初めてのゲット2
「神託があったんなら、早く言いなさいよ」
その後、一睡もしてなかった俺は気絶するように眠りについたらしい。
姉とルリアは俺が倒れたので、慌てて両親を呼びに行き、倒れた俺を見て、慌てて両親が医者を呼び、医者からただ寝ているだけと聞き、安心したらしい。
そして、日が沈みかけた、夕方。俺は目を覚まし、心配してベッドの周りにいた家族とルリアに、事情を伝えることになった。
「……いや、せっかくなら内緒で探したかったんだ」
宝探しは男のロマンである。
「倒れるまでしちゃだじゃないか」
「倒れたあなたを見て、心臓がとまるかと思ったわ」
「…………心配かけてごめんなさい」
「それで、神託の物は見つかったの?」
「…………それが、全然見つからなくって」
「騎士団で探せば早いが…………お前が探したいか?」
俺はこくりと頷いた。
「お前が聞いた神託だ。お前が好きにしたらいい。だが、探すのは昼間だけだ。体を壊しては元も子もないからな」
「次に同じことがあったら、騎士団に任せますからね」
「分かった!ありがとう父様、母様」
「もちろん、私も手伝うわよ」
いや、それは遠慮したい。
「いや、姉さんには特訓があるじゃないか」
そうそう。俺に構わずに、ぜひ訓練をしてほしい。
「大丈夫よ!特訓は朝早くからして、昼から探し物をしたら良いじゃない」
「いやいや、俺にはそんな体力ないし」
無理、無理、無理。
「大丈夫、大丈夫。姉さんに任せなさい」
無理、無理、無理。絶対無理。
「いや、いや、いや。…………ルリア助けてくれ」
猫耳メイド様ーー。頼むーー。
「スバル様、頑張ってくださいね♡」
「いや、いや、いや、いや。…………父様、母様何とか言ってください」
「頑張れ、スバル」
「頑張ってね♡」
両親ともに満面の笑みである。
「イヤだーーー!!!」
◇ ◇ ◇
次の日から、早朝からの特訓と、昼からの宝探しが始まった。
「……はっ、はっ、はっ。姉さん……、あと……何周?」
前を走る姉は、息一つ切らしていない。対照的に俺は、息も絶え絶えである。
ここは騎士団の訓練場、前世の運動公園くらいの広さがある。
特訓を初めて1週間。予想通り、いや、予想以上にキツい。
「体力作りは大切よね。あと1周で20周か……しゃべる元気もあるし、今日は25周走りましょう」
お前は鬼か!!
俺を殺す気か!!
貧✕✕✕ゴリラめ!!!
「何か、あんた嫌なこと考えたでしょう。30周ね♡」
「…………何も……なにも……考えて……おりません。助けてください…………女神様!!」
ヤバい、ヤバい。30周は死ぬ。
何が何でも、阻止せねば。
たとえ本音は女神ではなくゴリラと思っていても。
「30周ね♡」
あぁ、俺は何で、こんなに正直で、顔に出やすいんだ。
今だけ、今だけ姉は女神だ。
そう、いつもはゴリラでも。
「30周♡」
俺の人生はここで終わった…………完
特訓後、全く動けない俺を尻目に、姉は元気に宝探しを始める。
「昨日の印は…………ここね。今日はこの隣から始めましょう」
1週間右周りに木の下を掘り進めたが、全く当たりを引かない。
家の周りはアナボコだらけである。
死神よ、本当にあるのだろうな。
ザクザク
ザクザク
ザクッ
「うーん、これは!!」
どこからどう見ても石である。
「残念。…………スバル、神託本当なんでしょうね」
…………確かに。
これだけ掘ってもないとは……。
「信託は『家の前の木の下を掘る』だったんだけど……」
「家の前の木の下ね………」
「家の真正面は道だろう?だからとりあえず右周りに掘りすすめたんだが……」
「家は意外と広いからね。……でも、じゃあどこを前と考えたら良いのかしら」
うーん、前ってどこだろう?
「あー、分からんーー」
死神よ、何かヒントをくれ。
「スバル様、信託の家とは、本当に辺境伯宅を指しているのでしょうか?」
日陰で控えていたルリアが疑問を投げかける。
えっ、どういうこと?
「神様にとって家とは神殿なのでは?」
「えっ、ええ――?」
「これだけ探して無いんだもの、きっとそうよ」
姉も賛同する。
「ええー――!!!マジかよ!!」
「とりあえず神殿行ってみましょう」
神殿に行くことになった。