冒険者デビュー9(お金稼ぎ 3)
「まぁまぁ、ずいぶん綺麗になったわね」
院長先生に来てもらうとかなりびっくりされた。
「1日で片付くなんて、スバルくんたちは本当に優秀な冒険者なのね。これなら銀貨3枚渡せるわ」
よし!6日分のお金をゲットできたぞ。
「何より、子どもたちと早く野菜を植えられそうだわ。ありがとう」
やっぱり人から感謝されるのは嬉しい。
皆も同じことを考えているのか、皆の表情も柔らかである。
「また、よろしくお願いします」
「こちらこそ、またぜひお願いするわ。依頼書にサインしたから持って行くのを忘れないようにね」
院長先生から依頼書を受け取り別れを告げると、そのままギルドに戻った。
ギルドの入口から入り、依頼書をオリビアさんに渡す。皆は食堂で一休みするらしい。俺も早く合流しないと。
「はい、確認できました。こちらが報酬の銀貨3枚です。お受け取りください」
「ありがとうございます」
「最初の報酬の5銅貨から3銀貨とは、よほど良い仕事をされたんですね。この調子で頑張ってください」
「はい!」
まだ、2日だけど順調にいっているぞ!着実に依頼をこなしていこう。
「あ、それと、キズナズナ草も採取してきたので納品します」
俺はアイテム袋に入れていたキズナズナ草を受付の横の台の上に出す。
「はい、確認させていただきます……キズナズナ草45本ですね。しかも根まで綺麗についた状態で品質も良いです。少し色をつけて1銀貨と5銅貨で買い取らせていただけたらと思うのですがどうでしょう?」
確か1本3半銅貨だったな。ちょっと多めの金額にしてくれているし文句は無い。
「それでお願いします」
「はい。それでは報酬の1銀貨と5銅貨です。薬草の買い取りは品質に左右されます。根まで綺麗についていれば報酬が上がることがありますし、逆に葉のみなど買い取れない場合もあります。何事も丁寧に行う方が良いと覚えておいてください」
なるほど、品質の良し悪しで、買い取り金額も変わるんだな。覚えておこう。
「あと、依頼は受けてないんですが、ドクケシケシ草 36本とゲッコウ草42本も見つけたんですが買い取っていただけますか?」
「はい、どちらも薬師ギルドから依頼を受けていますので大丈夫です。ドクケシケシ草は1本半銅貨5枚、ゲッコウ草は1本半銅貨4枚、どちらも5本以上で買い取りになります」
「大丈夫です、出しても良いですか」
「はい。確認しますので出してください」
俺は台の上にドクケシケシ草とゲッコウ草を出した。
「ふむ……ゲッコウ草は花の咲いてない状態で見つけられたんですね。見分けは難しいのに素晴らしいです。またドクケシケシ草も茎の赤い部分が土で隠れていることが多いので見つけるのが難しいのに……品質も大変良いです」
どうやらどちらも見つけるのが難しいらしい。草抜き引き受けてラッキーだったな。
「ゲッコウ草も少し色をつけて銀貨1枚と銅貨8枚。同じくドクケシケシ草も銀貨2枚で買い取らせていただけたらと思います」
おおっ、今回だけでかなりの金額になったぞ。
「よろしくお願いします」
「では報酬の銀貨3枚、銅貨8枚をお受け取りください。薬草買い取りはいつでも行っていますので、また、よろしくお願いします」
オリビアさんに笑顔で会釈すると、皆が待つ食堂に急いだ。
食堂では、皆好きな飲み物を注文して待っていてくれたようだ。
「銀貨8枚、銅貨3枚になったよ」
「「「「おおー」」」」「キュウ!」
「これで必要な物が、手に入るね」
「やったー!じゃあ、買い物したら、昼から森に行けるわね」
「はい!楽しみです」
姉とフェレナが盛り上がっている。
「……大丈夫でしょうか」
「……同じく」
実は俺とケインは草拾いで結構体力をとられてしまった。まだ動けはするが、昼から半日となると体力が持つかどうか正直心配である。
どうするべきか……。ここはジェーンさんに相談だな。
「ジェーンさん、昼から森に行くことについてどう思いますか?」
薬草採取の依頼は達成しているから無理はする必要は無いのだが。姉とフェレナは行きたそうだしな。
「ようやく、私に聞いてくれましたね。ガイドなのに皆さん全然相談してくれないので、正直ガイドを降りようかと思ってました」
いや、ジェーンさん笑顔だけど辛辣。
皆の空気も固まり、その場はしーんと静まりかえった。
「あら、冗談ですよ。冗談。でも頼ってもらえなくて残念に思っていたのは本当です」
「「「「「すみません」」」」」「キュウ」
全員で慌てて頭を下げる。
ゴールドランクに頼りすぎてはダメだと、どちらかと言えば全て自分たちで解決しようとしてしまっていた。せっかくガイドを引き受けてもらってるんだから、本当は逆でどんどん聞くべきだったんだな。
「皆さん、たとえば今日の依頼、どんなことを私に聞けば良かったと思いますか?」
今日の草抜きか。草抜き自体は上手くいったけど……何を聞いたら良かったんだろう。
「……たとえば他に生えてそうな薬草があるのか、とかですか?」
ケインが答える。
なるほど。
確かに。俺たちは今日調べた知識しか知らないしな。
「正解です。私に聞いてもらえていたら、他にも生えていそうな薬草をお教えすることができました」
なんとー。もったいないことをしているな。
「たとえば人数もですかね。今日の依頼でしたら、ケインさん、ハイドさんと私かフェレナ様がいれば達成することができました。その間別の依頼を他のメンバーに引き受けてもらうこともできたかもしれません」
フェレナが考えて答える。
「そうですね。今回は全員がいたからこそこの早さで終わらすことができましたが、半日あれば3人でもできたでしょう」
なるほど。何を重視するかによって、メンバーを分けるのも有りだな。
「スバルさんは、今日大きなミスを1つしているのですが、分かりますか?」
えっ……結構上手くやったつもりなんだけど……。
「ステファニー様は気づいているようですね」
姉が気づいているだと!?
姉の目線の先はスカイ?
スカイで大きなミスって……そう言うことか。
「私を信頼してくださるのは嬉しいですが、会ってまだ2日目です。隠すべきことは隠していただいて大丈夫です」
「……すみません」
スカイの袋、普通にしてたら容量は少ないもんな。アイテム袋でもダミーで入れておけば良かったけど、今回はそのまま収納させてしまったしな。
外見も珍しい、人にもなついている、その上収納持ちとなると皆欲しがるよな。もちろん悪人も。
エイダンが護衛について油断してたから、また、気を引き締めておかないとな。




