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天昇式


 あっと言う間に、神殿に着いた。神殿には俺以外にも今日9歳を迎える子どもが2人神殿の中に見える。

 

「スバル、ここからは1人で頑張って来いよ」

 父が両肩を叩く。


「どんなスキルを授かっても、神様からの贈り物。スバルはスバルよ」

 母はギュッと抱きしめてくれた。


「行ってらっしゃい!戦闘系なら明日から一緒に訓練よ」


 おいおい、ここは感動の場面ではないのか。


 姉の言葉になぜか寒気がする。

 テイマーは戦闘系に入るのだろうか。いや入らない。入らないに決まっている。


「行ってきます」


 笑顔が少し引きつりながら、俺はみんなが集まっている神殿の中に入った。

 


「君がスバル君かね。君で最後じゃな」


「遅くなって、すみません」

 慌てて頭を下げる。初っ端からやらかしたか。


「いやいや、大丈夫じゃ。時間には間に合うとる」

お爺ちゃん神官が笑顔で答えてくれた。

「今日集まった3名の若人の、天昇式をこれより行う。名前を呼ばれた者は、前に進み、主神の持っている水晶球に触れよ」


「ハイド」

「はい!」


 獣人族の子どもが前に進み水晶球に触れると、水晶球が淡く光を放ちだした。神官が手をかざすと光がおさまる。


「ふぅむ、ハイドは弓術じゃな」

「やったー!父さんと一緒だ!」


「つづいて、フェレナ」

「…………はい」


 銀髪の少女が前に進む。

 綺麗な子だな。彼女は服装からして、貴族の子どもっぽい。水晶球に触れると目のくらむようなまばゆい光を放つ。


「ふぅむ、これは…………剣聖か!!わしも初めてみるスキルじゃ。戦闘系の上位種じゃ!」

「そんな…………そんな、何かの、間違いです。私……私なんかが、剣聖などありえません」

 真っ青な顔をして今にも倒れそうである。


「神の授けるスキルに間違いはない。お主は剣聖で間違いがない。…………じゃが何か理由があるのなら、このあと話を聞こう。少し待ちなさい」


「とりあえず続けるぞ、スバル」


 なんだか微妙な空気になったが……気にするまい。さあ来いテイマー!!水晶球に触れる。


 水晶球は全く光らない。


 水晶球はそれでも光らない。 



 死神――――!!!


 

「ふぅむ。かすかに、かすかにじゃが光っておる。これは、テイマ―じゃな」 

 良かった。とりあえずテイマーになれたらしい。


「光が弱くとも案ずるな、これから自分がどう生かすかが大切じゃ」

 お爺ちゃん神官が頭を撫でてくれる。いい人だな。


「むっ、これは…………神託か。スバルよ家の前の木の下を掘るのじゃ。神託も珍しいことじゃ。きっと良きことじゃろうて」


 もしや一匹くれるという約束のやつか。

 よし!!


「これで天昇式を終了する。フェレナは少し残りなさい」

フェレナと呼ばれた銀髪の彼女はうつむいて震えている。


 大丈夫かな。戦闘系上位種。俺も絶対嫌だもんな。何とか上手くいくといいけど。

 


「なぁ、俺ハイド!村のハンターの子どもだ。」


 歩きながら獣人族の子どもが話しかけてきた。


「俺はスバル、一応辺境伯の息子」


「ええ――!!領主様の息子!?弱っちそうなのに」

「弱っちそうは余計だが、そうだよ」

「お前これからどうすんの?騎士団入るには戦闘系スキルがいるだろ?」

 騎士団か、そんな危ない職業には就きたくないな……


「うーん考え中、騎士団には多分…………いや絶対に入らない」

「俺は騎士団に憧れるけどな――村に大型の魔獣が出たらいつも助けにきてくれるんだぜ」

「でも、命がけだぜ。ハイドは騎士団に入りたいのか?」

「もちろん!!でも、父ちゃんと同じハンターも憧れてんだ」

 夢があるな、若人よ!って俺もか。


「ま、いろいろやってみて合う職業に就いたらいいんじゃね」

「そうだな。なぁ、せっかく同じ誕生日でこうして会えたんだ。良かったらまた、遊ぼうぜ」


「もちろん!」


「俺んち、村の中央にある赤い屋根の家だからまた、いつでも来いよ」

「俺んち、領主邸だから、門番にハイドのこと伝えとく。同じく、いつでも来いよ」


 がっちり握手して、手を振って別れる。良き友人になれそうである。


 神殿の外には家族が待ってくれていた。


「テイマーだったよ」


 俺が選んだスキルだ。

 俺自身何の不安も無い。

 でも、父さんはがっかりするかもな。何だかんだ、騎士団に入ってほしそうだったし。

 

「…………そうか、しっかり頑張るんだぞ」

 父は少し考えた後、笑顔を見せる。そして母も笑顔だ。さすが我が両親。話が分かる。

 

「テイマーはあまり身近にいないから、また周りでスキルを伸ばせる人がいないが聞いてみないといけないわね。どうかしら?あなた分かる?」

「どうなんだろう。うちの騎士団にはいないし、王都の騎士団にもいなかった気がするな」

「そもそもテイマーは戦闘系のスキルなのかしら」

「そこから調べないとな」


「別に良いじゃない。一緒に訓練してたら戦闘系のスキルになるわよ」


 ならない。ならない。


「だが、騎士団には1人もいないぞ。ノウハウなしは難しい」


 そうだ!そうだ!


「でも物事には必ず最初の1人がいるわよね」

 物事にも限度があるだろ。姉よ。


「だから、スバルが初めの1人になれば良いよね♡」

「…………いや、俺は別に、騎士団に入りたいわけじゃ…………」

 ………俺は騎士団には入りたくない。

 命がけのバトルなど死んでもごめんである。


「スバル、これから一緒に頑張ろうね♡」

 姉に抱きつかれる。ここは何としても回避しないと……。


「いやいや、俺はテイマーだから、別の職業に………」

「頑張ろうね♡」

 抱きしめる手に力が入る。


「い…………痛い痛い!姉さん、ギブギブ、ギブ!!」


「さぁ、明日から特訓よ!」


「い、嫌だ――――――」 



 姉さんにだいぶ魂を吸い取られたが、無事に(?)家に帰ってきた。家族で、お祝いの晩餐をした後の深夜0時。俺はこっそり部屋を抜け出した。

 

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