冒険者デビュー10(チームを分けて)
「……とまあ、少し厳しいことを言いましたが、昨日今日と依頼をきちんと達成していますし、仕事ぶりも丁寧。チームとして、リーダーのスバルさんを中心にきちんと動けていますし及第点です。ですので、分からないことを都度相談してもらうことで、少しでも経験不足を補っていただけたらと思います」
ジェーンさんは笑顔でまとめた。
そうだよな。せっかくガイドがついてくれているんだから、遠慮せず分からないことは、聞いておこう。
「では、さっそくなんですが、この後の予定について聞いても良いですか?姉とフェレナは森に行きたがってるんですが、正直俺とケインは体力に自信がなくて、昼から森に挑むのは難しいと感じているんですが、どうしたら良いと思いますか?」
「そうですね、2チームに分かれたらどうでしょう。ステファニーさんとフェレナさんは私と一緒に下見を兼ねて森に行き、他のメンバーは町中でできる比較的安全な依頼を受けたらどうでしょうか?」
それなら姉とフェレナも満足だし、俺とケインが疲労でダウンすることも無いな。
「なるほど、皆それで良い?」
「「「「はい!」」」」 「キュウ!」
全員笑顔で頷いているので、その案で決定しよう。(エイダンはいつも通り無表情だが)
「では、今から必要な道具を揃えましょう。基本的な道具は受付で販売しています」
「……地図と、スコップ、それから僕とスバルくんの防具でしたよね。防具は買うかレンタルかどちらが良いと思いますか?」
ケインが自分のメモを見ながら確認してくれる。
「そうですね、しばらく冒険者を続けるなら買う方が断然安いです」
今は懐に余裕があるから、思いきって買わせてもらおう。
「じゃあ地図とスコップ、俺とケインの胸当てを購入しても良いかな」
「「「「はい!」」」」「キュウ!」
「その他買っておくと良いものはありますか?」
念のためフェレナが確認してくれる。
「ポーションとドクケシ薬、魔力ポーションはあると良いと思います」
ケガや毒にあったり、魔力不足で魔法が使えなくなったら困るもんな。
「ポーションはあるからドクケシ薬と魔力ポーションだな。それぞれいくらしますか?」
「ドクケシ薬が1本5銅貨、魔力ポーションが1本4銅貨です」
「ドクケシ薬は人数分となると3銀貨と5銅貨、魔力ポーションは2人分だから8銅貨か……お金はあるから、買っても良いかな?」
「薬は万が一の時に必要だから、確保しておきましょう」
よし、これで受付で買い物すればオッケーだな。
「じゃあ、買いに行こう!」
受付で買い物を済ませ、俺とケインは胸当てのサイズを調節してもらい、ミーティングルームで皆でお弁当を食べると(料理長スペシャル、ジェーンさんも絶賛だった)姉とフェレナ、ジェーンさんは森へと出発した。帰りはギルドで待ち合わせだ。
「ステファニーさんたちめっちゃ嬉しそうでしたね」
「念願の冒険、モンスターとの実戦だからな」
「そういや、ハイドは姉さんたちと行かなくて良かったの?」
ハイドは獣人族だから、体力はまだまだ有り余ってるはず。
「いや、あの3人と行くのは無理だろ。ゴールドランクに上級者2人だぜ。俺だけだったらぜってぇ帰って来れねぇ」
確かに。俺というお荷物がいる分いつも、ハードだがなんとかこなせるレベルだもんな。
「じゃあ、俺たちだけで無理なくこなせそうな依頼を探すか」
依頼板を隅々まで見ていく。軽労働で、短時間。なんか前世のスキマバイト探しみたいだな。スマホが無くて紙だけど。
「スバルくん、これはどうですか?」
宿屋とまり木 客室清掃。 半日
客室のベッドメイク、片付けなどを行う。
報酬 1部屋につき5半銅貨
特典 宿屋の軽食サービス
依頼主 宿屋とまり木店主 ブレッド
軽食サービスがついているのが、お得感があって良いな。1部屋あたりは安いけど、今日は結構稼いだし大丈夫だろう。
「良いんじゃない。軽食サービス気になるし」
「えっ、軽食ついてくるのか?それにしよう、それに!!」
ハイドの食いつきがヤバい。
いつか食べ物につられて失敗しそうだな。
「取り敢えず受付してくるな」
そして再びオリビアさんのところに行った。
「それでは受付しましたので、依頼書を持って宿屋とまり木に行ってください。宿屋とまり木は町の中心にあります。簡単な地図を書きましたので、お持ちください」
簡単にすぐ地図を書けるなんてさすがオリビアさん。
大通りに面した赤い屋根の3階建ての家だな。見たことはあるかも。歩いて20分くらいかかるから、早く出発しよう。




