桃を売ろう3
「あとは、偽装についてですね」
「はい!桃を売れるようにしたいです!」
万が一の時に生活費を稼ぐ手段は得てないとな。
「それはもちろんですが、エイダンさんの偽装も必要でしょう」
暗殺ギルドトップ疑惑だからかな。
あれ、俺ミレー先生にそのことは言ってないよな。
「何で必要なんですか?」
「黒髪の影狩りスキル持ち、影の王ダンと言えば暗殺ギルドのトップとして有名です」
「エイダンではなくダン?」
「はい、私が聞いた話ではそうです。おそらく偽装スキルで偽名を使っていたのではないでしょうか」
名前は良いとしてスキルや髪色を変えるほうが無難なのかな。
「エイダン希望がある?」
エイダンはゆっくり首を横に振った。
「先生スキル無しの人っているの?」
「前にお話したように純血の方は才能のみです」
「じゃあエイダンのスキルを偽装スキルで消したら大丈夫だね。エイダンできる?」
エイダンはこっくり頷き、「偽装」と唱えた。そして俺にタグを渡してくる。
エイダン
魔族 才能 武術 剣術 馬術 黒魔法
状態 呪い(死神) 主 スバル
「よし、スキルが消えてる。あとは念のため髪色を変えるか……何色がいいかな」
今も影のあるイケメンだけど、どうするかな。
「護衛ならば目立たぬ色がおすすめです、魔族に多い銀髪はどうでしょう?」
銀髪か……イケメン度が増しそうだけど、ま、いいか。
「エイダン銀髪でも良い?」
エイダンはこくりと頷くとまた「偽装」と唱える。みるみる内に髪色が黒髪から銀髪へ変化した。
「何で変わるの?」
「黒魔法で変えた」
毛染めで変えようと思っていたのに、その必要は無さそうだな。
黒魔法便利。何でも偽装できるなら、確かに暗殺とか潜入とかにもってこいな魔法かも。
「よし、これでエイダンは大丈夫かな」
「はい。年齢も違うらしいので、気づかれる可能性はかなり減ると思います」
一つ片付いたな。
あとは桃だ!桃!
「先生桃も偽装したいです!」
「そうですね、それが今回の大きな目的でしたね」
「はい!」
出どころがバレないように、でもたくさん売りたい。
スカイがすかさずポケットから桃を出してくれた。
「キュキュ!」
「とりあえず一つ偽装してみますか?エイダンさん、スカイさんの桃の『スカイの』の部分を偽装してもらえますか?」
エイダンは俺の方を向く。律儀に確認してくれるんだな。
俺はもちろん大きく頷く。
エイダンはスカイの桃を手に取り「偽装」と呟いた。そして俺に渡した。
「もう偽装できたのか?」
エイダンはこくりと頷く。
確かにさっきのスキルの偽装もすぐだったもんな。
「スバルさん良かったら鑑定鏡で確認してみてください」
俺は鑑定鏡を覗き、鑑定とつぶやいた。
桃 効果 少し傷を治す(初級ポーションとほぼ同じ効果) 美味
よし!ただの桃になってる!
「エイダンさん、一度にたくさん偽装することも可能ですか?」
エイダンはまたこくりと頷いた。確かに一つずつ偽装してたらきりがないよな。
「スカイ、ポケットにあるだけ桃を出してくれる?」
「キュキュ!」
スカイは大きく手を挙げると、ポケットからたくさんの桃を取り出した。思ったよりたくさんあり、テーブルの上に山盛りになっている。
「エイダンさっきと同じように全て偽装してくれる?」
「偽装……終わった」
先ほどと同じように一瞬で終わった。鑑定で確認しても全て桃になっている。
「エイダン偽装って何個くらいできるの?」
エイダンは首を横に振る。
「まだまだ余裕?」
今度はこくりと頷いた。
「エイダンさんは魔族ですから、種族的に魔力量が多いはずです。売る前にスカイさんに出してもらい偽装をかけるのが、効率が良いですかね」
「偽装って解けないんですか?」
そういや、聞いてなかったな。
「偽装魔法に気づいて無効化しない限り、半永久的にかかり続けるので心配ありません」
「よし、これであとは桃の効果の検証だな」
「そうそう、桃に変化はありましたか?」
ミレー先生が前のめりになり、尋ねてくる。
「今のところ変化無しです。フェレナに傷の確認もしてもらっていますが、大丈夫そうです」
「良かったです……ちなみに私も桃をいくつかいただいても良いでしょうか。あの味が忘れられません」
先生もか!!
桃、中毒性がありそうだけど大丈夫かな。
スカイに頼んで5個くらい、先生に渡す。
「個人的に欲しいので、売ることになったら私にも同じ値段で売ってもらえますか?」
おおっ。お得意様第一号。
「もちろんです。あとはいくらで売ったら良いでしょうか?」
「値段つけは冒険者ギルドや商人ギルドに、持ち込めば勝手にしてもらえます。価値に見合った金額をつけてもらえるので心配ありません」
よし、あとは効果の検証が終わったらギルドに持ち込もう。
……でも、姉たち女性陣に食い荒らされないよう、気をつけないとな。




