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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
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冒険者デビュー13(宿屋とまり木 3)


 俺は真っ青になり、冷や汗が流れてきた。

 

 マズイマズイマズイ

 

 女将さんに、最初にお客様の物には触らないようにって言われてたのに……いや、待てよ、テイムしたのは故意じゃないし……でも、人様の物を勝手に自分の物にしたらそれは泥棒と同じだよな……いや、俺ではなくぺぺの意思でテイムモンスターになったんだから、責任はぺぺにあるのでは……

 

 頭の中にいろいろな考えが浮かんでくる。

 

 これって、依頼失敗になるのかな……そしたら皆に迷惑かけるし、ペナルティも発生するし……


 あ――もう、どうすれば良いんだ!!!


 俺の脳内が忙しなくフル稼働している。


「戻った」

 見ると部屋の中にエイダンが立っていた。


 ギルド長、ギルド長はどこだ?


「エイダン、ギルド長は?」

 お姫様抱っこで連れて来なかったのか?


「後」

 ドアの方を見ると息を切らした、ギルド長が走ってくるところだった。

 

「お前、速すぎだろう」

 ギルド長は息も絶え絶えな様子である。一方のエイダンは首をかしげて、即答する。

 

「俺、ギルド長に合わせた。別に速くない」


 エイダン――!!本当のことでも言っちゃいけません。って、そんなこと気にしてる場合じゃなかった。 


 俺はギルド長に涙目ですがった。

 

「ギルド長、助けてください!!」


「何!?ヤバいモンスターだったのか?なら避難指示を出さないと……」

 ギルド長は真剣な目で俺を見つめる。いや、違うんです。別の意味でヤバいんです。


「いや、違うんです。こいつです!!」

 俺はぺぺを掴んでギルド長の前にだした。


「……何だ、こいつ」

「ぺぺです」

「ぺぺ!」 

 ぺぺも目つきが悪い割には律儀に返事をする。

  

「……初めて見るぞ。こんなやつ。こいつが木箱に入っていたのか?」

「おそらく。部屋に入ると木箱に穴が開いていて、かわりにこいつがいました」

 

 ギルド長はじっとぺぺを見つめる。

「……あんまり、強そうじゃないな」


「ぺ」

 ぺぺはギルド長を一瞥すると、一瞬のうちにギルド長の顔を足で蹴った。


どー――ん。 


 ギルド長は壁に激突する。

 

「……えっ」

 

「……っ痛てて」


 ぺぺ?

 

 ……お前ってヤバいヤツだったのか!? 


「ちっせぇのにすごい力だな。これなら木箱に穴が開くのも頷ける」 

 ぺぺ小さいのに強いんだな。


「で、こいつのどこがヤバいんだ。何もしなけりゃ暴れなさそうだぞ。今も俺が悪口言ったから蹴られたし」 


「ぺぺ」

 ぺぺもこくりと頷く。

 俺は覚悟を決めて口を開く。 

 

「……いや、実はテイムしちゃって」

 

「は?」

 

「だから、知らないうちにテイムしちゃったんです。ぺぺって鳴くなと思って言ったら名付けになっちゃって……どうしたら良いですか」

 本当にどうしたら良いか教えてください。


「普通人様の物を勝手にテイムしたら、基本そのモンスターに見合った金を支払うのが一般的だ」

 金か……足りるかな。足りなければ、母に前借りしなくては。


「だが、こいつは木箱に入ってたんだろう?違法取引のモンスターの可能性が高い。その場合飼い主がいないことが多く、テイムしても特にお咎め無しの場合もある。ただ、本当に違法取引モンスターか調べないとダメだがな」


 よし!!違法取引であってくれ!お咎め無しが良い!!


「女将、この客室のタグ情報が欲しい、あと、木箱とこのモンスターはとりあえずギルドでが預かって大丈夫か?」

「頼むよ、タグ情報も下で渡すよ」

 2人の間でスムーズに話が進む。


「スバル、とりあえずモンスターを預かる」

 それはしょうがないな。まずは持ち主が判明しないと、俺もどうしょうもないし。


 俺は持ち上げていたぺぺを渡そうとした。

 

「……ぺぺ」

 ぺぺはなんとなく潤んだ悪い目つきで俺を見つめてくる。


「持ち主が分かったら迎えに行くから、それまでギルドで大人しく過ごすんだぞ」


「ぺぺ」

 ぺぺは嫌々をと首を振ると、俺の手から飛び出しスカイのもとへ行った。


「キュキュウ」

 スカイが前に出てかばうように立つ。


「……スカイ。少しの間離れるだけだから」

 スカイも嫌々と首を振る。俺は心を鬼にして、ぺぺを捕まえにかかった。


「ぺぺ!!」

 俺の手が伸びた瞬間、ぺぺは地を蹴って空高く飛び上がり、スカイのお腹の袋に入った。

 

 ……えっ 


「「ええ――!!」」「あら、まぁ」

 

 ぺぺのお腹は膨らみもせず、外見は全く変わらない。


「とりあえずあたしは仕事に戻るよ。タグについてメモしとくからあとで受付に来な。それからここの客が何か言ってくるようならギルドに行くように話すけど良いかい?ま、おそらく箱が無いことに気づいた段階で逃げると思うけどね」  


「いや、念の為ギルド員を何人かこの部屋に待機させさせてくれないか?もしかしたら、違法取引の下っ端を捕まえられるかもしれない。できるだけ迷惑をかけないようにするから頼む」


「仕方がないね、貸しだよ。ただし何か壊したらギルドに請求するからね」


 そう言うと女将さんは受付に戻った。

  

  

 

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