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安心安全✕テイマーはじめました  作者: 国先 昂
第一章 新しい世界で何をする?
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初級訓練を終えて


「それにしても、今日は惜しかったよな」


 訓練後、いつもの中庭のテラスで反省会という名のもとの男子会である。

  

 ハイドが今日のおやつを食べながらぼやく。


 今日のおやつは、料理長特製スコーンである。スコーンの中にいろいろはさまっていて、激うまである。味も甘いのからしょっぱいのまであって、おそらくハイドは毎回のおやつタイムを楽しみに家に来てると言っても過言ではない。(たぶん)

 

「やはり、敗因は魔法が発動するまでの時間がかかりすぎたことですかね」

 ケインは紅茶を飲みながら話す。


 ハイドはハンターの息子で平民だが、ケインはここから少し離れた人魚族の国の伯爵家の次男坊だった。 

   

 家族仲は良いらしいが、家族の中で自分だけご先祖様の人族の遺伝子が強くでたらしく、水の中より暮らしやすい陸地で暮らすため辺境へやって来たらしい。

ちなみに辺境に別荘を立て、執事とメイドと暮らしていると聞いた。結構なお金持ちである。


 また、ここから1日程かかるところにある海(俺はまだ行ったことがない)に出れば、海路を使い半日で実家に帰れるらしい。以前訓練中に帰ったのも、実家に帰るためと言っていた。

 

「しゃあないだろ。無魔法なんてほとんど使ったことなかったんだから」

 ハイドが6つ目のスコーンに手を伸ばしながら言う。


 ハイドやケイン、一般的に魔法を使う人の多くは風や水など授かった才能、スキルを伸ばす傾向があり、誰もが使用できる無魔法を使う人はほとんどいないらしい。


「いえ、僕もほとんど使ったことがなかったので、今日の訓練を見て、使えるようになるのも良いなと思いまして」

「……確かに、使えて損は無いかもな」

 そしてハイドは7つ目のスコーンに手を伸ばす。


 いや、ハイド食べすぎたら晩ごはんが食べられなくなって母ちゃんに叱られないか。ま、俺は良いけど。

 

「はー、とにかく俺が魔法を使えないと話にならないよな……お前らどうやって魔法が使えるようになったんだ?」

 聞いて損はないかも。


「いや、俺はいつの間にか使えてた」

「僕も同じくです。おそらく種族に備わった才能だからかもしれません」

「……だめかー。」

 俺は思わずため息をついた。それにしても……。


「それにしても、なんでお前ら俺の方を見ないんだよ」

 

 そう。中庭に着いてから今までハイドもケインもできるだけ俺の方を見ないようにしている。


「だってな……」

 ハイドは俺を見て、プッと噴き出すと思い切り笑いだした。つられてケインも笑いだす。


 ひとしきり笑うと、二人の笑いのツボはおさまったようだった。


「お前の顔の真ん中にそんだけくっきり線が付いてるから、笑っちゃ悪いと思って見なかったんだよ」

 ハイドがヒーヒー言いながら言う。


「すみません、スバルくん。あまり見たことがない顔になっていたので、つい」

 ケインは笑いすぎて出た、目尻の涙を拭う。


 そう、俺の顔の真ん中には綺麗に一本赤い線が入っていた。ちなみに今回失敗したリーダー全員にもれなく同じ線が入っている。

 痛みは少しヒリヒリする程度だが、しばらく跡が残りそうで嫌である。

 

「……キュキュウ」

 スカイが心配そうに俺の顔の真ん中についた跡をなでる。

「スカイだけだ。俺を心配してくれるのは」

 なんて可愛いやつなんだ。


 スカイはつぶらな瞳でこちらを見つめると、おもむろにポケットの中から桃を出してきた。

「キュキュウ!」

「俺にくれるのか?」

 本当に可愛いし、性格が良い!婿には絶対にやらない。


 スカイから桃を受け取り一口かじる。

 

「美味いー!!」

 

 何だこの桃。


「めちゃめちゃ甘いし、食べやすい。皮ごと食べても全然平気だし」

 美味すぎる。かじった残りを食べるのがもったいないくらいである。


「何だそれ、美味いのか?スカイ俺にもだしてくれよ」 

 美味しいものに目がないハイドがスカイにおねだりする。


「キュキュウ!」

 スカイははいどうぞと、もう一個出すとハイドに渡す。そしてハイドも、大きな口を開けて皮ごとがぶりと噛んだ。


「うめぇー!!何だこれ!」

 やはり俺と同じ感想だな。それを見たケインもやはり食べたくなったのかスカイにおねだりする。


「スカイくん、僕にも1つくれる?」

「キュキュウ!」

 ケインの分もお腹のポケットからだしてくれる。恐る恐るケインも一口囓った。


「……美味しい。こんな甘い果物、初めて食べました」

 そうだろ。そうだろ。何でかスカイのくれる果物は美味いんだよな。

 

 ……ん?

 初めて?

 

「お前ら桃食べたことないのか?」

「俺はこんな果物見たことないぞ」

「僕も初めて食べました」

 

 俺は昔から好きでよく食べてだけど……。

 

 昔っていつだ?

 俺はいつ桃食べたっけ。

 俺が考え込んでいると、ハイドが叫んだ。


「スバル、お前、顔の線消えてるぞ!!」


 ケインも俺を見て言う。


「本当だ!全く赤い線が見えません!」


 えっ?えっ?

 何で俺の顔の線消えたんだ?

 

 ……まさか。

 

「スカイの桃のせいか!」


 そうだ、桃だ。

 俺は今世では桃を食べたことがない。つまり、この桃はスカイが果物生成で作ったということだ。


「僕の昨日の怪我も治ってます!」

 ケインは昨日転んで足を思い切り擦りむいていたのだが、綺麗に傷跡が消えていた。 


「スカイ、この桃、お前が魔法で作ったのか?」

「キュウ!」

 そうだと言うふうにスカイが手を挙げる。


「「「えぇ――!!!」」」


俺たち3人の声が中庭に響いた。



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