思し召しかもしれぬ。お前の困りごと、辺境伯家なら何とかなるやもしれぬ。相談してみてはどうじゃ?」
「どうしたの?何か困ったことがあるなら、あたしが解決したげるわよ!」
また、姉さん。勝手なこと言って。
絶対俺が巻き込まれるに決まっている。
これは、一時撤退だな。
「俺、先に木の下に行ってるね」
先に進もうとすると、ガシッと姉が俺の腕を掴んできた。
「何、言ってんのよ!女の子が困ってんのよ!こっちが優先に決まってるでしょう」
いや、いや、いや。さっきまで俺のことさんざんナンパ野郎と馬鹿にしていたのでは……。
「実は私は男爵家の庶子で、男爵様とメイドの母の娘として生まれました」
はい。始まってしまった―――!!
「もしかして、虐げられているの?」
「いいえ。実子の方のようには育てていただけませんが、暮らしていくぶんには困っておりません。また、長女のレスティア様がお優しい方で、私が困っていればいつも助けてくださいます。」
「うん?じゃあ何で困っているの?」
「実は父が実力主義で、次の当主は武力が一番強い者に譲ると昔から明言しておりまして…………」
「もしかして、当主になりたいの?」
彼女のスキルは剣聖。当主にぴったりだが、彼女は嫌がっていたな……。
「いえ、その逆で、当主にだけはなりたくないのです」
「何で?きっと庶子と馬鹿にする奴らもいるでしょ?そいつらをギャフンと言わせたら良いじゃない」
……ギャフン。古いな……。
「私を馬鹿にする兄弟はどうでも良いのですが、私に優しくしてくださるレスティア様が血の滲むような努力をされて、現在次期当主と目されているのです」
「うん?ますますよく分からないわね。あなたに優しいお姉さんが当主になればあなたも困ることはないと思うけれど…………」
「…………そうか、逆なんだな」
「…………はい」
俺には彼女の悩みが分かった。
「どういうこと?」
「俺からは詳しく言えないけれど…………」
さっき約束したばかりだからな。
「具体的には言えませんが、私が授かったスキルが、戦闘系スキルの上位種だったのです」
「お姉さんのスキルは?」
「剣術です」
「普通のスキルなのね。…………だから、逆なのね!」
「はい、もし私が授かったスキルのことを父に知られると、私に当主になれと言いかねません」
「…………うーん。どうしたら良いのかしら。お姉さんを裏切りたくないのはよく分かるし…………良かったら家に来る?」
また、姉が突拍子もないことを言い出した。
「辺境伯家へですか?」
「そう!案外良い案かも!行儀見習いとして、いらっしゃいよ!」
「ですが、私は教育をあまり受けておらず……辺境伯家で働くには実力不足かと……」
「いいのいいの、私もどちらかと言えば勉強は苦手だから、一緒にやってもらえたら嬉しいし、何よりスキルが戦闘系上位種でしょ?切磋琢磨できるライバルがいると力が伸びるのよね」
姉よ、本音がだだ漏れである。
「本当に行ってもよろしいのですか?」
「もちろん!ただ一緒に訓練はしてもらうわよ」
「はい!もちろんです!ありがとうございます!」
「家でやって行けそうなら、男爵家と縁を切って騎士団に入っても良いし。……好きなんでしょう?」
「…………はい。…………やはり分かりますか?」
…………えっ?
どういうこと。
全然そんなそぶりなかったけど、もしかして俺のことが……
「分かるわよ」
もしかして、ワンチャンあるかも!?
「剣術が好きってことは」
ガクッ。
…………ま、そうだよな。俺モテないし。
「私はステファニー、これからよろしくね!」
「はい!どうぞよろしくお願いします」
2人は堅い握手を交わしている。
「…………ねぇ、俺って必要?」




