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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
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桃を売ろう5


「私のスキルは槍術よ!ちなみにフェレナは剣術なの。前衛職だから上手くチームが組めそうね」


「「はい!」」

 ハイドとケインはとても嬉しそうである。


「あ、俺、桃のことで父様に相談があるから、先に失礼するね。みんなはゆっくりこれからのこと相談してくれて良いから」

 俺はそっと席を立つ。合わせてスカイとエイダンも(2人ともいました)席から立った。


「あら、冒険者登録のことで、私たちも父様に相談があるから一緒に行きましょう」


 姉がこちらを見て笑顔で告げる。

 ヤバイヤバイヤバい。

 この流れはヤバい。

 このままでは俺の1ヶ月のんびり生活が夢と消えてしまう。


「俺は……冒険者にならないからね」 

 言った。

 言ったぞ。

 

「何言ってんのよ。そうでなくても弱いのに、このままダラダラ過ごしてみなさい。また1からスタートになるわよ」


「1で済めば良いですが、マイナスになる可能性も捨てきれません」

 姉の言葉にフェレナが被せてくる。

 いやだ、俺はゆっくりするんだ。

 

「俺は桃を売る計画を立てないといけないから、冒険者になるのは今は難しい」

 どんどん先延ばし作戦だ。


「確かに桃を売るのも大切だよな」

 ハイドが俺の意見を肯定してくれる。


「はい。これから先を見通した販売計画は必要です」

 ケインも追従してくれる。

 ありがとう友よ。


「何言ってんのよ。桃を作るのはスカイ、販売については先日ミレー先生に聞いてたじゃない」


「そうなんだ」

「それなら大丈夫そうですね」

 すぐに2人は意見を変えた。


 ……バレたか。 

 でも友よ。もうちょっと粘ってくれても良くない?

 

 いや、でも、冒険者にはなりたくない。

 仕方ない、ここは捨て身の作戦しかないか。

 

「いや、冒険者になりたいのは山々だけど。俺まだ魔法使えないから、マジで足手まといだし」


 そう。この一ヶ月努力はした。

 魔法が使えるように、イメージトレーニング、スカイと魔力を感じる練習などいろいろ、本当にいろいろ試してみた。でもさっぱり魔力を感じることができなかった。母もお手上げで最近は専らスカイ専属の先生になっている。

 

「そんなの分かってるわよ。スバルに戦力は期待してないわ。優しい優しいお姉様だから、あんたの体力ダウンを心配して誘っているだけよ」


「そうですよ。スバル様にはスカイさんもエイダンさんもいるから、いざというときも安心でしょうし」

 姉とフェレナも席を立つ。


「さ、四の五の言わずに行くわよ」

 そして2人の手が俺に伸びてきた。

 

「嫌だ――――!!!」

 

 哀れ俺は2人に引きづられ、父のもとにドナドナされた。


♢ ♢ ♢ ♢


 父は遠征準備で忙しいらしく、父の政務室にも人が入れ代わり立ち代わり訪れていた。

 

「姉さん、今は難しいんじゃない?」

「おそらくこれから先も一緒よ。遠征が近づく分もっと忙しくなると思うわ」


 だろうな。ワイバーンは飛行系の魔物だから準備をしっかりしとかないといけないだろうし、遠征に必要な食料などの手配、不在時の政務についてなど、考えることは山程あると思う。

 

「こういうのは、遠慮してたらはじまらないわ。行くわよ」


トントントン


「失礼します」

 姉がドアをノックすると、そのまま引きずられるように俺は部屋に入った。


「何だ、お前たち。今は忙しいから後にしなさい」

 珍しくピリピリした声で父が言う。 


「後になってもきっと忙しいでしょう?だから手短に言います」

 姉は臆することなく答える。


「冒険者登録をして活動したいので、許可をください」


「駄目だ」


 父は即答する。


「では、遠征についていきます」

「それも駄目だと言っただろう」

 父の強めの言葉にも全くひるまず姉は続ける。


「ならば、勝手に後からついていきますわ」


「駄目だと言っているだろう」

 ついに父が声を荒らげた。


 俺とハイド、ケインはビクッと反応すると、そのまま置物のように息を殺した。早くこの場から立ち去りたい。


「父様、あれも駄目、これも駄目と制限されればされる程そこから逃れたくなるものです。冒険者登録と言っても最初はEランクからですから、危険は少ないですわ。それに、いざというときはエイダンがいます」

 姉は全く怯む様子なく父と対峙する。


「まだ、お前たちは幼い。最初の冒険は大人と一緒が良いと思うんだ。分かってくれ」


「冒険者ギルドには初心者向けにガイドがいると聞いています。ガイドを雇えば大人がついてきますわ」

姉にしては珍しく理路整然と伝えている。

「しかし……」

 父が考え込んでいると、母が部屋に入ってきた。


「良いじゃないですか」

「だかな……」


「この娘の性格からして、止めても無駄だと思います。それよりは冒険者になるにあたって制限をかけたら良いのです」

 さすが母。姉の性格をよく分かっている。


「引き受けるクエストは町の中か、初心者の森に限定したらどうでしょう?」

「ふむ、それなら危険は少ないか……」

 父は大きなため息を一つつくと、姉を見て言った。


「この中では、お前が一番の年長者だ。何かあったらお前が責任を取ることになる。それでも冒険者になるのか?」

「はい」

 姉は一切揺るがない。


「……許可しよう。ただし、ガイドをつけること。町中か、初心者の森のクエストのみ引き受けること。この2つを守ってもらうぞ」

「はい」

 姉は嬉しそうに、フェレナに笑顔を向ける。


 ……駄目でも良かったのにな。

 ままならないものである。 

 


 


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