冒険者デビュー3(打ち上げ)
「思ったより早く終わったから、時間が余ったわね」
掃除が30分ですんだから、まだ時間に余裕がある。
「じゃあ良かったら俺のおすすめの店に行く?」
「スバルおすすめの店って大丈夫なの?」
ふふん。行って驚くなよ。
「デザートの店だけど結構人気なんだよ!店長と知り合いだから行ってみよう」
マジで美味いからな。
「ま、小腹もすいたし、最初の依頼料も入ったし皆で行こうか」
姉の言葉に皆頷くと、足取り軽く店に向かった。
お店に着くとちょうど並んでいた人が、お店の中にはいったところだった。
「可愛らしいお店ね」
外観もファンシーさを感じる明るい色合いで、店内は若い男女が多い。人気なのか席は満席のため、店外で並んで待つことにした。
「よく、こんなお店知ってたわね」
俺の街歩きスキルをなめるなよ。美味しいお店は大体チェック済みである。
「たまたま、店長が露店で販売してる時に知り合ったんだよ。まだできて間もないんだぜ」
あの後も何回か露店に通っている内に仲良くなり、新しい店のオープンにもお呼ばれしている。
「そうなの。楽しみね」
姉もやはり女子なのか、嬉しそうである。フェレナと話しながらキャッキャしている。
「お待たせしました。あら、スバルさん、いらっしゃい」
出迎えてくれたのは美人の店長のお嫁さんだ。店長とは美女と野獣コンビと心の中で呼んでいる。
「7人だけどいけるかな?」
「ちょっと狭くなっても良かったらお席をご用意しますよ」
「かまわない。早く食べたいんだ」
姉とフェレナがな。後ろでうんうん頷いている。
そのままテーブルに案内された。予備の椅子をだしてもらい、皆で席に着く。
「スバルおすすめは何?」
「スペシャルパフェ」
「じゃあ私はそれにするわ」
「私も」「俺も」「僕も」「キュウ」
「エイダンもそれで良い?」
エイダンもこくりと頷いた。実は我々男子チームも甘いモノ大好き男子なのである。
「スペシャルパフェ7個ください」
「分かりました。少々お待ちください」
「はーでも今日は楽しかったな」
姉が意外なことを言った。
「ですね、やっぱり実践は良いです」
フェレナも続く。
あれ、女子組は嫌がってなかったのか?
「でも、正直汚い仕事だから姉さん内心は嫌だと思ってると思ってた」
俺の意見にケインも頷く。
「あの臭いもすごかったですし」
「正直、最初はどうしようかと思ったよな」
「だから良いんじゃない」
「えっ?」
「はい」
姉とフェレナは奇妙なことを言う。
「ランクゴールドの人が選ぶ依頼よ、何か伝えたいことがあるに決まってるじゃない」
「はい。やはり、モンスターを討伐する前の心構えを教えていただいた気がします」
やはりジェーンさんは狙ってこの依頼にしたのかな。
「近い内に討伐の依頼を受けるでしょ?その時に血の臭いごときでためらってたら、討伐なんて無理じゃない」
「それに討伐部位を持って帰らないとダメですよね、また近い内に解体についても勉強する必要がありますよね」
確かに。おそらくこの1週間の内のどこかでは討伐依頼を引き受けるだろうから、習っとく必要があるな。
「それなら俺ができるぞ」
ハイドが声を挙げる。
「解体できるのか?」
「あぁ、俺の父ちゃんがハンターだから、たまに解体の手作いをするんだ」
冒険者もハンターもそんなに仕事内容の差は無い。ハンターは森で獲れる獲物を狙い、それを商店に販売している。獲物の種類は問わないし、害獣駆除も行なっている。冒険者は依頼の獲物を狙い、ギルドに納めている。
「やっぱり、今日も思ったけど意外とこのパーティーバランスが良いわよね。2人とも全然足手まといじゃなかったじゃない」
「はい、むしろお二人がいてくださったので仕事が早く終わりました」
ハイドとケインは姉とフェレナに褒められ、顔を赤くした。
「スバルの采配も良かったしね」
珍しく姉が褒めてきた。
皆も俺を見て頷く。
よせよ。褒めても何もでないぞ。
俺も珍しく褒められて、少し気分が上がる。
「お待たせしました。スペシャルパフェです」
俺たちの前にはスペシャルにふさわしい、大きな器に入ったパフェが置かれた。バニラアイスを中心にクリームとたくさんの果物で飾られており、見た目も熊さんがデザインされ可愛い。
「可愛い!!でも何で熊?」
「店長が熊さん似なんだよ」
そう、店長は何と俺のアドバイスを取り入れて商品化してくれた。
「美味そう!早く食べようぜ」
「そうだな」
「スバル、あんたリーダーなんだから何か言いなさいよ」
え、何この無茶ぶり。
でも、早く食べたい!
「じゃあ、チームセブン初依頼達成を祝して、いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」「キュウ!」
皆大満足でペロリと平らげた。ただ共有財布はほとんど空になってしまったが……また、明日頑張ろう。




