初級訓練② 2
「作戦タイムは終了だ。あとは実践あるのみ。今回はリーダーがくじ引きをして、順番に挑戦するぞ」
そういってロキ教官は細長い札を束にしたものを訓練生の前にだした。
「引きに来い」
今回は7組グループができている。
俺のグループ、三下トリオ、他にも5組いるのだが、いつも注目を集めるグルーがいる。
言わずと知れた俺のグループ、と言いたいがそうではなく、いつも訓練でトップを走っている3人がチームを組んでおり、他のグループとは一線を画している。そろそろ、初級を卒業して、中級訓練に上がるのではと噂されている連中だ。
グループのメンバーは、なんと全員女性である。
うちの領は強い女しかいないのか!?
竜族、天使族、魔族と種族柄の潜在能力も高く、おそらく、才能かスキルにも恵まれているため、俺がはーはー言ってる走り込みも、涼しい顔で難なくこなしている。しかもいつもトップで走って、である。
今回は竜族の彼女がリーダーらしい。
ちなみに種族については、外見で分かる場合と分からない場合がある。基本的には竜族は角があり、天使族、魔族はそれぞれ羽がある。人魚族はヒレがあり、獣人族は耳や尻尾があることが多い。ドワーフ族は他の種族に比べて小柄である。ただ、人間との混血が進み、人間よりの特徴をしていたり、魔法や才能、スキルで変化させたりもできるので、外見上は人族と変わらない場合も多い。
3人は分かりやすい外見をしているので、分かったのだが。
最初に三下が引く。
「1番だ!」
……やっぱり、持ってる奴らだな。
みんな次々にくじを引いていく。
「6番」
トップグループは6番か。
こういうのは最後に引くのがいいんだよな。
残りものには福があるって言うし。
俺は最後にくじを引く。
「7番」
なんと、トリである。この結果が良いのか、悪いのかは神のみぞ知るだよな。
「じゃあ1番、準備しろ」
「「「はい!」」」
トップバッターの三下トリオが訓練上に進む。
「準備ができたら声をかけろ」
「土壁!」
「強化!」
三下トリオが魔法を展開する。模造刀を構えたリーダーの目の前に、土で壁が現れ、それに強化魔法をかけている。
「ロキ教官、準備できました!」
「よし、それじゃあ行くぞ」
ロキ教官が土壁に近づく。
模造刀を振る。
あっと、思う間に、土壁が崩れ、その後ろのリーダーも倒れていた。ちなみにリーダーの模造刀も真っ二つである。
……一瞬だったな。
頑張ったぞ、三下!
「次」
どのグループもロキ教官の一撃でやられていく。本当に一瞬である。どんどんやられていき、大本命のトップグループになった。
どんな作戦でいくのか……。
竜族のリーダーが中心にたたずみ、模造刀を構える。他の2人は特に何もしている様子はない。
「……準備できました」
「よし、行くぞ」
ロキ教官が模造刀を振る。
「弱体化!」
魔族の彼女が唱える。
「強化!」
天使族の彼女も続く。
何もしていないと思っていた2人が、短時間で魔法を展開する。
そしてロキ教官の一撃が振り下ろされる。
「強化!」
竜族の彼女も魔法を唱える。
バキ
模造刀が割れる音がした。
訓練場の上の竜族の彼女は倒れずにその場にたたずんでいる。
模造刀は2本とも割れていた。
彼女のものも、教官のものも。
うおーーー!!!
訓練生から歓声が上がる。
「……すげー!!」
「すごいです!!」
「キュウー!!」
「なるほどな、俺の模造刀に弱体化をかけ、自身の模造刀には2人がかりで強化をかけたか。それも時間差で。3人ともよく考えたな。初級訓練は合格だ。明日から中級訓練に行け」
「はい、ありがとうございます!」
「「ありがとうございます!!」」
3人は飛び跳ねて喜んでいる。こうしてみると、普通の女の子と変わりない。
「さ、次行くぞ」
……彼女たちのあと。この、空気感。正直やりにくい。でもやるしかないよな。
スカイは今回は観客席でお留守番である。
「俺たちの番が終わるまで、待っててな」
「キュウ」
スカイはこくりと頷くとそのままじっとしている。
俺たち3人は訓練場に足を踏み入れた。
「水よ!」
ケインが魔法で俺の周りに少し大きめの水の膜を張る。
「風よ!」
ハイドがそれを囲むように、風で少し大きめの竜巻をつくる。
これぞ二段構えの備えである。
そして俺は模造刀を構える。
「準備できました」
よし。あとは野となれ山となれである。
「じゃあ行くぞ!」
ロキ教官が模造刀を振り下ろす。
無効化で、風がやむ。
そして水の膜も突破される。
「今だ!ケイン!」
「シールド!!」
上手くいってくれ!!
バキ
模造刀が割れる音とともに、俺は倒れていた。
空が青い。
シールドも無効化されたか……無念。
「お前らはアイデアは良いがいかんせん、発動に時間がかかりすぎるのが、問題だな。シールドをもっと早く張れていたら上手くいったかもしれない」
「……はい。精進します」
次こそ、俺も魔法であっと言わせたい。
……きっと無理だろうけど。
あーあ、残念だったな。
「……キュキュウ」
離れたところにいたスカイが急いで俺のところまでやって来て心配そうに見つめている。
「大丈夫だよ」
俺は立ち上がるとスカイをギュッと抱きしめた。
「次はお前も魔法を使えるようになって、参加しような」
「キュキュウ!」
よし、頑張るぞ!!




