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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
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奴隷商に行こう!


 夕食後、家族がそろう中で、俺はミレー先生に言われたことを伝えた。


「確かにスカイの桃は美味いし、怪我にも効くなら価値はかなり上がるな」

 

 父が桃を見ながらしみじみつぶやいた。


「あなた、初級ポーションの味をお忘れですか。何度飲み込むのに苦労したことか……。それが同じ効果でこんなに美味しいなら、誰もが欲しがりますわ」


 父と母も冒険者をやっていたと聞いてるから、おそらく過去に何度も飲んだことがあったのだろう。母の言葉には説得力があった。

 

「それに、スカイちゃんはこんなに可愛いですから、誘拐の心配もよく分かるわ」

 姉がスカイを抱っこして続ける。


「スバル様がお強ければ良かったのでしょうが、生憎武力はあまりお得意ではなさそうですし」

 

グサッ。(心の音)

 

 フェレナが地味に俺をディスってくる。いや、言われなくても分かってるけど、直球で言われると少し傷つく。


 いいんだ。いいんだ。

 俺は皆に守ってもらえるマスターを目指すのだから。


「そうだな。確かにスバルとスカイ直属の護衛をつけた方が身を守れるか……明日にでも奴隷商に行ってみるか」 

 早速話がまとまりそうである。家の両親は本当に話がよく分かる。

 

「あなた、偽装の魔術も明日一緒にお願いしてみたら」


「奴隷商に偽装の魔術が使える人がいるの?」

 奴隷商何でも扱ってるな。


「ああ、戦争奴隷なんか連れていると、過去に因縁があった相手と出会うことがあるからな。基本的にステータスは偽装して雇うんだ」

 なるほど。お互いの敵、みたいな人と会った時に、偽装してたらバレないってことか。

 

「でもそしたら世の中嘘つき放題じゃない?」

 俺も勇者(ちょっと憧れあり)とかに偽装できるってことだろ。他にも物も偽装できるなら、安い物を騙して高く売るとか普通にできそう。

 

「偽装はあくまで情報を隠すことしかできないんだ。別のステータスをつけることは不可能なんだよ」

「つまり、『スカイの桃』を『桃』にはできるけど、『スバルの桃』にはできないってこと?」


「そう言うことだ。偽装はあくまで隠すことが目的で、騙すことは目的外になっている」

 神様よく考えてスキル作ってるな。

 そしたら騙されることは考えなくていいのか。

 

「でも、それならマイナスのことも隠せるのよね」

 珍しく姉が鋭いことを言う。


「そうなるな。ただ、マイナスのこと、たとえば毒や呪いなどの情報を隠すことは犯罪にあたるから、もし偽装すれば自分が奴隷落ちする。めったなことでする人はいない」


 できないわけじゃないけど、リスクが高いからめったにする人がいないってことだな。


「そうなんだ」

 姉は簡単に納得した。

 

「そう言えば、スバル様。スカイちゃんの桃は怪我をしたらいただけるのですか?」

 フェレナがかなり前のめりに言ってくる。


「う、うん。今後はそのつもりだけど、しばらくは検証に使うから皆に配るのは難しいと思う」

 よっぽど食べたいんだな。

 

「では、私が検証役を務めます。あんなに美味しい物が食べられるなら、怪我くらいいくらでもしますわ」 

 いや、いや。たくさん怪我したらダメだろう。

 

 でも、待てよ。

 護衛が決まるまでは、スカイのことは公にできない。となると検証は……俺がするのか。

 でも、スカイのことを知ってるフェレナがそう言ってくれるなら、お願いできる!

 渡りに船かもしれない。

 

「お願いできますか?」

「もちろん!!」

 

 よし。

 俺は心の中でガッツポーズをした。

 取り引き成立だな。

 

「では、桃の効果の検証はフェレナに頼むということで決まりだな」 


「えー私も食べたい」

 姉よいらぬ茶々を入れるな。


「私も食べたいわ」

 母よ……あなたもか。


「検証が終わったら、食べて良いですから」

「検証ってどれくらいするの?」

「とりあえず1ヶ月を目処にやってみるつもりです」

 初級ポーションがそのくらいが消費期限らしいからな。


「となると今日の桃で、2×9だから18日。明日の桃は20日後から使うから6個あれば足ります。明日から4個余ることになります」

 フェレナよ、計算早いな。


「じゃあ明日以降よろしくね」


 確かに余るけど、検証はまだしたいし、売るためにも数は欲しいしな。


「いや、とりあえず検証用にとっておきたいんだけど……」

 

「「明日からね」」

 母、姉が笑顔で告げてくる。


「私も検証に付き合うのですから、ご褒美がわりにプラスでいただけますよね」

 女性陣の圧が強い。

 でも桃は確保しておきたい。


「……でも、まだ、どんな効果があるか分からないから、しばらくしてからの方が……」


「確かにな、1ヶ月待ってからでも良いのではないか」

 父よナイスアシスト!!

 

「「「スバル(様)」」」

 

 「あなた」

 母の笑顔が怖い。


「……1人1個までですからね」

 俺は圧に屈した。


「……あとは、スカイの魔法ではなく、秘密農園で作られたことにする話だが、それも構わない。ちょうど使っていない温室が領の外れにあるからそこで栽培に成功したことにしよう」

 若干引き気味の父が話をまとめる。


「護衛が決まったら、スカイちゃんも自由な行動をさせてあげましょう。それまで外出するときはもう少し我慢してくださいねスカイちゃん」


「キュ――!」 

 スカイが手を挙げて、その日の話はお開きになった。 

 




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