魔法訓練
次の日の昼。いよいよ魔法訓練が始まった。
「スバル、スカイちゃん、まずは魔力を感じるところから始めます」
いよいよ魔力の授業だ!!
魔力を感じるか……。
全然わからない。
「魔力は体中を巡っているわ。手のひらに魔力を集めるイメージをしてみて」
瞑想する姿勢で、母の言葉を反駁する。
体内を巡る魔力。血管と同じイメージかな。その魔力を手のひらに集める。よくアニメとかではポカポカするとか言っていたな。
魔力よ、集まれ。
手のひらに力を込める。
う~ん。上手くいかないな。
「……キュウ」
スカイ!お前も難しいんだな。
「難しいようね……でも、こればかりは自分で感じとれるようになるしかないのよね」
「母様はどうやって魔力を感じとれるようになったの?」
「……そうね。ずいぶん昔の話だから、あまり覚えてないけれど、とにかくいつも魔力のことを考えていたら、いつの間にか感じとれるようになっていた記憶があるわ」
「魔力のことをいつも考えるか……」
一朝一夕には身に付かないってことか……。
「とりあえず、いろいろやってみましょう」
「いろいろって?」
「じゃあまずは、無魔法を使ってみるわね」
おおっ、無魔法!俺が使えるようになるやつか!!
「シールド!!」
母の前の空気が固まった。ような気がする。見た目の変化はほとんどない。うっすら、空気が揺れている気がするくらいである。
「スバル、私を殴ってみなさい」
これは、殴っても跳ね返されるパターンだな。俺も痛くないように、そっとやってみよう。
えい。
ゴツンと母の前の見えない壁にあたり、それ以上は進めない。パントマイムみたいに、母の前に両手を出してみると見えない壁にやはりぶつかった。
「これが、シールドよ。盾を作るイメージかしら」
良い!!安心安全をモットーとする、俺にピッタリな魔法である。是非とも使えるようになりたい。
ただ、やはり魔法は見えないし、どうやって発動しているか、さっぱり分からない。
「無魔法は見えないから、難しいかしら……。じゃあ、スカイちゃんの聖魔法を使ってみるわね」
「キュウ!」
スカイもやる気満々で母をじっと見つめている。
「ライト!」
母の前に丸いピンポン玉くらいの光が現れる。
小さいのに結構眩しい。
「母様、触っても大丈夫?」
「えぇ、ライトは光るだけの魔法だから、身体に害はないわ。良かったら2人とも触ってみて」
そう言うと、スカイが触れる位置まで光を下ろしてくれた。俺とスカイは恐る恐る光に触れる。
あったかく……ない。
何となくあったかいイメージだったけど、温度は全く感じなかった。
「光だけなんだ……熱さは全くない」
「キュキュ」
「そう、ライトは熱はもたない魔法よ。聖魔法はこの光にいろいろと付加価値をつけていく魔法なの」
「付加価値?」
「そう、傷を癒したり、毒を無効化したり、アンデットを浄化したりね」
なるほど。でも光魔法もあるみたいだし、どこが違うんだろう。
「聖魔法と光魔法の違いは何?」
「そう言えば、スバルは魔法についての基礎知識の授業はまだだったのかしら」
俺も、姉も、フェレナも魔法のスキルを授からなかったため、ミレー先生からまだ、魔法の授業は受けていなかった。
「まだ、受けていません」
「ごめんなさい。そちらを先にすれば良かったわね。まずは、魔法について学びましょう」
残念ながら俺は天才ではないらしいので、すぐに魔法が使えるようにはならないらしい。ならば、実際に使うにはやはり知らないと難しいのかも。
「はい!」
「キュウ!」
「まずは、属性ね。魔法には火、水、風、土、闇、光、聖、無の属性があるわ。火魔法は火を扱う魔法、水魔法は水を扱う魔法のように、属性ごとに使える魔法が異なるの。ただ、全てが異なるわけでもなくて、たとえば今使ったライトは聖魔法でもあるし、光魔法でもあるの。魔法はある意味、イメージして使うものだと考えてくれたらいいわ」
なるほどイメージか。
「つまり、光魔法は光で攻撃するイメージで魔法を使い、聖魔法は光で癒すイメージで魔法を使うということですか」
「その通りよ。ただ、その力の源が精霊王になるの。だから、どんなに頑張ってもその精霊王が扱えない力はイメージしても使えないわ。光魔法で癒す魔法が使えないのはそれが理由よ」
火魔法使いはどうやっても水魔法が使えないってことだな。
「……確かミレー先生に聞いた神話では、聖魔法と無魔法の精霊王はいなかったような……」
「ええ、聖魔法の力の源は神だと言われているわ、そして無魔法の源はよく分かっていないの」
おおっ、俺の魔法には何か謎が隠されたレア魔法なのか。
「どう言うことですか?」
「実は無魔法は魔法を使える人全員が扱える力なの。だから源がどこにあるかは不明というのが正解ね」
ええっ。俺の魔法はレアではなく、誰でも使えるノーマルな魔法だったのか。
「イメージと言ったけど、イメージだけでも実は駄目なの。人によって使える魔力量が異なるわ。だから、魔力量を増やす訓練をしないといけないし、また、魔法の修練を積まないと、結局どの魔法も習得できないわ」
楽しても駄目ということだな。
「だから、皆が使えるからと言って無魔法が弱いわけではないの。魔力量を伸ばして、修練を積んでいけば、魔法は強くなるわ」
「なるほど……とにかく、魔力を感じられるようになって、魔法を使って魔力量を伸ばし、いろいろな魔法を使うことが大事ってことですか」
「ええ、それが今日の魔力を感じることにつながっているの」
よく分かったけど、やはりふりだしに戻ったな。
どうにかして魔力を感じないと。




