桃を売ろう2
ミレー先生の授業の時間になった。
やはりスカイが朝寝をする関係で、授業は昼からとなり、姉とフェレナは不在である。先生の予定の関係でまた1週間程間が空いてしまったから、いろいろ聞けることを確認しないとな。
「この方がスバル様の護衛ですか?」
エイダンは初めての授業である。護衛をするついでに一緒に授業を受けることになったので、ミレー先生に紹介する。
「エイダンと言います」
「良ければタグを見せていただけますか」
エイダンがこくりと頷き、ミレー先生にタグを渡した。
エイダン
魔族 スキル 影狩り 才能 武術 剣術 馬術 黒魔法
状態 呪い(死神) 主 スバル
「……ふむ。見かけによらずかなり優秀な方ですね」
ですよね。何しろ元暗殺ギルドトップ(疑い)ですから。
「エイダンさんが闇魔法を使えるなら、偽装はエイダンさんにお願いするのであってますか?」
流石ミレー先生。博識だよな。
「はい。そのつもりです。今日は先生にいろいろ聞けたらと思っているのですが、大丈夫ですか?」
「もちろんです。そのための先生ですから」
良かった。いろいろ確認しなければな。
「まず、エイダンですが呪いがかかっているんですが、死神の呪いについて聞いたことがありますか?」
「死神の呪いですか……正直聞いたことが有りません。ただ、神の名前は地域によって呼び名が変わるので、おそらく我々の主神のことを指しているのではないかと思います」
「死神が主神?」
死神って主神だったの?俺には結構気安い神の印象何だが。皆が知らない神がいる説の方が俺にはしっくりくるがどうなんだろう。
「はい。この世界を作った神のことを我々は主神と呼んでいます。この世界は神と精霊王が造りしものと伝わっています。その神については、お一人しか我々には認識されていません。もしかしたら我々の知らない神がいる可能性もありますが、おそらく同じ神の別名なのではないかと思います」
ミレー先生が言うなら間違いないのか。何しろ博識スキル持ちで、400歳だからな。
「エイダンは魔族だから魔族での主神の呼び方が死神ってことであってますか?」
「はい。ただ、私の知り合いの魔族の方は死神という呼び名をしていませんでしたので、ごく一部の限られた地域の呼び名なのではないかと思います」
「タグで主神ってでないのはなぜですか?」
そう、主神ならなぜ主神ってでないのだろう。タグは神様の授けものらしいから、間違いは無いって言ってたし。
「おそらく、エイダンさんの認識が反映されているのだと思います。たとえば我々がイモと呼ぶ食べ物は別の地域ではポテトと呼ばれています。鑑定してみると、私が鑑定鏡で見れば、イモとでてきますが、ポテトと呼ぶ地域の人が鑑定するとポテトとでてきます。それと同じことが起きているのだと思います」
うーん。
分かったような、分からないような……鑑定も奥が深いな。とにかく死神は主神の可能性が高いってことだな。
「じゃあ、死神の呪いって主神の呪いと同じ意味だから、めちゃめちゃ悪そうな呪いですね」
「そうでもありません、神が考える呪いが人にとってどう働くかは分かりません。善と働くも悪と働くも紙一重です。精霊王に祝福を受けると、寵愛が重すぎてかえって不幸になることも多いのです」
「つまり、エイダンが呪いのせいで不幸になるとは限らないということですか?」
「はい。ただ、私もどんな呪いかは分からないので、調べてみない内ははっきり断言できませんが」
なるほど、呪いもその効果次第ということだな。
「エイダンさんは呪われた時のことを覚えていますか?」
エイダンは首を横に振る。
「エイダンの前の主によると、エイダンは呪われる前の記憶を失っているそうです。それにおそらくですが、若返っているらしいです」
何しろ暗殺者ギルドトップ疑惑が出ていたからな。
「エイダンさんは記憶を失っていると言われましたが、日常生活や戦闘能力などについてはどうですか?」
「日常生活は問題ありません。戦闘能力に付いては……エイダンどうなの?」
「問題ない」
即答だった。護衛を頼んだから問題があったら困るけど。
「呪いの影響で何か困ったことは?」
エイダンが首を横に振る。
「では、呪いについて何か分かっていることはありますか?」
「エイダンの夢に死神が出てきて、俺と共にあれと言ったそうです。また、何でか分かりませんが、エイダン自身は呪いを悪いものととらえてないようです。あってる?」
エイダンはこくりと頷いた。
「そうですか……。呪われた本人の話は案外核心を突くことが多いので、悪い呪いではないのかもしれませんね。ただ、やはり呪いの効果が私も気になります。神殿に行ってみるか、高度な鑑定を受ければ分かるかもしれません」
やっぱり、神殿か王都だな。
「神殿でだめだった場合は、高度な鑑定ができる私の知り合いが王都にいるので、またお声掛けください」
「先生、ありがとうございます」
やっぱり先生は頼りになるな。




