冒険者デビュー1(仮登録)
なんとか昼の定食(今日はブルホーンのサイコロステーキだった。激うま)を胃袋の中に詰め込むと、約束の時間となった。
受付にはオリビアさんと、杖を持った女性が立っている。
「こちらがガイドを勤めていただく、ジェーンさんです」
「ジェーンです。よろしくお願いします」
「ジェーンさんはゴールドランクのガイドで、めったにガイドを務めることがないんですが、今回たまたま受付に来ていたのでお願いすることができました」
ゴールドランク!
人は見かけによらないと言うけど本当にそうだな。優しそうな外見をしているけど、中身はきっと……。
「「スバル(さん)」」
「はい!何でもありません」
最近ツッコミが早くなってきた気がする。
「ジェーンさん、よろしくお願いします」
姉が代表してジェーンさんに頭を下げる。
「「「「よろしくお願いします」」」」「キュウ!」
「いえ、私もたまには若い方とご一緒する方が、いろいろな気づきもあるのでいいんです。こちらこそよろしくお願いします」
「それでは、これ以降は皆様で打ち合わせを行なってください。ちなみにガイド料はメルリシア様がお支払いになると伺っているので必要はありません」
ゴールドランクのガイド料、いったいいくらするんだろう。ま、母が払ってくれるなら、有り難いので甘えよう。
そう告げると、オリビアさんは受付業務に戻った。
「では、まず簡単な打ち合わせを行いましょう。2階のミーティングルームにいきましょうか」
2階に上がり、オープンスペースとなっている場所に移動した。テーブルと椅子がセットで何組か置いてあり、なかなか広い。全員が椅子に座るとジェーンさんが話だす。
「それではまず、皆さんの名前とスキルを教えていただいても良いですか?」
「私が、この中で最年長のステファニーです。スキルは槍術(上級)です」
「私はフェレナと申します。スキルは剣術(上級)です」
「俺はハイドです。スキルは弓術、風魔法が使えます」
「僕はケインです。スキルは索敵、水魔法が使えます」
「俺はスバル、スキルはテイマーです。そしてテイムモンスターのスカイです」
「エイダン、武術 剣術 馬術 黒魔法」
エイダン、こうして聞くとすごいな。
「なかなかバランスの良いチームですね、チーム名とリーダーは誰ですか?」
言いにくい流れだが、仕方がない。
「俺がリーダーで、チーム名はセブンです」
ちょっとだけ手を挙げる。
「分かりました。チームの方針などはありますか?」
「安心……」「とにかく実戦経験を積みたいです」
安心安全と言いたかったのに、姉に遮られてしまった。
「皆さん、その方針でよろしいでしょうか?」
俺以外の皆が、こくりと頷く。そして皆の視線が俺に注目する。
「スバルさんはどうでしょう?」
はー仕方ないな。でも言うことは言うぞ。
「俺もそれで構いませんが、母から、安全に気をつけること、町中か初心者の森のクエストのみにするように言われています」
これは本当のことだからな。
「そうですか。ちなみに私は天使族、光魔法が使えます。とりあえず、1週間ガイドを行います。最初なのでいろいろな経験を積んでもらおうと思いますが、大丈夫ですか?また、ガイド中は何があっても私の指示に従っていただきます。それが無理ならガイドはお引き受けできません」
至極真っ当な言葉だな。突っ走って怪我はしたくないし、何にしろランクゴールド、きっと指示も的確だろう。
「「「「「分かりました」」」」」「キュウ!」
エイダンもこくりと頷く。
「では、ガイドを始めますね。今日は時間もあまりありませんので、短時間でできる依頼を引き受けましょう。」
そう言うと、皆を連れて依頼板の前に移動した。
「依頼の中には、時間指定のものもあります。そうですね、今日はこの依頼にしましょう」
ジェーンさんが依頼書を見せてくれる。
ギルドの解体場清掃。1時間(目安)
報酬 出来高制(上限銀貨1枚まで)
依頼主 冒険者ギルド グルド
「これは奉仕系の仕事になります。ではまずスバルさん、受付で依頼を引き受けてください」
初めての依頼は奉仕系か。堅実でいいな。
依頼書を持って、受付のオリビアさんのところに行く。
「これ、お願いします」
「チーム依頼で大丈夫でしょうか?」
「はい」
「それでは依頼書を持って、奥の解体場にいるグルドに渡してください」
俺たちは、皆で解体場に向かった。




