果物生成 1
「つまり、スカイさんは果物生成という魔法で、桃を生成できると。また、その桃は怪我に効果があるということですか?」
次の日、勉強の時間をまた、昼に変更してもらい、ミレー先生に昨日分かったことを伝えた。(相変わらず、スカイは朝は朝寝をしている)姉とフェレナは上級訓練に参加するため不在である。
「はい。どのくらいの怪我が治るのかは分かりませんが、昨日俺とケインのちょっとした怪我は直りました。」
「そうですか、その他に分かっていることはありますか?」
「桃の話を家族にしたらみんな食べたがって、スカイに出してもらったのですが、10個が限界でした」
「それは1日にだせる上限ですか?」
「いや、もともとポケットに以前生成した桃を入れいたのか、その場で作って入れたのかがよく分からなくて……」
そう、あの後両親に話をすると、やはり食べたがってスカイに頼んで出してもらった。残った桃は使用人たちで争奪戦が起きたらしい。
「では、1つずつ検証していきましょう」
「すみません先生。付き合わせてしまって」
「いえ、この歳になっても知らないことがあるということに、年甲斐もなくわくわくしています。こちらこそすみません」
ミレー先生は満面の笑みを浮かべた。先生の種族はエルフ。エルフは長命なんだよな。
ミレー先生も若く見えるけど……。
「だいたい400歳です」
ミレー先生、心まで読めるのか?
「何となく、スバルさんが、そう言いたそうな顔をしてました」
どんな顔!?
ミレー先生には嘘はつけないな。
「では、初めましょう。スカイさんもよろしいですか?」
「キュウ!」
スカイも準備バッチリのようである。
「スカイさん、桃を出してもらえますか?」
「キュウ?」
スカイは俺を見る。俺が頷くとポケットから1個桃を出した。
「これが桃ですか。私も初めて見ます」
ミレー先生は形を見たり、臭ったりしている。
形や味は前世にあった桃と変わらない。ただ、こっちの桃のほうがバツグンに美味いが。
ブシュッ。
ミレー先生はおもむろにナイフを取り出すと、ためらいなく自分の腕を切りつけた。
「先生!?」
先生!何してんの?マジで。
「キュウキュウ」
スカイも心配してキュウキュウ言ってるし。
「いえ、せっかくなので自分で試してみたくて」
先生、意外とマッドな人だったんだな。
「スカイさん、この桃私が食べても良いですか?」
「キュウキュウ!」
早く食べてとスカイはミレー先生を急かす。
先生は血が流れるのも気にせず淡々と続ける。
「全部食べる必要があるかも、調べたいですね」
そう言うと桃を投げると先ほどのナイフを一閃させた。
先生の手に戻った桃を見ると、6つに割れている。
すげー。
早業すぎて見えなかった。先生、剣の扱いもすごいんだな。
「このくらいはエルフの嗜みです」
俺の心を読むのはいいから、早くたべてくれ。
「ではスカイさんいただきますね」
先生は一かけ、口に入れた。
「美味しい。エルフの私でもこんなに美味しい果物は初めてです……傷は変化がありませんね」
そのまま、先生は一欠ずつ口に入れるが、傷口の変化は見られない。最後の一欠を口に入れた瞬間、傷口がみるみるふさがった。
「桃は1個丸ごと食べることで、傷を癒す効果が出るようですね。ただ、私の左脚は義足なのですが、そちらには効果がないようです」
先生しれっと、俺たちの知らない情報をぶっ込んできたな。動きに違和感ないから全然知らなかった。ま、いつもローブで脚は隠れているから見た目はもともと分からなかったけど。
「やっぱりちょっとした怪我に効果があるんですかね」
「どうでしょう?重症者は今いませんね。私を刺しても良いのですが……後々問題になってもいけませんし」
先生刺すのはやめてください。何かあれば俺が殺人犯になります。
「これを使いましょう」
先生はおもむろに、少し大きめの虫眼鏡を出した。
「何ですか、それ?」
「鑑定鏡です。人には使えませんが、物の名前や簡単な効果が分かる魔道具です」
そんな、魔道具あったんだ。
「鑑定スキルや才能を持っていない人、特に商人などにとって必須のアイテムです。私も知らない物があると気になって寝れないたちでして……」
いや、先生。最初からそれを使えば良かったのでは……。
「いやいや、実際に試してみないと分からないことも多いんですよ」
いや、先生心を読まないで……。
「では見てみますね、鑑定。ふむ。なるほど。スバルさんも見てみますか?見たい物にかざして、鑑定と言えば情報が分かります」
先生は鑑定鏡を貸してくれた。
「鑑定」
スカイの桃 効果 少し傷を治す(初級ポーションとほぼ同じ効果) 美味
なるほど。便利!!
「初級ポーションがわりになりそうですね。ただ、美味しさはこちらが、段違いに美味しいですが。また、見たことのない果物なので、高級食材としても喜ばれると思います」
おおっ。金になりそうな話になった!
将来を見据えて、スカイの桃をどうするか考えないと。




