冒険者デビュー5(採取依頼)
朝7時少し前にギルドに着いた。ハイドとカインもすでに待っている。
「悪い、遅くなった」
「いや、俺たちも今来たところ」
「入るか」
ギルドの扉を開くと、前回とは違って人で溢れていた。
「……すげぇな」
朝は戦争だな。冒険者はより良い依頼を探すため朝からギルドに来るって言ってたけど本当だったな。人でごった返しているが、ジェーンさんを探さないと。
「スバルくん」
向こうからジェーンさんが歩いてきた。
彼女の周りだけ人が避けていく。
「あれ、光のジェーンだろ」
「あんな見た目でゴールドランク」
「しかもソロだって聞いたぜ」
「誘ったらチーム入ってくれるかな」
「ばか、ランクが違いすぎるだろ」
周囲の囁きが嫌でも耳に入ってくる。やっぱりゴールドランクってすごいんだな。
「おはよう」
「「「「「おはようございます」」」」」
俺たちにも視線が集中する。
「あのガキンチョたち何者だ」
「ジェーンさんがあいさつするなんて」
「若いけど有望株なら、早めに声かけないと」
俺とハイドとケインは親の七光りで注目されてるような、妙な居心地の悪さを感じていた。姉、フェレナ、エイダンは全く気にもしていない。
「では、今日のガイドをはじめますね」
その言葉で一気に俺たちへの関心が薄れた。
「何だ初心者のガイドか」
「ギルドに頼まれたんだろうな」
「羨ましい、さ、今日も行くか」
各々自分のチームメンバーと依頼書を持って受付へと足を運ぶ。
「依頼書は私の方で選んでおきました。確認してください」
キズナズナ草 採集。10 本から
報酬 1本につき半銅貨3枚
依頼主 薬師ギルド
薬草採取だなということは今日から森に入るのか。
「ジェーンさん、今日は初心者の森に行くんですか?」
「えぇ、比較的モンスターがでないエリアで採取するわ」
比較的でないってことは、少しは出るってことだよな。
「ここは混雑してるからスバルくんは受付に行ってもらって、それ以外はミーティングルームで待機しましょう」
確かに、ここでは人が多すぎてゆっくり話もできない。ジェーンさんと皆は2階に上がっていった。
受付も激しく混んでおり、長蛇の列ができている。オリビアさんの列に並び、自分の番がくるのを待っていると、隣の列から会話が聞こえてきた。
「さっき聞いたんだけど、新しい初級ポーションが出たらしい。」
「新しい初級ポーション?何が違うんだ?」
「効果は同じで美味いって話だぜ。そいつもまだ試してないらしいが、お試しで買ってみたと言っていた」
「ふーん、値段は?」
「今だけ3銅貨、今後は6銅貨になるって言ってたな」
「倍の値段になるのか、俺らまだ金ないし、同じ効果なら安い方が良いか」
「だな、はやく活躍してブロンズランクに上がろうぜ」
ふむふむ。話題になってるな。やはり、値段がネックか。でも初級ポーションが売れなくなったら、それはそれで困る人も出てくるだろうから、住み分けできて良いのかも。そんなことを考えていると、受付が俺の番になった。
「これをお願いします」
「チーム依頼で大丈夫でしょうか?」
「はい」
「それでは10本から買い取りになりますので、お気をつけください。また、ただいま混雑時間となっております。詳しい説明をお聞きになりたい場合は、1時間後に来ていただくか、2階の資料室をご利用ください」
やっぱり丁寧でかつ短時間に欲しい情報をくれるオリビアさんはすごい。
「分かりました。ありがとうございます」
「お気をつけて」
俺は頭を下げると、皆の待つミーティングルームへ上がった。
「依頼受付してきたよ」
「遅かったわね」
「いや、めっちゃ混んでたからしょうがないだろ」
姉にちくりと言われたが、寄り道はしてないぞ。
「それでは今から打ち合わせを行います」
「「「「「はい」」」」」 「キュウ」
皆真剣な顔でジェーンさんを見る。
「まずは今日は初心者の森に入ります。必要なものは何だと思いますか?」
「水分、食料、装備、武器?」
「採取依頼だからスコップとかもいるんじゃない?」
「あとは採取したものを入れる袋かカゴかな」
「地図も欲しいです」
俺たちは取り敢えず必要そうな物を言い合う。
「良いですね、まず大切なのがチームで必要なものを把握するということです。確認できたら、それを分担して用意します」
「水、食料は俺が持ってきました」
朝、料理長にお弁当を人数分用意してもらいスカイに入れてもらっている。水分も皆の分用意してきた。
「では、後は装備と武器とスコップ、袋、地図ですね」
「袋もアイテム袋があるので大丈夫です」
何でもスカイに入れていたらまずいよな。アイテム袋買っていて良かった。
「残りの物はギルドで販売やレンタルをしています」
「じゃあ買わないといけないな。どのくらいしますか?」
「簡易な武器や装備のレンタルは1つにつき1週間で3銅貨です。購入は1銀貨します」
「俺弓があるから大丈夫」
「私も槍を持ってきたわ」
「私も剣があります」
ハイド、姉、フェレナは武器は必要無いな。
「僕も魔法で対応するので、武器は必要ありません」
「俺も」
持っていても、重いだけだよな。
「見たところ、スバルさん、ケインさんは戦うのが苦手のようなので、軽い胸当てをレンタルした方が良いかと思います。逆にハイドさん、ステファニーさん、フェレナさん、エイダンさんには簡易な防具は無い方が戦いやすいでしょう」
ジェーン先生、やっぱりよく見てるな。
「「はい」」
俺とケインは頷いた。
「あとはスコップと地図ですが、スコップも地図も銅貨1枚で販売しています」
「じゃあ、あとで購入だな」
「持ち物の確認が、できたので次は採取物と採取地の確認です」
「「「「「はい」」」」」「キュウ」
「資料室に移動しましょう」
皆で資料室に移動した。




