冒険者デビュー4(ランクゴールド)
家に帰って母に今日あった出来事を伝えた。
「ランクゴールド!良かったわね。それならかなり安心だわ」
母もランクゴールドだもんな。
「でも、強い人が良いとは限らないんじゃない?」
ジェーンさんは、良い人だったけどあえて聞いてみる。
「あら、ランクゴールドになるためには、実力だけじゃなくて信用も必要なのよ。それに運もね。ギルドからの緊急の依頼も引き受けなきゃいけないし」
なるほど、ランクゴールドの人が尊敬されるのはちゃんと理由があるんだな。
「母様、明日から1週間、ガイドと一緒に依頼を受けても大丈夫?」
姉がスカイを抱っこして聞いてくる。
やっぱりモフモフの魅力には勝てないよな。
「ええ、もちろん。しっかり教えてもらいなさい」
明日から本格的に冒険者活動だな。今日は早く寝ないと。
「そう言えばスバル。桃はどうなったの?」
「販売してもらえることになった」
母に桃について決まったことを説明する。
「さすがオリビアね。じゃあスバル、今後はお小遣いはあげません。自分のお金でやりくりしなさい」
「えぇー」
俺まだ7歳。お小遣い必要。
「えぇーじゃありません。定期的に販売するならかなりの額がスバルのものになるでしょう。家はそこまで甘くはありません」
ま、仕方ないか。
「……はい」
ただより高いものは無いって言うしな。でもお小遣い無しはなんか響きが痛い。
「あとはスカイちゃんにもちゃんとよくしたげるのよ」
「キュウ!」
名前を呼ばれたスカイは嬉しそうに返事をする。
確かに、本当は全部スカイの金だからな。またスカイの欲しいものを聞いてみよう。(ただしまだ、言語を介しての意思疎通は難しい……)
「それと、スバルは弱いんだから無理をしないこと」
「……はい」
そう。俺は戦闘力皆無である。とにかく無理をしない。安全第一。
「明日も早いからそろそろ寝るわね、お休みなさい母様、スバル」
姉はスカイを抱いたまま部屋を出ていく。フェレナもお辞儀をして後に続いた。
「俺も寝ます」
さ、俺も寝よう。
最近姉がスカイと一緒に寝たがる。俺もたまなら別に良いんだが、寝ている内に、いつの間にか俺のもとに戻ってくるのが、毎回になっていた。
「今日はどうかな?」
姉の願い(朝までスカイを抱っこして寝る)は叶うのだろうか。おそらく姉の締め付けが苦しくてスカイが戻ってくるに一票!……たぶん正解である。
♢ ♢ ♢ ♢
寝室でメルリシアは通信器に話しかけていた。
「そちらの状況は?」
「今のところ順調に進んでいる」
通信器の相手はスチュアートである
「今日子どもたちが冒険者登録をしたわ」
「大丈夫だったか?」
「えぇ、ランクゴールドのガイドがつくようよ」
「ランクゴールド!やはり持ってるな」
「ランクゴールドのガイドなんて聞いたことがないもの。かなり特別よ」
「アランが頑張ってくれたのか」
「偶然と子どもたちは言ってたけれど、どうなのかしら」
「どうだろうな。でも元気にしているなら何よりだ」
「えぇ、スバルの桃も販売が決まったし」
「そうか、スカイは他の果物はまだ生成できないのか?」
「スバルが桃に夢中で、おそらく他の果物まで目がいってないわね。今後落ち着いたら、確認していくことになると思うわ」
「そうか、何にしろまだ遠征はかかりそうだ。留守を頼むよ」
「分かっているわ、あなたも気をつけて」
「ああ、愛してるよメルリシア、おやすみ」
「私もよ、おやすみなさい」
そして部屋は静寂に包まれた。




